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セキュア、AI顔認証や検温、勤怠管理、オフィスの混雑状況を一元管理できる「Secure AI Office Base」を発売
2020年9月28日 12:17
監視カメラソリューションや入退室管理システムなどを提供する株式会社セキュアは、AIを活用したクラウド型入退室管理/勤怠管理ソリューション「Secure AI Office Base」を、9月28日から発売する。
オフィスへの入退出時に、マスクをしたままでも顔認証や自動検温を行うほか、勤怠管理との連携や、オフィスの混雑状況の可視化などにより、ニューノーマル時代における安全性と利便性を両立した新たなオフィス環境の実現を支援するという。既存の入退室管理ソリューションを導入している企業に加えて、新たなオフィス環境の構築を検討している企業など、2021年度中に1000サイトへの導入を目指す。
大きく6つの特徴を持つAI Office Base
セキュアは、顔認証など生体認証を活用した入退管理や、監視カメラシステム、AI技術などを組み合わせて、オフィスや店舗、製造現場などに導入。ALSOKや九州フィナンシャルグループ、メルカリなど、国内4000社以上への導入実績を持つ。2020年7月には、顔認証で入店や決済ができる無人店舗「SECURE AI STORE LAB」を、東京・新宿の新宿住友ビル地下1階にオープン。この実績をもとに、2021年以降、無人店舗ソリューションをパッケージ化して販売する予定だ。
AI Office Baseは、同社が持つ技術や製品、ノウハウを組み合わせて製品化したもので、「オフィスのフリーアドレス化や、サテライトオフィスの活用、場所を自由に選択して働くABW(Activity based-working)といった、いままでにない多様化した働き方に向けた、『オフィスDX』を実現するソリューションになる。新たな働き方に対応したオフィスの管理とセキュリティ、三密対策、労務管理や健康管理といった今後のオフィスの課題を解決できる」(セキュア 取締役 ソリューション事業本部の安田創一本部長)としている。
同社によれば、AI顔認証、検温、勤怠管理、オフィスの混雑状況を遠隔で一元管理でき、ワンパッケージで提供するソリューションは業界で初めてとのこと。
AI Office Baseには、大きく6つの特徴がある。
ひとつめは、顔認証を利用した非接触でのスマート入退室管理を行える点だ。同社の入退室ソリューションで活用してきた“世界最高水準”の顔認証技術を使用。拠点やエリア、時間ごとのアクセス権限の設定が可能であり、同時に、入退室と同時に勤怠データを記録することができる。
「AIとクラウドの組み合わせによる、新たな入退室ソリューションとして提案できる。拠点が分散していても社員は複数のカードを持つ必要がなく、顔認証だけで入退室できる。マスクをしたままでも認証が可能である」(セキュアの安田取締役)とする。
2つめは、AIにより従業員の健康管理を行える点だ。
入退室時に自動的に検温を行い、体温が高い社員がいた場合には、管理者に通知したり、入室を制限したりといったことが可能。さらに、マスク着用の有無も判断して、マスクを着用していない社員には音声で注意を促すこともできる。「入退室のたびに検温が行えるため、朝だけでなく昼間の時間帯にも測温することで、『昼から体調が悪くなったが、仕事に支障を来すと判断して黙っていた』というような状況も回避できる」という。
特徴的なのは、出退勤時の表情の分析や傾向の解析なども行えるという点だ。表情については、AIを活用して「喜び」「怒り」「悲しみ」など6つの観点から解析。取得している入退室ログと組み合わせることで、職場環境や社員の退職傾向などもつかめることができる。特定部門の社員の表情が暗かったり、これまで出社時間の30分前まで来ていた社員が出社時刻ぎりぎりや遅刻が増えたり、といった傾向から、メンタル面からの社員への支援や、仕事環境の改善といった対策を早期に採ることができるようになる。
3つめは、混雑状況やオフィス稼働率の見える化の実現だ。セキュアでは、商業施設における混雑状況などを、カメラの映像情報をもとに、リアルタイムで分析する「secure Analytics(セキュア アナリティクス)」を製品化しているが、このノウハウを生かして、オフィス向けの混雑状況を可視化する機能を搭載。社員の入退室をカウントして、オフィス内の混雑状況を見える化し、スマートフォンやタブレットからオフィス内の混雑状況を把握できるようにする。
