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フラッシュストレージでは年間を通じて国内ナンバーワンを獲得する――、ネットアップ岩上純一社長
2018年8月3日 06:00
ネットアップ合同会社は2日、2018年5月からスタートした2019年度の事業戦略について説明した。
ネットアップの岩上純一社長は、「フラッシュストレージでは、年間を通じて国内ナンバーワンシェアを獲得。また2019年までに、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)で2位を獲得する」との目標を打ち出した。
2018年度第1四半期(2018年1~3月)においては、国内ストレージ出荷容量シェアでは20%、国内オールフラッシュアレイ出荷額シェアでは28%となり、いずれも国内首位となっている。
「国内ストレージのシェアは、OEMを含めるとさらに拡大することになる。ストレージの出荷容量が首位ということは購買力でも首位ということであり、それが競争力の強化につながっている。また、HCIでは首位を狙うことよりも、まずは確実に2位になることを目指す。これは、100万円を貯めるにはまずは10万円から、という私の性格を反映したものである」などと語った。
また、「ネットアップは、新たな技術を追求することはもちろんだが、それを製品にし、販売することが目的になってはいけないと考えている。ハードウェアだけでなく、最新のデータ管理機能も提供し、ハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境を通じて、企業の絶対経済効果を実現することを目的にしている。クラウドにフォーカスするとともに、HCIやAIによる新規マーケットでのビジネスを拡大。顧客のデジタルトランスフォーメーションとデータ駆動型ビジネスへの変革を支援することになる」とした。
なお、ネットアップの日本法人は、2018年5月から合同会社に改組。「2018年7月末に終了した当社第1四半期は、グローバルで前年同期比20%増の成長が確定した。過去3年間にわたって、ストレージカンパニーからデータマネジメントカンパニーへの転換を図ってきたが、この3年間で売上成長や製品売上がマイナスからプラスへと転換している。その戦略が正しかったことを証明するものになっている」とした。
さらに、従来からのストレージシステムを担当する「Storage Systems & Software」、HCIを担当する「Cloud Infrastructure」、クラウドストレージを担当する「Cloud Data Services」の3つのビジネスユニット体制に再編したことに触れ、「2021年に向けて、HCIは市場全体で29%増の成長が見込まれ、クラウドストレージも13%増の成長が見込まれる。一方で、ストレージシステムは4%減とマイナス成長である。だが、今年後半にはHDDとSDDの価格ポイントが逆転することになる。それによって、オールフラッシュ化の動きが加速することになるだろう。ネットアップが強い分野に移行してくることになり、われわれにとっては、この分野でも成長が期待できる」とした。
このほか岩上社長は、「日本法人が1998年5月に設立してから、今年で20年目の節目に当たる。10月9日にCEOのジョージ・クリアンが来日して、それを祝うイベントを開催することになる」と述べた。
エッジ、コア、クラウドをシームレスに提供できる点が特徴
一方、ネットアップの近藤正孝常務執行役員兼CTOは、「新たなデータサイクルの時代におけるネットアップの特徴は、エッジ、コア、クラウドをシームレスに提供できるところにある。これが他社と異なる点」と語った。
パブリッククラウド/プライベートクラウドの「クラウド」においては、クラウド直結型高性能統合ストレージ「NetApp Private Storage」、クラウドデータサービス「Cloud Volume ONTAP」、ストレージからクラウドへのデータ自動階層化を行う「FabricPool」を提供していることを示した。
また、データの発生点、データ収集や廃棄までを担う「IoTエッジ」では、コモディティハード上での統合データ管理を行う「ONTAP Select」を提供。今後、超低レイテンシサーバーサイドストレージの「NetApp MAX Data」も提供するという。
専用ハードウェア、プライベートクラウドによるデプロイメントを行う「コア」では、ハイパフォーマンスオールフラッシュストレージ「All Flash FAS」、「FlexGroup」を提供。ここでは、SSD時代の新たなストレージネットワーク規格とされる「NVMe over Fabric」に対応し、これを活用した業界初のエンタープライズストレージ「AFF A800/ONTAP 9.4」を発売する。
