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富士通がDX専門会社を通じて実現したいことは? 時田社長が事業方針を説明

福田譲氏や山本多絵子氏など新たな人材も登壇

 富士通株式会社は9日、デジタルトランスフォーメーション(DX)ビジネスの専門会社「Ridgelinez株式会社」が2020年4月1日から事業を開始するのにあわせて、事業方針などについて説明した。

 なお、記者会見は同社初のオンライン形式で開催された。富士通設立以来初のオンライン会見は、DX新会社の設立という、同社の新たな取り組みを象徴する内容となった。

自立した競争力のある企業を目指す新会社

 富士通の時田隆仁社長は、「Ridgelinezは、富士通のDXビジネスを加速する新会社であり、富士通グループのDX企業を具現化した、ひとつの姿となる。富士通の一部門ではなく、自立した企業として、競争力のある企業を目指す」と前置き。

 「DXビジネスの本格化や、DX企業への変革をドライブするために、新たな仲間を迎えて取り組む。富士通とは異なる新たなカルチャーのもと、独自の仕組みや社内制度を整備して、柔軟性、機動性に長けた活動を行う会社になる。ゼロから1を生み出すトランスフォーメーションをデザインする集団として、コンサルティングから最新テクノロジーの実装まで、ワンストップのサービスを提供する。富士通は、テクノロジーと豊富な顧客基盤を生かし、Ridgelinezを強力なパートナーの1社と位置づけ、顧客や社会に貢献する」と語った。

富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏

 Ridgelinezの社長には、PwCジャパン 副代表執行役 シニアパートナーの今井俊哉氏が、4月1日付で就任する予定だ。今井氏は、1982年に新卒で富士通に入社。製造業向けのSEおよび営業として勤務したのち、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンやSAPジャパン、ベイン・アンド・カンパニー・ジャパンなどを経て、PwCとブーズ・アンド・カンパニーの統合により、PwCコンサルティングに入社。現在に至っている(いずれも社名は当時)。

Ridgelinez 代表取締役社長に就任する予定の今井俊哉氏

 Ridgelinezの今井新社長は、「Ridgelinezが目指しているのは、Transformation Design Firm(変革創出企業)であり、Transformation Design for Alternative Futuresする(未来を変える、変革を創る)ことである。この目標に高いエネルギーと志を持って取り組みたい」とコメント。

 さらに、「お客さまと社会の変革を創出し、非連続な未来を実現することができるような、これまでとは違う成果を出せる会社になりたい。未来はひとつではない。変革の先にはさまざまな未来があり、さまざまな結果がある。そのなかで、最も適した未来をたどり着くことが大切である。長年に渡り、外から富士通グループを見ていた立場から、感じることや変えてみたいと思ったことを、自分の手で行いたいと思うとともに、スピード感を持った変革の手伝いができればと思っている」などとした。

 富士通の時田社長は、今井新社長に関して、「当社プロジェクトへのコンサルティングを通じて富士通に接しており、また、いくつものコンサルティングファームの実績を築き上げてきた経験がある。コンサルティング会社として、必要な機能や制度を迅速に移植し、円滑に実現していける人材だと考えている。Ridgelinezがこれまでの富士通になかったスピード感でビジネスを展開し、富士通が目指すDX企業への変革の方向性を示す、よきリファレンスとなることに期待している。Ridgelinezが企業としてどのように成長し、どのような顧客のDXを実現するかに期待している」と述べた。

2~3年後で200億円前後の売上高を見込む

 Ridgelinezの資本金は1億円で、富士通が100%出資。2020年1月15日に会社を設立しており、事業開始日は2020年4月1日。所在地は、東京都千代田区丸の内の丸の内パークビルディングになる。

 今井新社長は、「丸の内パークビルディングのあるエリアは、丸の内ブリックスクエアと呼ばれ、もともとは3つのビルの集合体を再開発した場所。3つのビルのうちのひとつが古河総合ビルであり、私が富士通に入社したときに本社があった場所だ。縁を感じる場所である。この場所で新たなスタートを切ることになる。先月60歳になったが、気持ちはリボーン、つまり生まれ変わった気持ちで新たな挑戦をしたい」とした。

