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日本IBM、「IBM Cloud」の2018年の事業戦略を発表 Watsonの拡張計画も明らかに

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は19日、同社のクラウド事業に関する2018年の事業方針説明会を開催した。説明会では、クラウドサービス「IBM Cloud」のさらなる普及促進に向けた具体的な事業戦略、およびAIコンピュータ「IBM Watson」の今後のロードマップを明らかにした。

コンセプトは“ビジネスのためのクラウド”

 まず、「IBM Cloud」の事業方針について、日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏は、「『IBM Cloud』では、“ビジネスのためのクラウド”をコンセプトとして、事業を展開している。その中で、『データデザイン』、『AI活用』、『セキュリティ』の3つのポイントに重点を置いて機能強化に取り組んでいる」と説明。

 そして、このコンセプトを踏まえたうえで、2018年の「IBM Cloud」の事業戦略として、(1)既存システムのクラウド化、クラウドネイティブなアプローチの推進、(2)「Cloud+」で顧客へのビジネス価値を高める、(3)ビジネスパートナーとの協業を強化する――の3つの施策を挙げた。

日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏

 「現在、日本企業の9割以上が旧来型デザインのアプリケーションを使用しているが、一昨年(2016年)ごろから、クラウド化への動きが本格化してきている。そこで当社では今年、この動きをさらに加速させていくと同時に、デジタルイノベーションを起こすためのクラウドネイティブなアプローチも推進していく。また、2つ目の施策では、クラウドプラットフォームを提供するだけでなく、その上にビジネス価値を乗せていくことに注力する。特に、“Cloud+AI”の分野での強みを生かし、『IBM Cloud』と『IBM Watson』を組み合わせたソリューションを強化していく。そして、3つ目の施策では、『IBM Cloud』のさらなる普及促進に向けて、あらためてビジネスパートナーとの協業強化を図っていく」(三澤氏)としている。

エンタープライズ・ハイブリッドクラウドの利用を促進するソリューションを提供

 これら3つの施策に基づく具体的な取り組みとしては、既存システムのクラウド化の推進では、クラウド上にオンプレミスと完全に同じVMware環境を移行できるソリューション「VMware on IBM Cloud」の提供に加えて、今回、新たにエンタープライズ・ハイブリッドクラウドの利用を促進するソリューション「VMware Hybrid Cloud Extension(HCX)on IBM Cloud」を2月19日から提供開始した。

 これにより、既存のVMware環境(vSphere 5.1以上が対象)を変更することなく、顧客のオンプレミス環境と「IBM Cloud」の間で、簡単にVMwareワークロードを「IBM Cloud」にマイグレーション可能になる。

 利用料金は、1サイトあたり月額約57万円に加え、VMwareを移行する際はVMごとに月額約5500円。移行時の料金は、移行するときだけ従量制で課金する。

「VMware Hybrid Cloud Extension(HCX)on IBM Cloud」の概要

 クラウドネイティブなアプローチの推進では、オープンスタンダード(Micro Service、CaaS)の採用、IBMソフトウェアのコンテナ化、マルチプラットフォーム対応をキーポイントとして挙げている。

 また、「IBM Cloud」のデプロイメントモデルの新たな選択肢として、クラウドネイティブの仕組みをオンプレミス環境に適用できる「IBM Cloud Private」を昨年秋から提供しており、「発表後3か月で、Community Editionのダウンロード数はグローバルで1万件以上、採用実績は120社以上となり、大きな注目を集めている」(三澤氏)という。

新たなパートナープログラムを立ち上げ

 ビジネスパートナーとの協業強化に関しては、新たなパートナープログラムとして「IBM Cloud Partner League」を立ち上げることを発表した。このプログラムは、「IBM Cloud」の価値をビジネスパートナーのサービスを通して顧客に提供していくもの。プログラムへの参画条件は、「IBM Cloudコンピテンシーを満たしている」、「IBM Cloudを基にしたサービスメニューまたは運用体制を確立している」、「特定のテーマに秀でている」の3項目という。

 プログラムの第1弾として、VMwareビジネスに特化した「VMware on IBM Cloud League」をスタートし、将来的にはクラウドネイティブアプリの開発、コンテナ技術、Watsonなど、今後の企業に必要な分野に拡大していく考え。

IBM Watsonのロードマップを紹介

 「Cloud+」で顧客へのビジネス価値を高める取り組みについては、“Cloud+AI”分野にフォーカスを当て、「IBM Watson」の今後のロードマップについて説明した。

 日本IBM 執行役員 ワトソン&クラウドプラットフォーム事業部長の吉崎敏文氏は、Watson Platformの機能拡張について、「Watson APIでは、Conversationの統合プラットフォーム化および学習の生産性を大幅に向上する。また、Discoveryの日本語対応を強化し、法的文書の活用を進める。さらに、機能拡張の目玉として、新サービス『Deep Leaning as a Service』(DLaaS)を提供する。これによって、Deep Leaningシステムの開発を加速する。このほかに、学習済み知識コーパスの提供も行っていく」との計画を明かした。

日本IBM 執行役員 ワトソン&クラウドプラットフォーム事業部長の吉崎敏文氏
Watson Platform機能拡張の計画

 また吉崎氏は、「2016年に『IBM Watson』の日本語版を提供して以来、多く顧客において本番環境での稼働実績を積み重ねてきたが、その中で、企業向けのAIでは顧客自体のデータ整備が最大の課題であることを再認識した」とし、この課題に対して、新たな統合データプラットフォーム「IBM Watson Data Platform」を提供することを発表した。

「IBM Watson Data Platform」の概要

 「IBM Watson Data Platform」は、「IBM Cloud」上で稼働する高度なデータ分析基盤で、データを「IBM Watson」に効率的に提供できるよう整備するためのデータプラットフォーム。現時点で提供している機能は、チームでの分析を可能にする「Data Science Experience(DSX)」、DSXで利用するクラウド/オンプレミスにあるデータを見つけ、カタログ化する「Data Catalog」、DSXで分析ができるようデータを加工、連携する「Data Refinery」(β版)、ダッシュボードとレポート作成の「Dynamic Dash Board」(β版)となっている。