「AFF A800/ONTAP 9.4は、業界初のエンドトゥエンドNVMe over Fabricベースのエンタープライズストレージであり、100Gigabit Ethernet(GbE)と32Gbps FCに対応した高速高性能I/Oを実現する」と述べた。
ここでは、「データアクセスにおけるボトルネックは、以前はストレージであったが、フラッシュの普及により、ネットワークがボトルネックになってきた。100GbE、NVMe over Fabric、RDMA、ストレージクラスタメモリ(SCM)といった技術が具現化してきたことで、今後は、OSそのものがボトルネックになる」と指摘。
「新たなボトルネックの解消に向けて、ネットアップは、NetApp Memory Accelerated Dataを提供する。これは、Plexistoreの買収によるもので、PoCレベルでは、レイテンシで44倍、IOPSで67倍という大幅な性能の向上を確認できた」とした。
さらに、来年春以降を想定した新たなラインアップとして、「キャパシティ」領域では、監視システムやバックアップ、BCP/DRに対応し、自動階層化を行う大容量ワークロード向け製品を投入。
「プライス/パフォーマンス」領域では、SCMをキャッシュとして、オールフラッシュアレイをさらに性能向上させた製品の投入により、高速ワークロード向けに、費用対効果を向上。
「パフォーマンス」領域では、リアルタイムアナリティクスやAI、機械学習、深層学習などの用途に対応した超高速ワークロード向け製品をラインアップする。また、NetApp Memory Accelerated Dataも搭載されることになる。
また、「今後投入する第2世代のHCIは、第1世代の妥協点を改善したものになり、3Tier/コンバージドシステムと、第1世代HCIのいいところを取ったものになる。パフォーマンスや拡張の柔軟性、統合基盤でも安定した運用ができる」とした。
そのほか、クラウドベースの包括的なデータ管理スタックとして、「NetApp Cloud Central」を提供。パフォーマンス管理とコストの最適化を行う「Cloud Insight」、データやコンピューティング、要素、アプリケーション関連サービスの「Cloud Control」、同期やバックアップ、クローニング、Snapshot、レプリケーション階層化、高速化を実現する「Cloud Data Service」で構成する。
Cloud Volumes Serviceにおいては、NetAppの管理領域が大幅に増加していることを示し、「ボリューム設定をすれば、あとはNetAppが行う環境ができている。ユーザー管理領域を大幅に減少させている」などとした。
一方で、ネットアップは、NVIDIAとの協業を発表。NVIDIA DGXスーパーコンピュータと、Net App AFF A800クラウド対応オールフラッシュストレージを基盤とする実証済みアーキテクチャ「NetApp ONTAP AI」により、ディープラーニング環境向けのエッジ、コア、クラウドに渡るシームレスなデータパイプラインの構築、高速化、拡張性を向上させ、AIを活用した新たなビジネスモデルの実現を目指す顧客をサポートできるとした。
同社によると、設計の複雑さを解消し、推測に頼ることなく、AIを早期に導入できるほか、1対1の構成から利用し、データの増大にあわせて1対5の構成への変更や、それ以上にもスケールアウトできる拡張性を実現。冗長性を備えたストレージ、ネットワーク、サーバー接続により構成し、可用性の高い設計が可能になるという。
また、日本においては、デジタルトランスフォーメーション時代のエンジニア向けコミュニティである「NDX(NetApp Digital Transformation)Lab」を設置。既存アプリケーションのコンテナ化やCI/CDパイプラインの構築などにより、デプロイが継続的に行えるようにフローを作成し、高速化を支援。さらに、本番運用を考慮した構成の検討や、可用性の向上や監視を実施、アプリケーションの分割導入など、運用やマイクロサービス化も支援する。
さらに、デジタルトランスフォーメーション時代の新たなコンサルティングサービスとして「ストラテジック・コンサル・サービス」を提供。2018年11月からは「クラウドサービスデザイン」、2019年2月からは「GDPR ITワークショップ」をそれぞれ提供。「データのコントロール、経済性と法務コンプライアンスの両立、実現性のあるITトランスフォーメーションなどを支援するワークショップを提供する」とした。