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“つなぐ技術”で経理財務部門をアナログからデジタルへ――、セゾン情報システムズが「BlackLineリンケージサービス」を4月から提供へ
2020年2月21日 15:08
株式会社セゾン情報システムズは20日、同社が提供するデータ連携ミドルウェア「DataSpider Servista(以下、DataSpider)」に、経理財務自動化ソリューション「BlackLine」を組み合わせた「BlackLineリンケージサービス」を4月から提供することを発表した。
セゾン情報システムズ 代表取締役社長 内田和弘氏は「DataSpiderをベースにしたリンケージビジネスは現在、当社がもっとも力を入れている分野。すでにSAP ConcurとTableaを連携させたサービスを提供してきたが、非常に好調にビジネスが推移している。今回、BlackLineが加わったことでさらにラインアップが強化された。今後はこの3本の事業を積極的に展開し、DataSpiderのシェアそのものを高めていきたい」と語る。
財務経理部門のデジタル化を推進するサービスの第2弾
セゾン情報システムズが展開するリンケージビジネスは、同社のフラグシップであるDataSpiderやファイル連携ミドルウェア「HULFT」をベースとして構築されたデータ連携基盤に、サードパーティのSaaSを連携させることで、業務の効率化や経営情報の可視化を実現し、経営刷新につなげていくサービス群。
財務経理部門のデジタル化を推進する「モダンファイナンスサービス」と、顧客の全データを可視化し、意思決定の迅速化を図る「モダンマネジメントサービス」があり、モダンファイナンスサービスとしてConcur、モダンマネジメントサービスとしてTableauをそれぞれインプリメントして提供している。
今回発表されたBlackLineリンケージサービスはConcurにつづくモダンファイナンスの第2弾となる。
米BlackLineが提供するSaaS「BlackLine」は、企業の財務報告業務を効率化/自動化するサービスで、NASDAQ、Zurich、eBayなどエンタープライズ企業を中心にグローバルで約3000社に導入されている。
最大の特徴は、経理/財務にかかるすべての業務プロセスが自動化されているだけではなく、締めを待たずに継続的に業務を回し続ける「継続処理(コンティニュアス・アカウンティング:continuous accounting)」を取り入れている点だ。
日次(にちじ)処理から残高照合、仕訳入力、月次締め――、と続く、バッチ型の直列処理の場合、前の業務が終わらなければ次の業務に取りかかれず、負荷の集中や精度の劣化を引き起こす大きな要因となる。また、デジタル化されていないアナログな業務プロセスは不透明な部分が多く、不適切会計に発展しやすいため、ガバナンスの観点からもリスクが高い。
一方、BlackLineは「経理財務部門のアナログをすべてデジタル化する」(ブラックライン 代表取締役社長 古濱淑子氏)というコンセプトのもと、タスク管理、勘定照合、マッチング、再分析、仕訳入力、会社間取引管理などが機能としてデジタル化されており、ERPなどから取り込まれたデータはすぐにすべてのタスクに反映される。
目視による確認や紙ベースの承認などアナログで属人的な作業を必要としないので透明性や信頼性が向上し、不正会計を防ぐ効果も高い。「CFOが経理業務で抱えている生産性、スピード、ガバナンスの課題を解決し、決算早期化を実現することがコンティニュアスアカウンティングのコンセプトであり、BlackLineが得意とするところ」(古濱氏)。
セゾン情報システムズは、BlackLineリンケージサービスの提供に先立ち、2019年9月より自社導入を開始。勘定照合およびタスク管理を第1フェーズ(2020年1月完了)、データ連携を含めたマッチング処理を第2・第3フェーズとして段階的に機能拡張を進めており、すべての統合作業が6月に完了する予定となっている。
なお、現時点のBlackLineリンケージサービスで提供する機能は勘定照合、タスク管理、マッチング処理に絞られており、その他の機能(再分析、仕訳入力など)については、将来的に拡張機能として取り入れていく方針だ。
サービスの提供形態は、BlackLineの導入コンサルティングや設定、テスト、トレーニング、リリース準備などを行う「BlackLineインプリメントサービス」と、BlackLineと顧客の社内システム間のデータ連携を開発する「BlackLineデータ連携サービス」があり、いずれも提供価格は500万円から、導入期間は3カ月から。今後3年間で50社の導入を目指す。
セゾン情報システムズ 財務経理システム 室長 鷲尾武氏は、実際に同社にBlackLineリンケージサービスを導入した効果について「決算タスクの可視化、電子承認による統制強化、自動承認とデータ連携、情報の一元管理、いずれの項目においてもけた違いの効率化が得られ、統制強化に大きく貢献した。いままで手作業でやっていた作業、例えばExcelによる消込や紙ベースの承認、目視による確認などがすべて自動化され、決算作業の30%が削減された。経理部門の働き方そのものが変わると実感しており、普及すれば日本企業の生産性も大きく上がるのではないか」と述べ、効率化と統制強化の両面で高く評価している。
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2016年6月にSAP Concurとの連携でリンケージビジネスをスタートして以来、同社におけるリンケージビジネスは順調に成長しており、2019年度第3四半期終了時点で売上高は前年同期比175%の8億2800万円、累計導入社数は110社に上る。
好調な業績の背景には、DataSpiderおよびHULFTで培った、社内外のさまざまなデータ/システムを“つなぐ”技術への信頼性と、「まずは自社で導入/運用し、そのノウハウをもとに導入サービスとして体系化してから提供する」(セゾン情報システムズ 流通ITサービス事業部 事業部長 兼 リンケージサービス部 部長 花香勝氏)という、高品質への徹底したフォーカスが挙げられる。
単なるSaaSのインプリメントにとどまらず、顧客が抱えるシステム/データ連携までをワンストップで提供できる点は同社ならではの優位点といえるだろう。
「われわれの“つなぐ技術”でお客さまのデジタルトランスフォーメーションを支援したい」(花香氏)との言葉通り、経理財務部門のように属人的な作業に依存していた分野にデジタルと自動化を普及させ、日本企業を生産性の高い事業構造に変えていくことを狙う。