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Alibaba Cloud、クラウドDB「ApsaraDB for PolarDB」など新サービスの国内提供を開始

 中国Alibaba Cloudは20日、同社のパブリッククラウド「Alibaba Cloud」において、リレーショナルデータベース「ApsaraDB for PolarDB」、セキュリティプロダクトの「Web Application Firewall(WAF)」、ネットワーク高速化サービスの「Global Accelerator」を日本で提供開始することを発表した。

 同日開催されたメディア向けのオンライン説明会の冒頭、Alibaba Cloud カントリーマネージャーのユニーク・ソン氏は、「日本や中国という国にかかわりなく、全世界で新型コロナウイルスが大きな影響を与えている。Alibaba Cloudでは、自分たちの技術でアフターコロナの世界で生き残るため、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する」と述べた。

Alibaba Cloud カントリーマネージャー ユニーク・ソン氏

 2020年の日本市場における経営戦略についてソン氏は、「日本のお客さまを全面的にサポートするため、日本語ドキュメントを整備し、日本語サポートを提供するほか、日本のお客さまがもっとも望んでいるデータの安全性についても、日本国内に2カ所のデータセンターを置くことで、データを日本国内に保持できる。Alibaba Cloudの強みを発揮し、日本市場での事業をさらに拡大する」と説明した。

 この事業戦略は、今回発表されたPolarDB、Alibaba Cloud WAF、Global Acceleratorなどプロダクトの充実と機能強化によって支えられている。今後も既存プロダクトの販売強化を強化しつつ、新規事業・プロダクトの開拓も視野に入れるという。

 また、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務、遠隔授業、遠隔医療といったニーズの高まりをうけ、ビデオ会議ツール「DingTalk」の日本語版を4月にリリースしている。同ツールは、AIチャット翻訳、302人同時ビデオ会議、最大4万5000人対応のライブ配信などに対応しており、今回の説明会でも利用されている。

 さらに、新型コロナウイルスへの取り組みの一環として、NOBORIやエムスリーといった日本企業と共同開発した胸部CT画像分析技術をシステム化し、聖マリアンナ医科大学病院へ提供しているほか、中小企業の顧客を対象とした、3,000万米ドル以上に相当する支援プログラム 「Global SME Enablement Program」の提供を開始したことも明らかにしている。

PolarDBなど3つの新サービスの詳細を説明

 今回日本国内で提供を開始したサービスの詳細については、Alibaba Cloud シニアソリューションアーキテクト 奥山朋氏が説明した。

Alibaba Cloud シニアソリューションアーキテクト 奥山朋氏

 PolarDBは、Alibaba Cloudが独自に設計して開発したマネージド型の分散リレーショナルデータベースだ。「処理とデータを分散して拡張性を高め、RDMAやNVMe SSDを導入することで、高速処理を実現した」と奥山氏は説明する。圧倒的なOLTP性能を実現しており、同社の検証の結果ではMySQLと比較して約6倍高速であり、他社のクラウドサービスのマネージドデータベースと比較しても約2倍高速であったという。

 もちろん、ほかのデータベースとの高い互換性も維持している。「MySQLやPostgreSQLとは100%、商用RDBMSとも高い互換性を持たせ、移行ツールやサービスも用意している」と奥山氏は説明する。なお、Alibaba Cloudでは、PolarDBの日本国内導入目標として、2020年内に100社を目指すという。

 Alibaba Cloud WAFは、サイバー攻撃やデータ漏えいを防ぐクラウドネイティブのセキュリティサービスだ。奥山氏は「WAFは以前から提供しているが、これまで日本国内から利用する際には、シンガポールリージョンにあるインスタンスから提供していた。今回新たに、日本国内のリージョンにWAFのインスタンスを配置したことで、遅延時間を37ミリ秒から15ミリ秒に短縮している」と説明する。

 Global Acceleratorは、グローバルなインターネット接続をサポートするサービスだ。Alibaba Cloudが持っているネットワークバックボーンと、各国に用意された接続先(POP)を活用することで企業の国際間通信高速化できるという。また、きめ細かなアクセスコントロール機能を備え、ブラックリスト/ホワイトリストの運用によってセキュリティリスクを低減している。

 奥山氏は「Alibaba Cloudは政府に認められたクラウドサービスであるため、中国側の事情で予期せぬネットワーク遮断される可能性を排除できる」と述べ、日中間の通信で懸念される中国のネットワーク検疫システムによる遮断の可能性を低減できることをアピールした。

 すでにAlibaba Cloudを利用している日本企業として、観光客向けアプリケーションを提供するナビタイム、画像検索サービスを提供するニトリ、中国国内および日中間のインフラとして利用しているキヤノンなどの例を挙げ、さらに日本企業の顧客獲得を目指していく構えであるという。また、現在SBクラウドをはじめ多くの日本のパートナーと提携しているが、今後も日本におけるテクノロジー・エコシステムを強化し、より多く、多彩な日本企業のニーズに応えていくという。