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アリババクラウド、離れた地域でもPolarDBクラスタの分散配置を可能にする新機能
「SAP on Alibaba Cloud」に関する取り組みも紹介
2020年8月21日 13:12
アリババクラウド・ジャパンサービス株式会社(以下、アリババクラウド)は19日、メディア向け説明会において、同社のパブリッククラウド「Alibaba Cloud」から提供されているリレーショナルデータベース「ApsaraDB for PolarDB」(以下、PolarDB)の最新アップデート、および「SAP on Alibaba Cloud」に関する取り組みを紹介した。
PolarDBの拡張機能である「グローバル・データベース・ネットワーク」を提供
まずPolarDBについて、アリババクラウド インターナショナル ソリューション アーキテクトの奥山朋氏は、「オープンソースのMySQLやPostgreSQLと互換性のあるインターフェイスを持ちつつ、大規模環境で必要になる機能を独自開発したリレーショナルデータベース。クラウドネイティブであるため、拡張性があり運用負担が低い」と紹介した。
2020年6月に日本でも提供を開始したPolarDBだが、すでにテスト導入をしている日本企業もあり、さまざまなフィードバックを得ているという。PolarDBは、処理とデータを分離し、libpfs分散ファイルシステム、RDMA、Redoログベースの高速同期といった新しいテクノロジーによって処理を高速化しており、他社のクラウドサービスから提供されているマネージド型リレーショナルデータベースと比べても、2倍高速であるという。
今回発表されたPolarDBの拡張機能である「グローバル・データベース・ネットワーク(GDN)」は、PolarDBのクラスタを距離の離れた地域に分散配置ができる機能だ。一極集中型のシステムには、トラフィックや処理が集中して速度が低下する、遠方の地域ではネットワークの遅延が発生する、局地災害によりサービスが停止する恐れがあるなどの課題がある。
GDNはPolarDBのクラスタを最大で5つのリージョンに分散させることができるため、例えば本社のある日本のデータセンターにプライマリを設置し、セカンダリを拠点のある地域4カ所に設置する、といったことができる。データはアリババクラウドの内部国際ネットワークで同期し、各地域において遅延の少ない高品質なサービスの提供を可能にする。また、非同期のレプリケーションモードに対応しており、同期レイテンシも2秒以下であるという。
奥山氏は「他社のクラウドサービスやオンプレミス環境で利用している既存のデータベースと比べても、PolarDBは処理速度が速くトータルコストも安いという評価を得ている。しかし、PolarDBが高性能であるからこそ、クラウドのマネージドデータベースに慣れ親しんだお客さまからは、まだ提供できていない機能への要望が寄せられている。そのひとつがGDNであり、提供開始から2カ月で、他社のクラウドサービスと同じように国をまたいだ分散処理が可能になった」と説明し、日本市場でも先行しているAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といった他社クラウドサービスを強く意識し、機能拡張していることを明らかにした。
SAPとの取り組みを説明
一方、SAPシステムの構築や移行に対応するサービスを日本でも提供開始したことを明らかにしている。アリババクラウドは、2016年にSAPと戦略的パートナーシップを締結し、SAP HANAのプラットフォーム認定を取得している。以降、アリババクラウドの基盤から、NetWeaver、B1、Marketing Cloud、Analytics CloudといったSAPのサービスを提供している。奥山氏は「企業はSAPシステムのハードウェアコストや運用コストに課題を抱えており、クラウド環境でSAPのサービスを利用したいと考えている。すでに中国では実績があるが、2020年からは日本を含むアジア地域でもSAPのサービスを展開することにした」と説明した。
アリババクラウドでは、HANAデータベース向けに豊富なメモリを搭載したECSインスタンスなど、SAPが認定した豊富なインスタンスラインアップを提供しており、他社のクラウドサービスよりもコストパフォーマンスに優れているという。SAPアプリケーションやHANAのインストールを容易にするテンプレートも提供され、HA機能を持つSAP HANAのシステム構築が40分程度で完了できるとした。
さらに、性能面での優位性として、強固なセキュリティ機能、柔軟なネットワーク、複数リージョン対応のバックアップ/リカバリ機能、SAPシステムの稼働状況を可視化する仕組みなどを挙げている。
また、2020年4月に公開した「Alibaba Cloud セキュリティ・ホワイトペーパー 国際版 2.0」の日本語版を、2020年8月19日より公開している。本ホワイトペーパーには、アリババクラウドのセキュリティポリシーが記載されており、セキュリティの責任共有、セキュリティコンプライアンスとプライバシー、アリババクラウドのインフラやセキュリティアーキテクチャなどが記述されている。
奥山氏はアリババクラウドのプライバシーポリシーとして、「お客さまのデータにアクセスすることは絶対にない」と強調。さらに、日本のユーザーに関連する記述として、個人情報保護「JISQ15001」、クラウドセキュリティ「ISO27017」、クラウドにおける個人情報保護「ISO27018」などに準拠していることを明らかにしている。