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モビンギ、国内企業のクラウド活用状況に関するホワイトペーパーを公開

クラウド利用における課題のトップは「コスト削減」に

 クラウドコスト削減ツール「Mobingi Wave」を開発・提供するモビンギ株式会社は9日、ホワイトペーパー「Cloud User Analysis vol.1 国内企業におけるクラウド活用状況と現有課題」をWebサイトで公開した。独立系ITコンサルティング・調査会社である株式会社アイ・ティ・アール(以下、ITR)に国内企業のクラウド活用度に関する調査を依頼し、ITRが客観・中立の立場で分析したもので、このホワイトペーパーの公開に合わせて、調査結果の内容に関する説明会も行われた。

 今回のホワイトペーパーは、ITRが2019年3月に、年商1億円以上かつ従業員数100人以上で、IaaS/PaaSを利用している国内企業の担当者を対象に「クラウド活用度調査」を実施し、その結果を分析したもの。説明会では、ホワイトペーパーの中から主要な調査結果を紹介しながら、モビンギの見解や課題の解決策などを解説した。

IaaS/PaaS利用企業では企業システムの半分近くをクラウド化

 まず、企業における自社システムのクラウド化の割合は、半数強が「40%未満」を選択し、残りが「40%以上」と回答。IaaS/PaaSを利用する企業では、クラウド化はすでに企業システムの半分近くに及んでいることがわかった。

 また、クラウド導入の経緯について尋ねたところ、「これまでシステムはなかったが、クラウド上に新規構築」は10%と少数で、「オンプレミスのシステムをクラウドに移転(59%)」および「オンプレミスのシステムを廃棄し、クラウド上に新規構築(31%)」と既存システムにおいてクラウドを利用する例が大半を占める結果となった。

自社システムのクラウド化割合と導入の経緯

 この結果について、モビンギ Director of Sales&Marketingの小路剛広氏は、「企業にとって、もはやクラウドは必須の選択肢になっており、クラウドに対するハードルはほとんどなくなっていることを実感した」とコメント。

 モビンギ Vice President, Salesの石田知也氏は、「従来は、オンプレミスのシステムをクラウドに単純移行する企業が多かったが、この2年で、オンプレミスからサーバーレスでクラウド上に移転するなどトライアル的な取り組みが増えてきている」と述べた。

モビンギ Director of Sales&Marketingの小路剛広氏
モビンギ Vice President, Salesの石田知也氏

 クラウドで利用しているサービスについて聞いた結果では、最も高い選択率となったのは「仮想マシン」で半数近くにのぼった。次いで、仮想マシンから利用するストレージである「ブロックストレージ」が3割超、そして「API管理」「アプリ開発/実行環境」と続く結果となった。

クラウドで利用しているサービス

 小路氏は、「この結果から、API管理やサーバーレス/FaaS(Function as a Service)、NoSQLなど、サーバーレスアーキテクチャをカジュアルに利用する企業が増えてきていることが読み取れる。一方で、コンテナの利用率は非常に低く、一歩先のクラウド活用はまだ進んでいないことが浮き彫りになった」と解説した。

 クラウドで利用しているサービスについて、利用プロバイダー別に見ると、「Amazon Web Services」(以下、AWS)では「仮想マシン」の選択率が6割を上回って突出して高いことに加えて、15項目中5項目で選択率が3割以上となったことから、「AWS」上で多くのサービスが活用されている姿がうかがえる結果となった。

クラウドで利用しているサービス(プロバイダー別)

 「Microsoft、Google、AWSともに、Kubernetesを使ったコンテナサービスをリリースしているにもかかわらず、調査ではコンテナの利用率が10%前後とかなり低かったことに驚いた」と小路氏。

 石田氏は、「MicrosoftとGoogleは、PaaSとSaaSで少し先を行き過ぎた感があるのに対して、AWSはクラウドにデータを格納することを重視した結果、仮想マシンの利用率が非常に高くなったとみている。サーバーレスアーキテクチャについては、MicrosoftとGoogleの利用率がもう少し高くてもよいのではないかと感じた」とコメントした。

クラウド利用の課題では「コストの低減」「リソース消費量の抑制」などが上位に

 クラウドの利用における課題について聞いたところ、約95%の企業が何らかの課題を認識していることが明らかとなった。具体的な項目を見ると、「コストの低減」が4割強の選択率でトップとなり、次いで「リソース消費量の抑制」と「ワークロード分析によるリソース最適化」が3割台で続いた。

 クラウド利用では、コストとともにリソース消費量の抑制や最適化といった直接コストに影響を及ぼす項目が課題となっている実態が浮き彫りとなった。また、クラウド黎明期には懸念されることが多かった「セキュリティ対策の向上」についてはやや低い22%となり、クラウドのセキュリティに対する信頼は向上しつつあるようだ。

クラウドの利用における課題

 これに対して小路氏は、「各ベンダーが強力なセキュリティサービスをリリースしていることに加え、それらのサービスを利用したベストプラクティスの活用も広がり、セキュリティレベルの高いシステムを構築できるようになったことで、セキュリティに対する課題感が低下してきている」との見解を示した。

 石田氏は、「クラウド利用の課題のトップにコスト削減が上がったことは納得の結果といえる。一時期は、クラウドを利用すればコスト削減ができると注目されたが、それは誤った認識だ。現在では、企業の各部署で様々なクラウドサービスが短いサイクルで使われており、それらの利用料を合わせると、予想以上に大きなコスト負担になってしまうケースも多い」と指摘した。

 クラウド利用における運用コスト削減効果については、「運用コストが削減された」という回答が7割強にのぼった。ただ、「大幅に削減できた」との回答は16%と低い割合で、クラウドの恩恵を十分に得られるステージに到達できていない企業が多いことが浮き彫りになった。

クラウド利用における運用コスト削減効果

 石田氏は、「オンプレミスからクラウドに単純に移転しただけでは、運用コストの削減効果はあまり実感できないのが実状だ。とくに、仮想サーバーが増えてくると、セキュリティパッチの適用などの業務に依然としてコストがかかり、大幅な運用コスト削減には至っていない。このことは、本当の意味でクラウドを使いこなせていない企業がまだまだ多いことの表れだとみている」との見解を示した。

 クラウド利用料の請求処理を行っている部門について聞いたところ、「IT部門」が4割を上回ってトップとなり、次いで「事業部門(システムオーナー部門)」が2割強で続く結果となった。また、従来からシステム管理を担っている「IT部門」と「IT子会社」の割合を合算すると6割に迫っている。

クラウド利用料の請求処理を行う部門

 続いて、クラウド利用料の経費処理にかかる日数を聞くと、「3-7日未満」と「7-10日未満」がそれぞれ約4分の1の割合を占めた。また、7日以上の日数をかけている企業の割合が、全体の半数強にのぼることが明らかになった。このように経費処理に時間を要しているのは、クラウドサービスの構成や課金体系が複雑であり、利用実態の確認や課金配賦に労力がかかっていることが背景にあると推測している。

クラウド利用料の経費処理にかかる日数

 なお、モビンギでは、今回のホワイトペーパーの続編として、「Cloud User Analysis vol.2 クラウド利用企業によるコスト管理・経理業務の状況(仮称)」を5月末に公開する予定。