カメラ映像と連動させることで、オフィスの座席数に対する稼働率も計測できるため、三密を避けたオフィス環境の実現を支援するほか、取得したデータをもとに今後のオフィスづくりや改善に活用することもできる。
また、出勤前に社員がオフィスの混雑状況をチェックするといった使い方や、これまでの履歴をもとに食堂や更衣室などの混雑予想をダッシュボードに表示する機能も提供。オフィス内の混雑している場所や時間を避けることができるようになる。
4つめは、勤怠を一元管理できる点。入退室時に顔認証をもとに、勤怠データを取得することが可能であり、場所が離れていたり、多拠点に分散していたりといったオフィスでも同一環境で運用でき、クラウドおよびスマートフォンを通じて遠隔地からも一元管理できる。ここでは、APIを活用した他社の勤怠管理システムとの連携も可能になっている。
5つめが、在籍状況の管理およびチェックインアラートの機能で、誰がどのオフィスに出社しているのか、在宅勤務をしているのか、ということが把握可能になる。また、オフィスにチェックインした時点で上司や同僚にチェックインしたことを個別に知らせる、といった機能も用意している。
「オフィスのフリーアドレス化や分散化が進むと、お互いに社員の居場所を探すのが大変になるが、そうした課題も解決できる。また、社内でコロナウイルス感染者が確認された場合にも、同じ時間にオフィスにいた社員を瞬時にリストアップするといったことにも利用できる」という。
そして6つめが、ゲストユーザーに対するワンタイムパスの発行である。事前にスマートフォンで送られてきた顔写真をもとに、ワンタイムパスを発行することができるため、外部からの入室者にも対しても、カードを貸与したり入室カードなどに記入してもらったりする必要がない。また新たに採用した社員にも、初めて出社する前に、写真をもとに入室のアクセス許可を行うことができる。
「ワンタイムパスと、決済機能を連携すれば、サテライトオフィスや会議室、イベント会場など、場所の時間貸しでも利用できるし、フィットネスクラブなどにおいて、非会員への利用促進の提案も行える」とした。
独自開発の「AI Agent」が導入の容易性と柔軟性、拡張性を実現
さらに、AI Office Baseで特徴的なのは、独自に開発した「AI Agent」を用意している点だ。
たばこの箱よりもひと周り大きいサイズのAI Agentを、オフィス内に設置するだけで、認証ターミナルの自動検索、自動接続が可能であり、特別な設定を不要にするとともに、設置時にエラーが発生しにくい環境を整えている。
AI AgentにはCPUを搭載しているほか、ソラコムのLTE通信モジュールも実装。専用回線により、オフィス内のネットワークに負荷をかけずに、高いセキュリティレベルを担保する。加えて、自己診断プログラムを搭載しているため、クラウド環境や認証ターミナルとの接続状況を常に監視し、異常がある場合には通知を行って、安定した利用環境を実現する。
セキュア 取締役 事業開発部の平本洋輔部長は、「AI Agentは、デバイスをネットワークやクラウドに自動接続する機能を搭載しているほか、さまざまなシステムを統合する際のハブにもなる。既存のセキュリティシステムとの連携や移行を支援したり、顔認証デバイスにとどまらず、監視カメラやCO2センサー、温度/湿度センサー、3Dセンサーなどの各種デバイスと連動することでサービスを拡張する際にも、AI Agentを活用することで設定が容易になる。AI Agentが、AI Office Baseの導入の容易性と柔軟性、拡張性を実現することになる」とした。
AI Office Baseの価格は、認証ターミナルが20万円から、AI Agentが9万8000円で、設置工事や設定には別途費用がかかる。また、月額サービス利用料は1万2000円からで、設置台数により変動する。
今後は、パートナーを通じた販売活動を強化していく考えであり、ウェビナーの共同開催などの販促活動や、導入事例の積極的な提案、東京・新宿の同社オフィスをショールーム化した提案活動を実施する考えだ。さらにアジアを中心とした海外展開にも積極的に乗り出す姿勢も示している。