 Ridgelinezでは、今後2~3年で200億円前後の売上高を目指し、その波及効果として1500億円前後のインパクトを見込んでいる。

 「Ridgelinezはコンサルティングとプロトタイピングを担当することになり、それ以外の領域で5倍~10倍のインパクトが出ると見ている。初年度は日本を中心に活動する。ターゲットとなるのは、グローバルで事業を行っている日本の企業。そのためには、グローバルな技術トレンド、グローバルのトランスフォーメーションをとらえる必要があり、富士通が持つグローバルのアクセスポイントを活用したり、いくつかのコンサルティング会社との連携したりして、グローバルな知見を一緒に作り上げたい」(Ridgelinezの今井新社長)とした。

 当初は、約300人の体制でスタートし、富士通および富士通総研からの出向者が9割を占める。3年後には600人規模に拡大させる計画だ。「2割が離職することを想定した人事政策であり、それをもとに毎年100人ずつ増員していくことになる」とした。

 さらに、「Ridgelinezを一流のプロフェッショナルファームにしたい。自分たちが卓越したスキルを持ち、顧客がやりたいことをしっかり理解し、高い倫理観を持って、顧客をサポートしていく企業を目指す。そのためには、プロフェッショナルとしての市場価値にふさわしい、コンペティティブな報酬体系の導入や、360°評価、サードパーティ評価などの透明性が高い評価制度の採用、リモートワークやフリーランスの活用などを含めたワークプレイスの環境整備に取り組む。タレントが大切であり、タレントをいかに速く集め、いかに効果的に運営していくのかが肝になる。これらは4月1日から実行していくことになる」と述べた。

プロフェッショナルがパフォーマンスを発揮しやすい人事施策を採用

Ridgelinezの社名に込めた意味

 Ridgelinezの今井新社長は、「Practical Thought Leadership」を打ち出し、「実践的で、実現性がある思考的リーダーシップによって、顧客を適切な方向にガイドしていくことが大切である。業界動向についての洞察や技術的な実現性を見極め、お客さまが目指すべき姿へと導いていくことが役割である」と話す。

 この姿については、「インダストリー、コンピテンシー、アーキテクチャ、リアライゼーションといった異なる役割を持った組織が一緒になって、顧客のトランスフォーメーションをデザインしていく。売り上げを前年比15%増やすことを目標とした場合に、それによって競合上のポジションが変わるのか、利益率が急激に上がるのか、なにか意味がある数字であれば、それを目標にすることができる」と説明。

 また、「DXは面倒な部分が多い。果実が得られなければ目標が意味をなさない。DXの意味を顧客とともにしっかりと考え、合意形成をしていくことが大切である。また、多くのテクノロジーの組み合わせのなかで、どれを使えば、半年かかっていたものが3日でできるのか、といったことを提案できる力が必要である。こうした異なる役割を持ったチームの組み合わせによって、顧客の問題解決に、実践性を持って取り組みたい」とも述べた。

 そのほか、「グローバルに展開している外資系コンサルティング会社は競合になる。だが、競合と協調は表裏であり、顧客のためには競合とも喜んで手を組むこともある。Ridgelinezとして、やってみたいDXプロジェクトはどんなものであるのかということを、半年後を目標に提示したい。すでにいくつか動いているプロジェクトもある」などとした。

 なお、今井新社長は、Ridgelinezの社名についても説明。「Ridgelinezは、『稜線(りょうせん:Ridgeline)』を由来としている。稜線は山を形づくるものであり、登山道が稜線にあったりする。稜線があるからこそ、山の頂に登ることができる。トランスフォーメーションはチャレンジングなプログラムで、それをやり切るというのは非常に高い目標を持つのと同じ。その頂に到達するためのパスはひとつではない。さまざまなビジネスパートナーと一緒になって、高みに到達したいという思いを込めた。パートナーや顧客とともに取り組むからこそ、Ridgelinezと複数にしている。また、Sではなく、Zとしたのは、AtoZと言われるように、トランスフォーメーションの頭から最後までを手伝いたいという思いを込めた」と話した。

