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柔軟かつシンプルな「NetApp HCI」でユーザーの新たな課題解決を支援――、ネットアップのHCI戦略

 ネットアップ合同会社は26日、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品である「NetApp HCI」の事業戦略について説明。出荷開始から1年を経たずに、顧客数は全世界で350社、出荷容量は200PB以上に達したことを明らかにした。

NetApp HCIの利用例

 ネットアップ システム技術本部 ソリューションアーキテクト部の神原豊彦部長は、「ストレージベンダーであるネットアップが、なぜHCI分野に参入したのか。それは、ネットアップが25年間にわたって提供してきたストレージのユーザーにおいて、新たな課題解決の必要性が発生し、この課題解決に対する要望が増えてきたことが背景にある。『ネットアップのテクノロジーによって、顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支えることができる』と考えたことが、きっかけになっている」とする。

ネットアップ システム技術本部 ソリューションアーキテクト部の神原豊彦部長
先端IT分野にチャレンジする企業/組織における課題

 イスラエルのCoca-Colaでは、製造プラントの自動化や品質向上を目的にクラウドと融合した先進IT技術を導入。新たな製造ラインを立ち上げたところ、データが急激に増加し、サーバーの性能が出ないといった問題が発生してしまった。

 「これでは製造ラインを自動化することができず、むしろ製造の遅延にもつながりかねないという状況に陥った。ここにネットアップのHCIを導入することで、応答性能を120倍にまで向上させ、この課題を解決した」という。

 また、全米有数の小児医療施設である米Children's Mercyでは、医療ITシステムの高度化にあわせて、画像データが急増。これにより、データのバックアップシステムが逼迫するという問題が発生した。

 「医療分野において、医療データのバックアップはミッションクリテカルな問題であり、早急な解決が求められたが、それらに対応するための専門知識を持った人員が不足しているという課題があった。日本国内のサービス業や自治体からも、同様の要望が出ているのが現状である。Children's Mercyでは、HCIの導入によって約500時間のIT管理工数を削減。6人のIT担当者が交代制で対応するという限られたリソースのなかでも運用できるようになった」という。

 ITサービスの独DARZでは、コンテナクラスタの展開作業や、コンテナ間でのデータ共有アーキテクチャーが技術的課題となっていたが、HCIの導入によって、1000以上のコンテナ同時展開が可能になったという。

ユーザー事例

 ネットアップの神原部長は、「先端IT技術を活用しようと考えている多くの企業においては、展開作業時間をもっと早くして、開発作業の時間を増やしたい、特殊な技術や知識を必要とせずにパブリッククラウドのようなインフラ操作や運用が欲しい、可視化された予測可能なコンピューティング性能を提供してほしいという声が多い」と紹介。

 その上で、「ネットアップのHCIは、当社が掲げるデータファブリックの考え方を導入。従来のHCIの課題に着目し、ストレージを分離することで、HCIのメリットはそのままに、さまざまな課題を解消することができる。パブリッククラウドのローカルリージョンのようなものが欲しい、という要望にも応えることとができる」と、自社の強みをアピールした。

NetApp HCIの特徴

 なお、2018年11月に開催したNetAppのプライベートイベントにおいて、同社では、NetApp HCIの「HCI」の意味を“Hyper-Converged Infrastructure”ではなく“Hybrid Cloud Infrastructure”と定義。ハイブリッドクラウドやマルチクラウドを実現するためのプライベートクラウドプラットフォームに位置付、パブリッククラウドのローカルリージョンとしての使いやすさを実現することを目指していると説明する。

自社のHCIを“Hybrid Cloud Infrastructure”と定義

 また、オープンアーキテクチャであることを打ち出し、VMwareやRed Hat、Docker、NVIDIAなどとの戦略的提携や、GoogleやAWS、Azureなどのクラウドとの連携、Kubernetesなどのオープン技術の活用などを強みとすることを強調した。

 さらに、以下の3つが大きな特徴だとアピールする。

予測可能

パフォーマンスを保証しオーバーヘッドがない。重複排除や圧縮も常時オン。制御用VMの負荷影響もない。クラウド状態を監視できる。

柔軟性

コンピュートとストレージを自由に拡張でき、組み合わせが自由であること。さらに、外部ホストからの利用も可能。ハイブリッドインフラとしてデータファブリックを構成できる。

シンプル

45分で構築でき、多様なAPIによって自動化が容易。VMwareとの運用環境も統合できる。

3つの特徴

 NetApp HCIがターゲットとする領域としては、GPU対応のHCIコンピュートノードの提供と、ONTAP Select/Cloud Volumes ONTAPによるクラウド連携で実現する「エンタープライズVDI」、QoSによる性能保証型のプライベートクラウドによって、HCIの適用分野を拡大することで実現する「SoR型業務アプリケーションシステム」、AIやIoT、ML-DLなどの先進IT技術の活用とともに、エンタープライズ領域へのコンテナ技術の対応を推進する「コンテナベースアプリケーション/DevOps」の3つを挙げる。

エンタープライズVDI
SoR型業務アプリケーションシステム
コンテナベースアプリケーション/DevOps

 ネットアップ システム技術本部 ソリューションアーキテクト部 シニアソリューションアーキテクトの大削緑氏は、「NetApp HCIでは、キャパシティライセンスモデルを提供し、最適なライセンス形態で利用できる環境も提供している。今後もクラウドの親和性や連携を強め、クラウドを適材適所で使いたいというニーズに対応していく。HCIをより簡単に利用できるような環境を提供する」と話す。

 さらに、「いまは、HCI=VDIという認識が強いが、ネットアップは、NetApp HCIによって、エンタープライズ領域までターゲットを広げ、HCIの世界観を変えたい」とした。

ネットアップ システム技術本部 ソリューションアーキテクト部 シニアソリューションアーキテクトの大削緑氏

 ネットアップでは、製品発表後もHCIのラインアップも強化しており、2019年1月に発売した「H410Cシリーズ」では、CPUをSkylakeに進化させたほか、コア数やCPU、メモリの組み合わせの多様化を実現した。

 また、新たにGPUを搭載した製品として「H610Cシリーズ」を発表。NVIDIAのTesla M10を2基搭載し、Windows 10のVDIに対応するという。「GPU搭載モデルにより、さらに高度な利用環境にも対応していく」(ネットアップの大削氏)とした。

製品ラインアップ
2019年1月に発売したH410Cシリーズ