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キヤノンMJが2020年度上期連結業績を発表、減収も最終利益は5.6%増に

2020年度の見通しも再度発表、当初発表値より下方修正

 キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)は27日、2020年度上期(2020年1月~6月)の連結業績を発表した。

 売上高は前期同期比13.3%減の2625億9300万円、営業利益は同2.1%減の131億4000万円、経常利益は同16.1%増の166億5300万円、当期純利益は同5.6%増の99億6300万円となった。

2020年度上期(2020年1月~6月)の連結業績サマリー

 キヤノンMJの蛭川初巳取締役上席執行役員は、「第2四半期(4~6月)は、売上高は全セグメントで減収となった。だが新型コロナウイルス感染症の影響により、業績連動型賞与の減少や人員の自然減、輪番休業による給与の減少、退職給付費用の減少といった人件費が41億円の減少。コンシューマ製品の店頭でのイベント中止により、広告宣伝費が8億円減少。外出自粛による交通費の減少やビジネス機器の出荷減による物流費の減少など、販管費が削減された。一方で売上の減少に伴い粗利が減少しており、営業利益は減益となった。また、4月から5月に実施した輪番休業に対する雇用調整助成金を計上したことから、四半期純利益は12億円の増益になった」と業績を総括した。

 なお、第2四半期(4~6月)の売上高は前年同期比20%減の1211億円、営業利益は同16%減の54億円、当期純利益は同26%増の59億円となっている。

第2四半期(4~6月)の業績概要

セグメント別やエリア別の業績

2020年度上期(2020年1月~6月)のセグメント概要

 セグメント別では、エンタープライズの売上高が前年同期比12.5%減の863億5900万円、営業利益が同5.7%減の51億8500万円。

 同セグメントに含まれるキヤノンITソリューションズの第2四半期(4~6月)の売上高は前年同期比5.3%減の214億円、営業利益は前年同期並の18億円となった。

 「大手企業向けITソリューションは、第2四半期において大型基盤案件やSOLTAGEによるクラウドサービスが堅調に推移。だが、前年同期の大型案件の反動や、Windows 7のサポート終了に伴うビジネスPCの入れ替え需要の反動減、輪番休業の実施による営業活動への影響、案件の後倒しの発生により、17%の減収になった」という。

 また、「新型コロナウイルスの影響により、保守サービスやレーザープリンタカートリッジが減少した。在宅勤務の増加によって、オフィスでのプリントボリュームが減少したのが要因。ビジネス機器ではオフィスMFPの台数が減少。輪番休業により、営業一人あたりの活動日数が減少したり、顧客の要望により設置の後倒しが多く発生したりといった影響があった。レーザープリンタでは前年同期の大型案件の反動があった」とした。

エンタープライズ事業の概況

 エリアの売上高は、前年同期比11.8%減の1172億1700万円、営業利益が同25.9%減の51億6400万円。

 「第2四半期の売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響により営業活動が停滞したことで減収となった。ビジネス機器は、オフィスMFP、レーザープリンタは輪番休業の影響や設置の後倒しがマイナスに影響。また、中小企業の営業自粛や休業により、プリントボリュームが減少し、保守サービスやレーザープリンタカートリッジも減少した」という。

 だが、「緊急事態宣言が解除された6月以降は、多くの企業で業務が再開されたため回復傾向にある」と指摘した。

 また、中堅中小企業向けITソリューションは、「IT専任者不足という課題に対して、ITコンシェルジュとしての最適な提案、導入支援、運用サポートを提供。第2四半期はテレワークの急速な拡大に伴い、リモートワーク環境を構築するためのニーズが高まり、IT支援クラウドサービスのHOMEや、ウイルス対策ソフトのESETが堅調に推移した。IT保守サービスの新規顧客獲得も進めることができた」という。

 その一方で、ビジネスPCはテレワーク需要があったものの、Windows 7の延長サポート終了に伴う需要の反動によって、大きく減少したという。

 なお、連結子会社であるキヤノンシステムアンドサポートの第2四半期の売上高は、前年同期比24.1%減の233億円、営業利益は同91.7%減の1億円となった。利益率が高い保守サービスの売り上げが減少したことが、大幅な減益に影響している。

 今回の発表では、ネットワークカメラの実績についても触れた。第2四半期の売上高は前年同期比18%減。「前年同期の大型案件の反動や新型コロナウイルスの影響による営業活動の停滞、工事や作業の後倒しが発生した」という。

エリア事業の概況

 一方、グループITソリューションの売上高は、前年同期比6.5%減の1036億円。そのうち、SIサービスの売上高は同11.4%減の380億円、保守・運用サービス/アウトソーシングは同3.6%増の174億円、システム販売・ITプロダクトは同5.7%減の482億円。

 「SIサービスは、前年同期に大型SI案件があった反動に加えて、営業活動の停滞などが影響。保守・運用サービス/アウトソーシングは、大手企業向けの大型基盤案件やSOLTAGEなどのクラウドサービス、中小企業向けのHOMEが堅調。IT保守サービスや運用サポートの受注が増加した。システム販売・ITプロダクトはWindows 7のサポート終了に伴う需要の反動減があった」と述べた。

グループITソリューションの売上高

 コンスーマは、売上高が前年同期比12.8%減の502億9300万円、営業利益が前年同期の2億6900万円の赤字から黒字転換し、19億9500万円となった。

 「第2四半期の売上高は、インクジェットプリンタやITプロダクトが好調に推移したものの、レンズ交換式デジタルカメラやコンパクトデジタルカメラが減少したことなどにより減収。だが、営業利益は、広告宣伝費や販売促進費などの販管費が削減されたほか、インクジェットプリンタの高単価製品が伸長したことで粗利率が好転した」とした。

