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キヤノンMJが新たな中期経営計画を発表、2022年に営業利益380億円を目指す ITソリューション事業へいっそう注力

2019年度連結決算は過去最高の営業利益率5.2%を達成

 キヤノンマーケティングジャパン株式会社(キヤノンMJ)は、2022年を最終年度とする「2020年~2022年中期経営計画」を発表した。

 2022年度(2022年1月~12月)の業績見通しは、売上高が6400億円以上、営業利益は380億円以上、営業利益率は5.9%以上、当期純利益は255億円以上を見込む。

 キヤノンMJの坂田正弘社長は、「高収益企業グループを目指す。成長戦略ではITソリューション事業への注力を進める一方、収益力強化では主要事業での収益維持、社内基幹システムの刷新による生産性の向上に取り組む。コンスーマは、2022年に向けて売上高は減少していくが、エンタープライズ、エリアを大きく成長させ、営業利益を伴った形での成長を見込んでいる」とした。

2025年にはITソリューション事業で3000億円+αを目指す

 2022年度におけるセグメント別業績見通しは、エンタープライズの売上高が2200億円以上、営業利益が140億円以上。エリアの売上高が2700億円以上、営業利益は170億円以上。コンスーマの売上高が1150億円以上、営業利益は55億円以上。プロフェッショナルの売上高は450億円以上、営業利益は35億円以上を見込んでいる。

 グループITソリューションの売上高は、2019年度から年平均成長率(CAGR)4%を見込んでおり、20221年度には2500億円を計画している。そのうち、SI開発や組み込み開発、エンジニアリングなどの「SIサービス」が950億円(2019年度の実績は830億円)、データセンター/クラウドサービス、運用・サポートなどの「保守・運用サービス/アウトソーシング」が550億円(同336億円)、基盤構築、プロダクト系セキュリティ、PCなどのITプロダクトによる「システム販売・ITプロダクト」は1000億円(同1042億円)とした。

 坂田社長は、「プロダクトは伸びるとは思っていない。SIサービス、保守・運用サービス/アウトソーシングを伸ばすことになる。2025年には、ITソリューション事業で3000億円+αを目指す」と述べた。

 また坂田社長は、「社会やお客さまの変化に先んじたソリューションの提供で収益の最大化を目指す。一方で日本の労働人口の減少に伴い、当社の人員も中長期的には減少すると考えている。業務プロセスの見直し、ITの活用徹底、働き方改革により、生産性を高め、高収益をあげることができる企業を目指す。これらを自ら実践し、その成果をお客さまに提案をしていくことになる」とした。

 さらに、ITソリューションに関する2つの事例を説明。サッポログループ3社共通の商品需給計画システム「FOREMAST」では、数理技術やAIを活用した需要予測により、サプライチェーンプランニングの実現や、物流の平準化を実現。在庫の適正化、輸送の平準化、需給業務の高度化を実現したという。

 一方、金融機関向けクラウドサービス「しんきん預かり資産ナビ」では、オンプレミスで販売実績がある「預かり資産セールスナビ」を、信金中央金庫の協力のもと、全国の信用金庫を対象に各種サービスと組み合わせて提供。クラウドの活用によって、短期間で、低コストの導入、運用が可能になるとした。

 「課題を理解し、当社が持つ技術を使って、課題解決につなげる提案を進める。今後、業種別ソリューションを拡大するとともに、中小企業に対しては、人材不足への対応や営業力強化、働き方改革といった課題解決ソリューションを提案。全国規模での導入支援、サポート、運用体制を活用して、ITコンシェルジュサービスを拡大させる」とする。

 さらに、成長分野に対する積極投資を実施。2020年夏に稼働予定の西東京データセンター Ⅱ期棟に向けては200億円の投資をしたほか、社内システムの刷新に向けた設備投資を行う。加えて、M&Aや出資により、業種/業務ソリューション領域における体制強化や規模拡大を目指すとともに、高度な知見を持つ人材の採用なども進めるとのこと。

2019年度は減収増益、過去最高の営業利益率を達成

 一方、同社は、2019年度(2019年1月~12月)の連結業績を発表した。

 売上高は前年比0.1%減の6211億3400万円、営業利益は同12.1%増の324億3900万円、経常利益は同11.2%増の339億3700万円、当期純利益は同6.8%増の222億5000万円となった。

 坂田社長は、「売上高は2016年以降ほぼ横ばいだが、利益は増益となり、過去最高の営業利益率5.2%を達成した。シェアを追ったり、数を出したりすることにはこだわらず、高付加価値の製品の販売に力を注いだ。インクジェットプリンターが最たるものであり、大容量タンクの販売が増加している」とコメント。

 また、キヤノンMJ 取締役専務執行役員の松阪喜幸氏は、「消費増税やWindows 7のサポート終了によるビジネスPCの入れ替え需要があり、四半期ごとの増減は例年とは異なっている。コンスーマは売り上げ、利益を大幅に下げたが、それ以外のセグメントは増益になり、コンスーマ、エンタープライズ、エリアで5%以上の営業利益率を達成している。ITソリューションは、大企業および中堅中小企業向けがともに増加。一方で、デジタル一眼レフカメラや産業機器などが減少した」と総括した。

