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セールスフォース、新型コロナ対策で保健所や中小企業へクラウドサービスを無償提供

オンライン説明会レポート

 株式会社セールスフォース・ドットコムは22日、新型コロナウイルスの対策として保健所や、中小企業を支援する仕組みに関する説明会を開催した。

 3月30日、米Salesforce.comが、新型コロナウイルスによる影響を受ける企業への支援策として無償提供プログラム「Salesforce Care」を拡大という発表を行った。

 日本でも同日に千葉県船橋市の保健所向けに、業務支援クラウドパッケージを無償提供、4月9日に厚生労働省主導の民間検査機関でのPCR検査状況等に関する「新型コロナウイルス情報連携基盤」を構築支援、4月13日に新型コロナ保健所業務支援クラウドパッケージを全国の保健所向けに無償提供という発表を行っている。

 今回、保健所向け支援に加え、在宅勤務を行う社員支援、中小企業向け支援、パートナー企業との連携による支援を発表した。中小企業向け支援では、4月1日付けで正式にセールスフォース・ドットコム一員となったデータ分析のTableauを活用したデータ分析ソリューションも登場した。

4種類の新型コロナウイルス対策支援を提供

 セールスフォース・ドットコムでは、新型コロナウイルス対策支援として、「在宅勤務を行う従業員向け支援」、「中小企業向け支援」、「パートナーによる支援」、「公共機関向け支援」という大きく4種類の支援を行う。支援利用の申し込みは、基本的には日本法人のSalesforce Careのページから行う。

 在宅勤務を行う社員向けには、組織の情報共有を実現するアプリケーション「quip」を90日間、ユーザー数無制限で無償提供する。

 quipは、「ワープロ、表計算、コミュニケーションツールをひとつの画面で処理できるアプリケーション」(セールスフォース・ドットコム マーケティング本部プロダクトマーケティングマネージャー 秋津望歩氏)だ。

セールスフォース・ドットコム マーケティング本部プロダクトマーケティングマネージャー 秋津望歩氏(過去の記者会見より)

 現在、短期的に在宅勤務導入したことによって、お互いの作業状況が把握できない、業務処理スピードの低下、一人で仕事を進めることで起きる心理的不安といった課題が起こっていると分析。さらに在宅勤務は短期的で解消されず、中長期的に続いていく可能性が高いことから、きちんとした対応策としてquipを提供する。

 今回、社内だけでなく共同で業務を進めていく外部企業との連携を実現する「Quip Starter」を提供する。最新版を複数のスタッフが編集することや、変更履歴について誰が、いつ、何を編集したのか、既読かどうかを一目で確認することができる。またToDo管理を含め、業務遂行に必要な機能をひとつの画面に集約可能。アイコンを使ったコミュニケーションにも対応し、遠隔地で仕事をしていてもコミュニケーションを活発にとり、心理的な距離を縮めることができる。

 「在宅勤務においても、スピード感を持って共同作業を進めることができる環境によって、スピード感を持って業務を進めてもらうことが可能になる」(秋津氏)。

Quip Starterを9/30まで無償提供

 中小企業向けには、中小企業向けCRM「Salesforce Essentials」、分析ツール「tableau」を90日間無償提供する。

 Essentialsは、シンプルな設定ですぐに利用できることを特徴としたCRMアプリケーション。使い方に関しては、無償で提供されているオンライン学習コンテンツを利用することも可能となる。「今すぐ使い始めることができるCRM」として、営業体制の強化などを検討する中小企業での利用を想定している。

 Tableauは2019年6月、米Salesforce.comが買収したデータ分析を行う企業。4月1日付けで新体制となったことから、今回、初めてセールスフォース・ドットコムの一員として発表に加わった。

 「今回、データ分析を行うTableau Desktopと、データ準備にかかる時間を大幅に短縮するTableau Prep Builderを、従業員数20人までの企業であれば10人まで、90日間無料で利用することができる。Salesforce Careのページから申し込みをしてもらえば、90日間利用できるトライアル版を1週間以内に提供する」(Tableau Software LCC リードソリューションエンジニアの松島七衣氏)。

Salesforce Essentials、tableauを90日間無償提供

 パートナーと連携した支援策としては、セールスフォースのアプリケーションポータルAppExchangeに、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)リソースセンターを設ける。当初は、このリソースセンターにアプリケーションパートナー、コンサルティングパートナー、セールスフォース自身が提供する合計16のタイトルがそろっているが、今後、さらにタイトル増強も計画している。

 「パートナー各社が提供するものとして、9社が発表している支援策を提示している。詳細はサイトを見てもらうことになるが、今回は提供されているアプリケーションの一部を紹介。紙の契約書を電子化するためのアプリケーション、危機管理対策として情報のハブや社員の健康管理に使えるアプリケーション、3カ月無償で利用できるグループウェアなどが提供されている」(セールスフォース・ドットコム 執行役員アライアンス事業AppExchangeアライアンス部 部長の御代茂樹氏)。

 今後は業種向けアプリケーションなど、さまざまなものを提供していくことを計画しているという。

AppExchange COVID-19リソースセンターを設置
9社のパートナーによる支援策
セールスフォース・ドットコム 執行役員アライアンス事業AppExchangeアライアンス部 部長の御代茂樹氏(過去の記者会見より)

 公共事業向けとしては、4月13日にプレスリリースを出した新型コロナ保健所業務支援クラウドパッケージを、9月30日までの期間限定で、全国の保健所向けに無償提供する詳細が発表された。

 このクラウドパッケージは、3月30日に発表した千葉県船橋市の保健所向けクラウドパッケージがベースとなっている。もともと、船橋市から要請があって実現した協業で、紙や口頭で、複数の部署をまたがって情報共有する際の課題を解消するために誕生したという。

 「現在、船橋市の保健所には一日300件以上の問い合わせがあり、中で働く職員の方は、極めて忙しい状況に置かれている。さらに地域の住民の声のヒアリング、報告などさまざまな業務があり、それを複数部署で共有していくことの難しさなどがあるという。こうした課題は船橋市固有の問題ではなく、ほとんどの保健所が持っている課題だと認識し、船橋市保健所で構築したアプリケーションを全国で活用していただくこととなった」(セールスフォース・ドットコム 執行役員 エンタープライズ公共・金融営業統括本部 公共営業部長 小暮剛史氏)。

 具体的な保健所業務支援システムは、住民からの相談を記録する「相談記録」、各種帳票をデータベース化し、入力済みの項目の再利用を可能とすることで、帳票作成工数を削減し、調査の進捗状況を見える化する「調査票作成/PCR検査」、患者や濃厚接触者の観察記録と行動調査記録を電子化し、病院への確認ができていないことを一覧化することで抜け漏れ防止を行うことができる「疫学調査・濃厚接触者調査」、蓄積したデータベースの活用によって相談内容や件数などの一覧を作成し、県や国への報告に必要な集計業務を簡素化する「集計/分析」が含まれている。

 登録したデータは、セールスフォース・ドットコム側ではなく保健所側が所有することが基本で、9月30日までの無料利用期間終了後は、保存/消去を利用する保健所側が選択できる。

新型コロナ保健所業務支援システムの全体像