 同社では、「多くの山々が折り重なり合うことで美しい景色を生み出すように、多様な個性・才能との共創が重なることで新たな価値を生み出す存在を目指す」としている。

Ridgelinezでは、エンドトゥエンドをカバーするサービスを提供するとともに、パートナーや顧客とともに取り組んでいくという
Ridgelinezの社名の由来

DX企業への変革に取り組む富士通

 一方、富士通の時田社長は、富士通がIT企業からDX企業への変革に取り組んでいることに触れ、「富士通の強みはさまざまな先端テクノロジーと強固な顧客基盤に支えられた業種、業務ノウハウの蓄積にある。顧客の各種データを、AIやIoTに注入し、そこから新たな価値を創造し、再び顧客に提供するというデータの還流によって、DXを実現する会社になることを目指している。だが、業種、業務ごとのデータやノウハウを社内でシェアし、うまく活用することができず、豊富なデータを顧客や社会のための価値に還元するための仕組みも十分ではなかった」と発言。

 「富士通は、デジタル領域での成長を目指しており、2022年度にはテクノロジーソリューション全体で、売上高3兆5000億円、営業利益率10%を目指すほか、デジタル領域で売上高1兆3000億円を目指し、さまざまな施策に取り組んでいる」とする。

 その上で、「富士通はDX企業への変革に向けて、DXビジネスを本格化し拡大していくことと、富士通自身がDX企業となるための社内改革を進めていく、という2つに取り組んでいる。私は、できることならば、富士通グループの全社員13万人の一人ひとりと話をしたいと考えており、タウンホールミーティングなども積極的に行っている」と、現在の取り組みを説明。

 そして、「話を聞くと、富士通の社員は、富士通はこう変わらなくてはいけないという具体的な考えを持っており、DXでこんなことをやりたいと言ったときに、現場ではすでに考えている、ということも多かった。すでに下地はできており、そのスイッチを押すだけで富士通は大きく変わる。デジタルビジネスをこうやりたいという具体的なものを持っている社員が、富士通のなかにたくさんいることは財産である」と述べた。

時田社長が新たな人材を紹介

 今回の会見では、富士通の時田社長が、「富士通はDX企業への変革のために、ビジネスや社内プロセス、カルチャーまでを大きく見直しを図っている。そのなかで最も重要なのは人である。今日は、人を紹介したい」と語り、2019年8月に、インフォシス日本代表から富士通入りし、理事に就任した大西俊介氏のほか、4月1日付で富士通 CIO兼CDXO補佐 執行役員常務に就く福田譲氏、富士通 CMO 理事に就任する山本多絵子氏、3月1日付で富士通 M&A戦略担当 理事に就任したNicholas Fraser(ニコラス・フレイザー)氏を紹介。大西氏を除く3人が会見に登壇した。

 4月1日付で富士通のCIO兼CDXO補佐 執行役員常務に就任する福田譲氏は、「ルールが変わり、業種の垣根が変わるデジタルの世の中において、企業ごとの存在意義、存在価値を問い直して、いまの時代にあった形に事業を組み直す、経営のイニシアティブがDXである。デジタルやICTが果たす役割は大きいが、デジタルツールをどう使いこなすかということにとどまるものではない」と前置き。

 「過去10年間は、午後5時から午前9時までのコンシューマとしての生活の在り方が、モバイル技術、モバイルデバイスによって大きく変わった。これからの10年間に変わるのは、午前9時から午後5時までのビジネスユーザーとしての在り方である。日本を代表するICT企業である富士通自身が、デジタル時代の経営ビジョン、ビジネスモデル、業務プロセス、働き方を描き、AIやロボティクスと人の共生、データドリブン時代の事業運営の在り方などを自ら実行し、世の中に示し、それを顧客にサービスとして提供する責務は大きい。富士通なきDXは考えられないと感じて、入社をすることにした。全力で任務にあたりたい」と述べた。

