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ネットアップがクラウドソリューション強化、“データファブリック”の進化を説明

 ネットアップ合同会社は4日、同社が打ち出す「ネットアップデータファブリック」の新たな考え方について説明するとともに、それに関連するクラウドデータサービスソリューションについて発表した。

 ネットアップデータファブリックは、オンプレミス環境と、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureをはじめとする、500以上のクラウド事業者にまたがるエンドポイント間で、一貫した機能を提供するアーキテクチャおよびサービス。ハイブリッド/マルチクラウド環境において、シンプルなデータ管理と統合を実現することにより、データを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速できると位置づけられている。

 ネットアップ 常務執行役員 CTO システム技術本部の近藤正孝氏は、「過去5年間は、データファブリック1.0として、ソフトウェアデファインドストレージ(SDS:Software Defined Storage)の提供などを行ってきたが、2019年以降はデータファブリック2.0としてCloud Date Serviceをレイヤ化し、ハイブリッドマルチクラウド環境において、どこへでもデータのデプロイを実現し、運用を統一的に行え、アプリケーションのリリースサイクルを迅速化させることに貢献するものになる。データファブリック1.0ではITインフラの運用者が対象であったが、データファブリック2.0ではアプリケーションの開発者やクラウドアーキテクトにも対象が広がることになる」などと述べた。

ネットアップ データファブリック
データファブリックの進化
ネットアップ 常務執行役員 CTO システム技術本部の近藤正孝氏

 従来のIT組織の体制は、開発チームと運用チームに分かれたものになっていたが、DX時代の新たな体制では、製品開発チームとSRE(サイト・リライアビリティ・エンジニア)チームが、開発するアプリ単位でひとつになって構成。これにより、DevOpsを実現することができるようになるという。

 「これは、今後のIT運用においてはソフトウェアエンジニアがより重要になるという意味であり、われわれのターゲットも従来のインフラ運用者だけでは不十分だと考えている。またDXを実現する上では、コンテナやKubernetesが必要条件となる。それにあわせた製品やサービスの提供が必要になる」とする。

従来からのIT組織体制とDX時代の新たな体制
ハイブリッド マルチクラウド環境でのKubernetes統合オペレーション

 具体的な製品として紹介したのが、NetApp HCI(Hybrid Cloud Infrastructure)と連動したクラウドデータサービス「NetApp Kubernetes Service with HCI」および「Cloud Volumes Service with HCI」だ。すでに発表していた製品だが、今回、新たな機能として、従来のマルチクラウド環境だけにとどまらず、オンプレミス環境にもデプロイを可能とした。

 「NetApp Kubernetes Serviceは、マーケットプレイスであるCloud Centralを通じて入手が可能であり、わずか3クリックだけで、クラスタを複数のクラウドに導入できる。開発を60%高速化でき、労力を最大90%削減できる」(ネットアップ システム技術本部ソリューションアーキテクト部の神原豊彦部長)とした。

NetApp HCI上でのクラウドサービス
ネットアップ システム技術本部ソリューションアーキテクト部の神原豊彦部長

 また、大手クラウドベンダーと緊密な連携を行うとともに、ネットアップのONTAPをクラウドサービスの内部で稼働するCloud Volumesポートフォリオを強化。「Microsoft Azure NetApp Files」(旧Cloud Volumes for Azure)、「Cloud Volumes ONTAP/Services for Google Cloud」を提供する。

 「Google Cloud向けには、プレビュー版の段階だが、AWSおよびAzureを含めて、主要なすべてのクラウドサービスにおいて、ONTAPのテクノロジーを利用でき、さらにオンプレミスのなかでも同じ操作感でデータ移動ができる。また、Cloud Volumesでは、AWS上で世界最大級のデータ入出力性能を実現しながら、AWSのネイティブサービスに比べて約半額で提供できるのも特徴だ。20年以上に渡るノウハウを凝縮したものであり、世界的な大手クラウドを、永続的ストレージとして使用し、拡張を可能にすることができる」(ネットアップの神原部長)とした。

Cloud Volumes
AWS上で世界最大級のデータ入出力性能:Cloud Volumes Services

 同社では、こうした新たな時代におけるクラウドデータサービスとして、クラウドストレージ、クラウドサービス、クラウドコントロール、クラウドアナリティクスのそれぞれの領域において、約10種類の製品およびサービスを提供。「今後の製品やサービスを拡充する一方、NetApp Fabric Orchestratorとして、共通APIの提供、ポリシー管理、アドバイザリーサービス、ファブリックフローなど、ネットアップによる統合サービスを提供する」(ネットアップの近藤CTO)という。

 NetApp Fabric Orchestratorは、ハイブリッドクラウド環境を一元的に監視および管理するもので、データがどこに保存されているかを検出、管理、制御し、ガバナンスの強化を可能にする。「ニーズに応じたクラウドの管理、使用、課金に柔軟に対応。独自のデータファブリックを実現する」という。

 また、相関したコンピューティング、ネットワーク、ストレージのスタックと、アプリケーションの監視、アラーム、分析を行う「Cloud Insight」についても説明。「HCIとKubernetesの監視、配置の最適化や、ダッシュボードへのリアルタイム表示が可能」だとした。

NetApp Fabric Orchestrator
Cloud Insight

 一方、日本においては、NetApp Digital Transformation Lab(NDX Lab)を設置し、半日でDXに関するツールやプロセスを体験できる環境を用意していることにも触れた。

NetApp Digital Transformation Labの概要
NDXLabでの実施事項

 なお、同社2020年度においては、数多くの戦略的製品を投入する予定であることから、米ラスベガスで2019年10月28日~30日に開催する年次イベント「INSIGHT 2019」だけにとどまらず、全世界をキャラバンする形でイベントを開催。日本では、2019年12月10日に東京で開催。2020年1月16日には大阪で開催し、同社の新製品や新たな方針などについて説明するという。