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中堅企業で「ひとり情シス」が急増、シャドーIT容認へ? Dell EMCのIT投資動向調査
2019年2月20日 06:00
デル株式会社(Dell EMC)は19日、同社が毎年実施している「IT投資動向調査」に関する記者説明会を開催した。
同調査は、従業員100人以上1000人未満の中堅企業868社を対象に実施したもの。説明にあたったDell EMC 上席執行役員 広域営業統括本部長の清水博氏は、情報システム担当者が1人のみの「ひとり情シス」化が進んでいることや、シャドーITが実はデジタル化の推進につながっている状況について語った。
清水氏はまず、中堅企業の約38%が情報システム担当者1人以下の体制になっているとし、「前年の31%より7ポイントも増えた」と指摘する。中でも、ひとり情シスは前年の14%から今回18.8%に、IT専任の担当者がいない「ゼロ情シス」は17%から18.8%へと上昇しており、「ITの人材不足は深刻だ」としている。
少人数でIT管理を請け負う中、情シス担当者の退職が激増していることも清水氏は指摘する。離職率は21%で、「ベンチャー創業期並の離職率だ」と清水氏。
一方、外部人材の採用率も高く、37%となっている。これは離職率の約2倍近くにのぼり、人材の流動化が高まっていることを示している。清水氏はその背景として、業績が好調な企業が従業員を増やした結果、管理対象となるデバイス数が増えていることや、Windows 10への移行に必要なリソースとして人員増強が進んでいることを挙げた。
また、中堅企業では専任の情シス担当者が減る一方で、兼任の担当者が増加しているという。兼任者は56.6%にのぼり、従業員が100~199人の企業に至っては69.4%が兼任の状況だ。兼任者が増加する中、ITにかける時間は45%未満と減少傾向になっているという。
これは、ひとり情シスの55%が「システムの仮想化に取り組んでいない」というデータとも関連している可能性がある。清水氏は、仮想化していない現状踏襲タイプの企業は「ITリテラシーの高い企業と比較して業績が低迷している」と述べている。
一方、クラウド利用に関しては、IaaSの利用が大幅に進んでいるという。清水氏は、中堅企業のクラウド利用率が20.4%となったことから「キャズム普及期を超えた」としており、今後一気に普及が進む可能性を示唆した。なお、導入があまり進んでいない企業は昨年から7ポイント減少し、67.1%になっている。
人員減少などによる情シス担当者の劣悪な職務環境が懸念されるが、働き方改革は進められる傾向にあり、「約半数の中堅企業は働き方改革に着手している」と清水氏は話す。また31%は「今後取り組む予定」と回答しており、合計すると約8割の企業が働き方改革を推進中ということになる。
中でも長時間労働の是正は進んおり、「家族と過ごす時間が増えた」「休養が十分とれるようになった」という回答は約25%にのぼる。一方で、働き方改革実施企業の40.5%は「何も変わっていない」と答えており、清水氏は「働き方の質的改善はこれからだ」としている。
シャドーITがデジタル化を推進
IT部門が忙殺され事業部門への対応が追いつかないケースは、300人未満の企業で6割に達しているという。そのため、「事業部門ではシャドーITが急増している」と清水氏は指摘する。
シャドーITと聞くと、国内では悪の根源のように思われがちだが、清水氏は「米国では、実態が見えにくいものの高い破壊力を持ち、迅速なIT化にもつながるため、事業部門にとっては頼りになる存在と捉えられることもある」と説明。国内でも「中堅企業では人材不足に悩まされていることもあり、容認せざるをえない面もある」としている。
加えて清水氏は、シャドーITが初期のクラウドニーズの検証やテスト運用など、社内のデジタル化を推進している実態もあると明かした。
こうした状況をふまえ、Dell EMCでは「シャドーITへの支援を強化する」(Dell EMC 広域営業統括本部 デジタルセールス&広域営業本部長 木村佳博氏)という。
その具体策として木村氏は、ビジネス環境に即したクラウド環境を提案するほか、シャドーITを適切に運用するための評価基準を明確にし、現状を可視化するチェックリストを展開することを挙げる。また、セキュリティ投資額に沿ったソリューションマップやクラウド型デジタルワークスペースの提供、さらにはアプリの内製化を支援するソリューションテンプレートも用意する。
今回の調査によると、シャドーIT環境下におけるセキュリティ事故の件数は、情シス部門を通した環境と差はなかったという。ただし、清水氏は「潜在的なヒヤリハット事案は増え続けており、注意喚起が必要だ」としている。