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ヴイエムウェア、VMworld 2020を含めた最近の発表内容を国内向けに解説 vSphere 7 Update 1など

 ヴイエムウェア株式会社は1日(日本時間)、VMwareの年次イベント「VMworld 2020」で発表された内容や、それに合わせて比較的最近にリリースされた製品などに関する記者説明会を開催。ヴイエムウェア株式会社の高橋洋介氏(チーフストラテジスト)が解説した。

ヴイエムウェア株式会社の高橋洋介氏(チーフストラテジスト)

vSphere 7 Update 1

 フラグシップ製品であるVMware vSphereについては、最新版のvSphere 7 Update 1が、VMworld 2020に先立つ9月16日に発表された。vSphere 7のメンテナンスリリースとなる。

 まず、Kubernetesを動かすTanzuについて。従来ではVMware Cloud FoundationでTanzuを使うものだったが、7 Update 1ではvSphere単体でもTanzuが使えるようになった。これを指してvSphere with Tanzuと呼ぶ。

 vSphere with Tanzuでは、Project Antreaによるレイヤ2/3のコンテナネットワークをサポートしている。オンプレミスのKubernetesや、パブリッククラウドで動かすKubernetes、パブリッククラウドのKaaS(Kubernetes as a Service)に対して同じ機能を提供することを目指すという。

 Tanzuについては、エディション制が新設され、Basic、Standard、Advanced、Enterpriseの4つのエディションが用意された。

VCF with TanzuとvSphere with Tanzu
Project Antrea
Tanzuにエディション制を新設

 Tanzu以外では、vSphereの拡張性が強化された。2015年から進めてきた“Monster VM”対応では、768仮想CPUと24TBメモリに対応。クラスタあたりの最大ホスト数も、vSphere 7の64ホストから96ホストに拡張された。

 vSphereのアップデートを扱うvSphere Lifecycle Manager(旧名vSphere Update Manager)も、従来はESXを対象にしていたが新たにNSX-TとvSANに対応した。

vSphereの拡張性の強化
vSphere Lifecycle ManagerでNSX-TとvSANに対応

vSAN 7 Update 1

 続いて、vSphere 7 Updateと同時に発表された、ストレージのVMware vSAN 7 Update 1での代表的なアップデートが説明された。

 HCI Mesh機能は、ほかのクラスタノードの空きリソースを借りられるようにするものだという。「従来は1つのクラスタの中でデータストアを共有していたが、クラスタをまたいでリソースを貸し借りしたい、という要望があった」と高橋氏。

 vSAN Data Enhanced Persistenceは、コンテナプラットフォームでCloudian HyperStoreやMinIO、DataStax、Dell EMC ObjectScaleといったステートフルサービスなデータストアを動かすための新しい機構だ。これらのデータストアをシンプルに立ち上げて領域を提供するとした。

 ファイルサーバー機能のvSAN File Serviceでは、NFS v4/v3に加え、新たにSMB v3/v2.1と、Active DirectoryおよびKerberos認証に対応している。

HCI Mesh機能
vSAN Data Enhanced Persistence
vSAN Data Enhanced PersistenceでSMB、AD、Kerberosに対応

vRealizeの新製品と新ライセンス

 クラウド管理製品のVMware vRealizeでは、まずvRealize AI Cloudが新しくリリースされた。vRealize Operationsのデータをもとに、継続的にトラッキングして、それをもとにvSANの構成をダイナミックに変えるものだ。Project Magnaとして発表されていたものを商用化した。現時点ではターゲットはvSANのみだが、今後はネットワークにも対応していくという。

 ライセンスでは、VMware vRealize Cloud Universalが登場した。オンプレミスとSaaSを柔軟に切り替えられるライセンスモデルだ。

vRealize AI Cloud
VMware vRealize Cloud Universal

VMware Cloud on AWSの最近の強化点

 クラウドサービスでは、VMware Cloud on AWSについて、VMworldでの発表に限らず、比較的最近の強化を高橋氏は紹介した。

 新しいインスタンスタイプとして、従来のi3.metalに加え、よりCPUパワーや、ストレージとメモリの容量が大きいi3en.metalインスタンスに対応した(8月)。

 最小構成の要件が緩和され、2ホスト構成からになった(5月)。これは日本で要望が多かったという。

 マルチテナント機能のVMware Cloud Director Serviceについては、東京リージョンも間もなく対応すると高橋氏は語った。

 VMware Transit Connectは正式リリースとなった。AWSのTransit Gatewayを使って、VMware Cloud on AWSと他拠点を接続し、高可用性を担保する。

 新しいDR(ディザスターリカバリ)機能のVMware Cloud Disaster Recoveryは、買収したDatriumの技術をAmazon S3と組み合わせてデータを保護するものだ。

VMware Cloud on AWSのi3en.metalインスタンスへの対応
2ホストから対応
VMware Transit Connect正式リリース
VMware Cloud Disaster Recovery

セキュリティ分野の新製品

 セキュリティの分野では、まずVMware SASE(Secure Access Service Edge)が発表された。PoP(Point of Presence)にVMwareのSD-WAN、ワークスペース、次世代ファイアウォールを統合するものだ。さらに、パートナーのセキュリティ機能として、Menlo Security社とZscaler社の製品もサポートする。

 もう1つは、VMware Carbon Black Cloud Workloadが発表された。買収したエンドポイントセキュリティのCarbon Blackの技術をVMware vSphereに組み込むもの。エージェントレスで動作し、vSphereのコンソールから扱え、監査やクエリ、対応などができる。

VMware SASE
VMware Carbon Black Cloud Workload

Project Monterey

 将来のビジョンとしては、「Project Monterey」が発表された。スマートNICなどのハードを活用することで処理性能を効率化する新しい取り組みだという。

 現在の仮想化環境では、ネットワーク(NSX)やストレージ(vSAN)、暗号化などがESXiで処理されてCPUに負荷がかかっている。そこで、ESXiの機能をNICにオフロードし、ネットワークやストレージの処理をNICに任せることで、効率化するという。

 Project Montereyでは、Intel、NVIDIA、Pensando Systems、Dell Technologies、HPE、Lenovoとパートナーエコシステムを組んでいる。

 Project Montereyの価値としては、処理性能の最大化、ベアメタルサーバーを含めた一貫性のある運用、ゼロトラストセキュリティ、アプリケーション駆動のインフラストラクチャが挙げられた。

従来のサーバーとProject MontereyでのESXiのI/O
Project Montereyの価値