 また「デジタルカメラは、緊急事態宣言が全国に発令され外出が大きく制限されたことで、個人消費マインドが急激に低下して需要が落ち込んだ。カメラ販売店や家電量販店においては、臨時休業や営業時間の短縮が実施され販売機会が制限された。販売台数は、レンズ交換式カメラは前年同期比77%減、コンパクトデジカメは同62%減となった。一方で家庭用インクジェットプリンタは、在宅勤務やオンライン学習の増加により需要が増加して好調に推移。大容量インクモデルのギガタンクシリーズも新モデルの市場投入により増加し、前年同期比20%増の販売台数になった。インクカートリッジも前年同期比5%増になっている」とした。

 ITプロダクトでは、ゲーミングPCが引き続き好調に推移。在宅勤務の需要が増加し、周辺機器も好調に推移したという。

コンスーマ事業の概況

 プロフェッショナルの売上高は前年同期比26.4%減の170億8100万円、営業利益は同8.4%増の13億6900万円となった。「ヘルスケアにおいて医療ITが伸びたものの、産業機器とプロダクションプリンティングが低調に推移したことや、グループ会社を株式譲渡した影響で減収となったが、営業利益は販管費の削減などにより増益になった」という。

プロフェッショナル事業の概況

2020年度の業績見通しは下方修正

 なお同社では、2020年度(2020年1月~12月)の業績見通しを年初に発表していたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、合理的な算定が困難であるとして、4月22日に、一度予想値を取り下げていた。

 今回の会見では、現時点での入手可能な予測を踏まえて業績予想を新たに発表した。取り下げた見通しよりも下方修正し、売上高が前年比14.4%減の5320億円、営業利益が同35.3%減の210億円、経常利益が同37.2%減の247億円、当期純利益が同34.4%減の146億円とした。

 「コンスーマ製品の市場動向やオフィスMFPのプリントボリュームの見通しなど、入手可能な予測をもとにして算定した。だが、新型コロナウイルスの感染拡大が当社グループ全体に対して、どの程度の影響を及ぼすかを明確に算定することが難しい。先行きの情勢変化により、業績予想と乖離(かいり)する可能性がある」とも述べた。

 また、「下期は、コンスーマ製品の大幅な売り上げ減少や、プリントボリュームの減少に伴う保守サービスの売り上げの減少などにより、粗利も大幅な減少を見込んでいる。販管費はハードウェアの販売減少に伴う費用減、人件費の削減などにより減少する」と述べた。

業績予想サマリー

 2020年度のセグメント別業績見通しは、エンタープライズの売上高が前年比12%減の1725億円、営業利益が前年から15億円減の86億円。エリアの売上高が前年比12%減の2353億円、営業利益は前年から61億円減の83億円。コンスーマの売上高が前年比17%減の1101億円、営業利益は前年比31億円減の38億円。プロフェッショナルの売上高は前年比27%減の320億円、営業利益は前年から4億円減の20億円を見込んでいる。

業績予想 セグメント概要 前年比較

 「エンタープライズにおいては、ビジネス機器は、在宅勤務の継続でオフィスにおけるプリントボリュームが減少。オフィスMFPの保守サービスやレーザープリンタカートリッジが減少する。ITソリューションは、SIサービスやデーセンターサービスが堅調に推移すると見ているほか、車載を中心とした組み込みシステム案件が増加すると見ている。だが、ビジネス機器の減少を、ITソリューションが補うことはできずに、下期、通期ともに減収減益になる」とした。

 このほか、「エリアでは、中堅中小企業のプリントボリュームに回復の兆しが見られるが、大都市圏を中心に在宅勤務が継続することから、オフィスMFPの保守サービスや、レーザープリンタカートリッジは減少が続く。だが、中小企業のテレワーク環境構築のニーズが高く、HOMEやセキュリティ、IT保守サービス、運用サポートが好調に推移すると見ている」とも話している。

 また、「デジタルカメラは、外出自粛の緩和により、需要は第2四半期を底として、徐々に上向くと考えているが、回復の程度は緩やかであり、厳しい状況が続く。結果として、対前年比では大きく減少するだろう。インクジェットプリンタおよびカートリッジは、上期は堅調に推移したが、これは下期の需要の前倒し分が含まれていると考えている。下期は減少するだろう。下期はコンシューマ全体でのプロモーション費用も増加すると考えている」とした。

 なお、第3四半期には、フルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」や「EOS R6」などを発売する予定であり、「市場の活性化を後押ししたい」と述べている。

新型コロナウイルス感染症への対応

 一方、新型コロナウイルス感染症への対応についても触れた。

 同社では、緊急事態宣言下において、4月および5月は輪番休業を実施。全社員が在宅勤務やリモートワークが活用できる環境を整備。出社頻度を抑制し、4月、5月の品川本社の平均出社率は3割に抑えたという。

 また顧客向け対応として、テレワークや在宅勤務をサポートするソリューションを無償あるいは特別価格で提供したほか、ネットワークカメラを活用した「オフィス密集アラートソリューション」の提供を開始。顧客の要望に合わせたオンラインによる営業活動やサポート活動を実施。SkypeやZoom、Teams、bellFaceなどのコミュニケーションツールの提供を行ったとのこと。

 「自社で行ってきたオンラインコミュニケーションのノウハウを生かし、安全性に配慮しながら、可能な限りオンラインでの対応を実施。ツールの提供も行った」とした。

新型コロナウイルス感染症対応の取り組み