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特徴が異なる2つのクラウド化に対応できる――、日本IBMがクラウド事業の強みを説明

 日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は21日、同社のクラウド事業について説明した。現在、IBMの全売上高の25%をクラウドビジネスが占めているという。

 米IBM IBM Cloudプラットフォーム担当のハリッシュ・グラマ(Harish Grama)ゼネラルマネージャーは、「多くの企業においてクラウド化が進展しているが、いまだにアプリケーションのほとんどが、オンプレミス環境で利用されている。全世界の150人のCIOにアンケートをとったところ、複数のクラウド環境を使用している企業の割合は94%、複数のパブリッククラウド事業者を使用している企業の割合は67%に達している。だがその一方で、クラウド間の移行を重要な懸念事項として認識している企業は73%、クラウド間の接続性が重要な懸念事項として認識している企業は82%、管理の一貫性が重要な懸念事項として認識している企業は67%に達している。特定のクラウドに縛られたくないと感じており、共通のデータを活用する際の課題や、複雑化する管理性の課題が発生している」と指摘。

 「IBMでは、ハイブリッド、マルチクラウド、オープン、セキュア、管理という、5つの原則からアプローチをしており、これにのっとったIBM Cloudを活用することで、顧客はベンダーロックインを回避でき、クラウド環境全体を、一貫した管理性を実現しながら、高いサービスレベルサポートを利用できる。パブリック、プライベート、ハイブリッドといったあらゆるクラウド環境において、企業の力を引き出すことができるクラウドプラットフォームを提供することができる」と述べた。

米IBM IBM Cloudプラットフォーム担当のハリッシュ・グラマ ゼネラルマネージャー
5つの原則

 また、日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏は、「IBM Cloudは、SoRとSoEといった特徴が異なる2つのクラウド化に対応できる点にある。ベアメタルの上で、VMwareによるSoRのハイブリッドクラウド化ができ、オープンテクノロジーであるKubernetesを活用することで、SoEのハイブリッドクラウドおよびマルチクラウド化を推進できる。エンタープライズのクラウド移行はまだまだ時間がかかるが、そこに対する提案においては、パブリッククラウドだけで展開してきた企業とは立ち位置が異なる、オンプレミスを熟知する企業としての提案ができる。オンプレミスと新たな仕組みを、どのようにデザインして、どのようにトランスフォーメーションしていくのかが重要であり、そこにIBMのハイブリッドクラウド戦略の狙いがある」とした。

日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏
特性の異なる、2種類のアプリケーションのクラウド化に対応

 また、IBM Cloudデータセンターは、ダラス、ワシントンD.C.、ロンドン、フランクフルト、シドニー、東京の6つのリージョンで、アベイラビリティゾーンを提供しているほか、新たに関西データセンターを日本に開設することを発表しており、東京リージョンと連携することで、より高い可用性と信頼性を実現できることを強調した。

 日本IBMの三澤取締役専務執行役員は、「東京リージョンは、豊洲、大宮、川崎の3つのデータセンターで構成しており、それぞれのゾーン間を、2ms以下という太いネットワークで結んでいる。また、リージョン間、アベイラビリティ間の通信は無料であり、グローバルにつながるネットワークを自由に利用できる」などとした。

 さらに、「IBMが、どこにデータセンターがあるのかということを明確にしているのには理由がある。それは、金融機関などの場合には、どこに本番環境があり、どこでバックアップをしているのかといったことを知る必要があるためだ。そこもパブリッククラウドベンダーの考え方とは異なる部分である」と述べた。

IBM Cloudデータセンター
6つのリージョンでアベイラビリティゾーンを提供

 また、2019年6月18日から開催しているThink Summitにおいて、VMware on IBM Cloudの事例として、福井銀行およびNISSHAの2社を紹介したことに触れ、「いずれも、VMware on IBM Cloudを利用して、オンプレミスをパブリッククラウドへとリフトする事例だが、通常であれば1年から1年半かかるクラウド移行を、3カ月程度で終わらせることができた。他社のクラウド移行との違いは、サーバー1台の構成からスタートが可能であるなど、スモールスタートができるという点。PoCのレベルでも、VMware on IBM Cloudで、クラウドに移行ができる。他社は、Sサイズといっても、ダブルXLサイズぐらいになっている」などと例えた。

 さらに、IBM Cloudの特徴は、Kubernetesをハイブリッドクラウドのためのネイティブエンジンと位置づけていることだとアピール。「Kubernetesを核に据えることで、パブリッククラウドにおけるベンダーロックインを回避できるようにしている点。唯一、IBMだけが、クラウド実装をするためのコンテナプラットフォームをKubernetesに定めており、これによって可搬性を高めることができる。イノベーションを加速させるという点では、クラウド化が必要であるが、既存アプリケーションをクラウドネイティブとして拡張するには、時間がかかり、マイクロサービスとして書き直すにも無理がある。そうした課題をKubernetesによって解決できる。オンプレミスとパブリッククラウドの間にあるがけを、オープンスタンダードテクノロジーで乗り越えることができる」とした。

オンプレミスとパブリッククラウドの間にあるがけを、オープンスタンダードテクノロジーで乗り越える

 このほか、「ロギングや監視、測定、セキュリティ、IDアクセス管理などの運用サービスを共通化し、その上で、コンテナ化された多様な企業アプリケーションを稼働させることができる。ここでは、管理者権限を顧客が持つことが大切であり、勝手にパッチを当てたり、アップデートしたりしないようなコンロトールできるようにすることも大切である。そこにもIBM Cloudの特徴がある」などとした。

 また、オンプレミス環境からの移行については、IBM Cloud Paksを提供。今後、IBM Cloud Paks for Applicationのほか、Data、Integration、Automation、Managementといった各種Paksを用意し、クラウドネイティブアプリケーションの開発を支援していくことになるとした。「オンプレミスのワークロードを、クラウドネイティブの上でも提供できるようになる」と述べた。

 一方で、AIの取り組みについても触れた。

 日本IBMの三澤取締役専務執行役員は、「AIにおいては、データをいかに整備するか、そして、信頼性をどう確保するかという2点が課題になっている」とし、「IBMでは、The AI Ladderの提供と、エンタープライズAIに必要なすべてを提供できるポートフォリオ全体で課題を解決している」と語る。

 The AI Ladderは、AIの本格的なビジネス活用のための環境を実現するステップと位置づけてり、あらゆる場所で発生する、あらゆるタイプのデータを集めて、蓄積し、それを整理、体系化。そこから、分析を行い、AIモデルを構築。AIモデルをビジネスプロセスに組み込むことができるという。一方で、エンタープライズAIを実現するポートフォリオとして、IBM Cloud Pak for Dataや、ハイブリッドデータ管理の「Db2ファミリー」、データガバナンスとデータ統合を行うための「InfoSphereファミリー」に加え、整理のための「Watson Knowledge Catalog」、カタログのための「Watson Studio」、実行するための「Watson Machine Leaning」、管理のための「Watson OpenScale」を提供していることを示した。

The AI Ladder
エンタープライズAIを実現するポートフォリオ