新たな形でオフィスの運用・管理を支援するオールインワンソリューション
なお、セキュアの谷口辰成社長は、「AI Office Baseは、AIを活用したクラウドベースの入退室管理ソリューションとして、2年前から開発を進めてきた。だが、ここにきて、オフィスにおける新型コロナウイルス対策が重視されはじめ、検温や三密対策などのニーズが生まれてきた。2020年3月に、単なる入退室管理ソリューションではなく、新たなオフィス環境をサポートするものへと進化させることを決定。当初予定のリリース時期を遅らせて、開発を進めてきた」との経緯を説明。
「これまでは、生命と財産、信用と評判を守るためのセキュリティが求められてきたが、それに加えて、社員の健康を守るセキュリティが求められている。新たな形でオフィスの運用、管理をサポートするためのオールインワンソリューションに仕上げたのがAI Office Baseだ」と、製品をアピールした。
さらに、「これまでは、入退室管理システムのほとんどがオンプレミスであり、クラウドベースのものはSOHOや中小企業向けに限られていた。一方で、入退室管理に対するニーズは、セキュリティだけでなく、勤怠管理システムや会員管理システムとの連携やHRへの応用など、多目的化しはじめている。こうしたなかで、当社のこれまでのノウハウを活用することで、クラウド化してもコストメリットを追求できることに加えて、システム連携や新機能の追加にも柔軟に対応できる環境を整えた。さらに、AI Agentを活用することで、導入しやすい環境を提案している。導入の容易さは、こだわった部分である。一見すると、単なる入退室管理ソリューションに見えるが、他社のソリューションとは中身がまったく違う」と、自信をみせる。
また安田取締役は、「もともと企業のセキュリティ対策は、外部からの脅威を守ることが中心であったが、SNSの普及などによって内部からの脅威を守るというセキュリティ対策が加わってきた。2020年3月以降は、新型コロナウイルスの感染拡大により、ウイルスから社員を守るといった対策がさらに加わっている。オフィスのセキュリティソリューションといえば、入退室管理だけであったが、それが大きく変化している」と前置き。
「新たな生活様式や働き方の変化に伴い、社内で感染者が確認された場合の対策や、マスク着用の指導、出社人数を正確に把握して緊密なオフィス環境を回避しなければならないといった、総務部門が抱える新たな課題にも対応する必要がある。AI Office Baseであれば、ニューノーマル時代の新しいオフィスのあり方を実現し、運用をサポートできる」と胸を張った。
同社では今後、AI Office Baseをオフィス以外にも提案。工場やフィットネスクラブ、運送会社、工事現場などにも展開していく姿勢を示す。
「オフィスを閉鎖してしまうと生産性が落ちてしまうという企業が多い。また、そうした企業と同様に、さまざまな現場で閉鎖することができない状況にあったり、生産性を維持したり、新たなサービスを提供したりしたいというニーズがある。また、このプラットフォームを活用すれば、PCなどの物品管理や持ち出し管理などといった用途にも利用できる。今回発表したAI Office Baseは、幅広いニーズを取り込んだものになっているが、ソリューションの中身はさらに拡張していくことになる。新型コロナウイルスの感染リスクに対応するソリューションとして、幅広い領域に提案したい」(谷口社長)と語る。
AI Office Baseのほかに、用途に応じて、AI Factory Baseなどにも広げていくことを次のステップとして視野に入れいるほか、さまざまなデバイスとの連動、APIによる各種ソリューションとの外部連携、AIの活用によるデータ蓄積をもとにしたサービスの高度化などにも力を注いでいくという。
実は谷口社長はセキュア設立時に、社名を「Secure Base(安全基地)」にしたいと考えていたという。Secure AI Office Baseは、もともと考えていた社名を使い、AI Officeをはさんだものともいえ、その点からも谷口社長の思い入れが感じられる。
「オフィス不要論も出始めているが、会社の文化を作ったり、理念を浸透させたり、チームワークを醸成するために、オフィスは重要な役割を果たすことになる。そうした役割を果たすオフィスが安全な場所(安全な基地)になってもらうことを目指したい」(谷口社長)と述べている。