 セグメント別では、エンタープライズの売上高が前年比4.1%増の1958億円、営業利益が同15.4%増の100億円。金融分野において、証券向けSI案件や信金向けの投資商品販売支援システム案件が堅調に推移。生保向けでレーザープリンターの大型案件を獲得したという。

 また製造業向けでは、飲料メーカー向け需要予測システム案件や食品メーカー向けの業務用データ収集端末の大型案件などが順調に推移。流通業向けでは、小売業に対するPOP制作システム案件や、情報通信業向けオフィスMFPの大型案件、警備会社や商社向けネットワークカメラの大型案件が順調に推移したとのこと。

 同セグメントに含まれるキヤノンITソリューションズは、売上高は前年比5.4%増の915億円、営業利益は同11.5%増の73億円となった。前年にあった金融業向け大型案件の反動減があったものの、製造業向けを中心に複数の案件の獲得を進めたほか、データセンターサービスが順調に推移。複数の大型基盤システム案件を獲得したという。

 「キヤノンITソリューションズは、ITソリューション事業の中核であり、2019年度は過去最高益となっている。SIサービスの案件大型化と、スクラッチでの構築を減らしパッケージによるSI構築を増加させたことで収益が向上した。データセンターでは、データを預かるコロケーションに加えて、保守、運用メニューを拡充して、収益が向上している。西東京データセンターは、2012年からサービスをスタートして以降、大きな問題もなく稼働しており、高い運営品質により、データセンターとしての信頼性が高まっている。夏に稼働予定のⅡ期棟の予約も入り始めている」(坂田社長)とした。

 エリアの売上高は、前年比4.2%増の2683億円、営業利益が同19.2%増の143億円。Windows7の延長サポート終了に伴い、中堅・中小企業におけるビジネスPCの入れ替えが進んだことにより、出荷台数が大幅に増加した。またビジネスPCの入れ替えの際に、Office 365に対応したIT支援クラウドサービス「HOME」や、ウイルス対策ソフトウェア「ESET」、業務効率化に対応するための各種ソフトウェアを合わせて提案することで、売り上げが増加したという。

 なお連結子会社のキヤノンシステムアンドサポートの売上高は前年比6.4%増の1253億円、営業利益は同40.5%増の51億円となった。過去最高の売上高、利益になっている。

 「中小企業は、まだIT導入が進んでいない市場である。業務効率化ソフトウェアにセキュリティ、クラウドサービスを組み合わせたソリューションビジネスを拡大するとともに、ITソリューション導入支援から構築後の運用、サポートを含めた一気通貫のビジネスを拡大する」(坂田社長)とした。

 また、グループITソリューションの売上高は、前年比12.0%増の2215億円。そのうち、全社ITセキュリティの売上高は同2%増になった。

 坂田社長は、「当面の目標としていた2000億円を突破し、売上高の36%を占めた。いよいよ3分の1以上の構成比となったが、Windows 7のサポート終了によるビジネスPCの買い換え需要があり、これがわれわれの実力と判断するのは早計。実力を推し量るのは2020年度になる。しかし、PC単体の販売だけでなくソリューションやサポートを一緒に提案しており、利益がついてくるようになった。2025年の3000億円の目標に向けて少し前進した」と述べた。

 コンスーマは、売上高が前年比11.6%減の1327億円、営業利益が同6.5%減の68億円。ミラーレスカメラは、フルサイズモデル「EOS RP」などを中心に拡販に注力したものの、「EOS KissM」などが前期に台数を大きく伸ばしていた反動があり、売り上げが減少。デジタル一眼レフカメラも、市場縮小に伴い減少した。

 インクジェットプリンターは、家庭用インクジェットプリンター市場が低迷したものの、大容量タンク「GIGATANK」を搭載した製品が好調に推移し、売り上げが増加。インクカートリッジは、プリントボリュームの減少に伴い、売り上げが減少した。ITプロダクトは、ゲーミングPCなどが順調に推移したが、SDカードやペリフェラルなどが減少した。

 プロフェッショナルの売上高は前年比5.9%減の436億円、営業利益は同89.9%増の16億円となった。

2020年度も引き続き増益を見込む

 なお、2020年度(2020年1月~12月)の業績見通しは、売上高が前年比3.4%減の6000億円、営業利益が同4.8%増の340億円、経常利益が同3.1%増の350億円、当期純利益が同2.5%増の228億円とした。

 2019年度のセグメント別業績見通しは、エンタープライズの売上高が前年並の1965億円、営業利益が前年比12.9%増の114億円。エリアの売上高が同2.0%減の2630億円、営業利益は同7.6%増の155億円。コンスーマの売上高が同5.6%減の1253億円、営業利益は同10.1%減の62億円。プロフェッショナルの売上高は同20.8%減の346億円、営業利益は同43.8%増の23億円を見込んでいる。

 この数字についてキヤノンMJの松阪専務は、「キヤノンライフケアソリューションズをキヤノンメディカルシステムズに譲渡することでの売り上げ減少、ビジネスPCの反動減などが見込まれることを盛り込んだ。第1四半期はWindows 7のサポート終了に伴う需要が継続するが、その後、新規ビジネスの拡大にな取り組むことになる。一方、大手企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)投資が見込まれており、業種ごとの課題解決を提案することで、ITソリューションの拡大に取り込む」などと話している。