 福田氏は、1997年にSAPジャパンに新卒で入社。23年間に渡って勤務しているが、2007年には同社バイスプレジデントに、2014年には同社代表取締役社長に就任した。

 富士通の時田社長は、「福田氏は、企業システムの高度化における第一人者である。業務プロセスやカルチャーなどを含めて、全面的な見直しを行い、富士通のDX化をけん引してもらう」とした。

富士通 CIO兼CDXO補佐 執行役員常務に就任する予定の福田譲氏

 3月1日付で、富士通 M&A戦略担当 理事に就任したフレイザー氏は、「これまでずっと金融業界で働き、8カ国に住んでおり、日本にはAccentureの時代に住んでいたことがある。情熱はM&Aにある。Ridgelinezの取り組みは、富士通にとってもエキサイティングなものである。これまで、企業がDXを加速するためのツールとして、M&Aが利用されてきた経緯がある。買収や売却、少数株主への投資、提携を含むM&Aは、Ridgelinezのビジネスを加速するためのツールとして使うことになる。最初に、リーダーたちの声に耳を傾け、これまでの経験から学び、ワールドクラスのチームづくりをし、戦略立案をすることになる。M&Aによって、明確な戦略の上で、明確に定義されたプロセスを進め、事業の変革を加速することになる」と述べた。

 フレイザー氏は、1986年にMcIntosh Securities Ltd.に入社。その後、ナショナルオーストラリア銀行(National Australia Bank)、Media Puzzled Pty、Accentureを経て、2017年3月からは、McKinsey & CompanyのAlliances&Acquisitions担当Global Directorに就任していた。

 「これまで培った手腕を生かし、戦略投資のひとつであるM&Aにより、将来の成長に向けた施策を担ってもらう」(時田社長)とした。

富士通 M&A戦略担当 理事のニコラス・フレイザー氏

 4月1日付で富士通のCMO 理事に就任する山本多絵子氏は、「ブランディングとマーケティングに取り組む。富士通を知らないビジネスマンはいないが、DX企業、あるいはグローバルカンパニーという点では、富士通の実力が認知度に反映されていない。宣伝広告だけの話ではなく、あらゆる顧客接点におけるカスタマエクスペリエンスを重視したいと考えている」との考えを示す。

 さらに、「顧客基盤は富士通の強みのひとつである。優秀なSEと優秀な営業が顧客のそばにいて、さまざまな提案をし、サポートしていくことがひと昔には重要だった。富士通はそこに強みを発揮した。だが、デジタルの社会になり、顧客が多様化し、顧客がネットにつながり、ベストプラクティスのソリューションを自ら購入する時代になっている。購入先の企業がどのように社会貢献しているのかという企業の倫理観、価値観が購入におけるクライテリアになってきている。従来の営業活動の延長線上では十分ではなくなってきている。富士通の企業理念に沿って、一貫したブランド、一貫したメッセージをあらゆる顧客接点で展開したい」とした。

 加えて、「もうひとつは、マーケティングにサイエンスを取り込むことである。富士通はテクノロジーカンパニーであり、マーケティングが使える優れたソリューションを持っている。世界中の最先端マーケティングのソリューション、ツールを導入できる技術者もいる。顧客に対してショーケースとなるマーケティングを行っていきたい。スモールスタートし、それをスピーディーに全社に展開し、ワクワクでき、経営にインパクトがあるマーケティングを行いたい」と話した。

 山本氏は1987年に三菱商事に入社し、その後、Gold Coast Technical Documentation Inc.、日本マイクロソフト、日本IBMを経て、直近では、日本マイクロソフトの業務執行役員 パートナー事業本部 パートナーマーケティング統括本部長を務めていた。

 富士通の時田社長は、「CMOとして、ブランド戦略や、市場や顧客とのコミュニケーション強化を担ってもらう」と、山本氏を紹介している。

富士通 CMO 理事の山本多絵子氏

 なお2020年4月1日付で執行役員常務に就任する大西氏については、「4月1日以降、執行役員常務として、グローバルに通用する品質と、デリバリー能力をさらに強化する役割を担ってもらう」(富士通の時田社長)とした。

ガッツポーズを取る関係者