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デル、ネオキャリアとエフアンドエムとの協業により人事・労務系サービスを提供

中堅企業向けクラウドサービスのラインアップを拡大

 デル株式会社は10日、中堅企業の「ひとり情シス」を支援するクラウドサービスの第2弾として、株式会社ネオキャリアと株式会社エフアンドエムの2社と協業し、人事・労務系クラウドサービスを提供開始すると発表した。

 同日に行われた会見では、中堅企業向けクラウドサービスの事業概況および、新たに人事・労務系クラウドサービスをラインアップに追加する背景について説明したほか、協業2社が提供するサービス概要を紹介した。

写真左から:エフアンドエム ITソリューション事業本部 本部長の渡辺尚人氏、デル 広域営業統括本部 執行役員 統括本部長の清水博氏、ネオキャリア 専務取締役の加藤賢氏

 デルは2017年6月30日、中堅企業向けクラウドサービスの第1弾として、エックスサーバー株式会社、カゴヤ・ジャパン株式会社、株式会社ラクスの3社との協業を発表。これまでに、エックスサーバーから「ホームページ運用」「ナレッジ共有」、カゴヤ・ジャパンから「バックアップ」「電子メール」「グループウェア」、ラクスからは「ワークフロー」「グループウェア」と、大きく7つの業務領域において中堅企業の「ひとり情シス」をサポートするクラウドサービスを提供してきた。

 デル 広域営業統括本部 執行役員 統括本部長の清水博氏は、中堅企業向けクラウドサービスの現況について、「『ホームページ運用』は、クラウド利用のニーズの高まりを受け堅調に推移。『ナレッジ共有』についても、社内向けヘルプデスクポータルなどでの活用が進んでいる。『バックアップ』は、ランサムウェア感染に代表されるセキュリティ事故の対策として導入が拡大。『電子メール』は、セキュリティ強化を目的に個人向けから法人向けサービスへと移行しつつある。『グループウェア』は、働き方改革の進ちょくで社外や在宅での業務時間が増加していることから、チームの生産性向上を求めて導入が進んでいる」と説明。

 また、残る「ワークフロー」についても、「IT投資の意思決定に経営者がかかわる割合が増えるのにともない、業務効率化を目的に検討が進んでいる。『経費精算』は、従来の紙・Excelでの処理を電子化し、業務プロセスの効率化を図るべく利用ニーズが高まっている」と説明する。

デル 広域営業統括本部 執行役員 統括本部長の清水博氏

 こうした状況の中で、同社が実施した「2018年中堅企業IT投資動向調査」および「IT投資動向追跡調査」によると、中堅企業の80%以上が働き方改革に取り組んでおり、その多くが労働時間の管理から着手していることがわかったという。

 さらに、兼任型ひとり情シスの24%が労務・人事・総務・経理の管理部門であることや、中堅企業の43%で働き方改革を経営層がトップダウンでリードしていること、アプリケーションクラウドの利用が62.9%となり普及期に入ったこと、働き方改革で社外・在宅など多様な働き方が増える一方で残業・休日出勤も増加傾向にあることなどが明らかとなった。

 この結果を踏まえて、清水氏は、「『ひとり情シス』の業務は増え続けており、特に管理系業務が集中しやすい企業では労務管理の可視化が急務といえる。また、リモートワークの急速な広がりとともに、労働時間が増加する傾向にあり、確実なモニタリングとコントロールが求められている。そして、SaaSを活用する企業が大幅に増加する中で、データバックアップに次いで人事・労務領域でのSaaS活用が伸長していることから、今回、人事・労務系のクラウドサービスをラインアップに追加することにした」と、中堅企業向けクラウドサービスを人事・労務領域に拡大する背景を述べた。

 人事・労務系クラウドサービスの提供にあたっては、ネオキャリアとエフアンドエムの2社と協業。中堅企業向けクラウドサービスの新たなラインアップとして、ネオキャリアの人事向けプラットフォームサービス「jinjer」と、エフアンドエムのクラウド型労務手続きシステム「オフィスステーションシリーズ」を追加する。

ネオキャリアが提供する人事・労務系クラウドサービス
エフアンドエムが提供する人事・労務系クラウドサービス

 デル 広域営業統括本部 デジタルセールス&広域営業本部長の木村佳博氏は、この2社と協業する狙いについて、「ネオキャリアとエフアンドエムは、コストセンシティブな中堅中小企業分野で高い納入実績があり、人事・労務分野をリードする製品を長期間にわたり提供している。また、両社の顧客と当社の顧客が同一領域であるため、レバレッジが図れる可能性があると考えた。さらに、両社ともデル製品を運用しており、デル製品の経験、運用の親和性について安心感があることも決め手になった」とする。

 さらに、「従来の中堅企業向けクラウドサービスのラインアップに、2社の人事・労務系サービスが加わることで、『ひとり情シス』のクラウドニーズの約8割をカバーすることになる」と、今回の狙いをアピールしている。

デル 広域営業統括本部 デジタルセールス&広域営業本部長の木村佳博氏

 今回、人事・労務系クラウドサービスで協業するネオキャリアは、2000年に創業し、テクノロジーによって人事領域にイノベーションを起こす「HR Tech」に力を注いでいる。

 ネオキャリア 専務取締役の加藤賢氏は、同社が提供する人事向けプラットフォームサービス「jinjer」について、「『jinjer』は、1つのプラットフォーム上に人事業務のすべてを集約し、“オペレーション人事”から“戦略人事”への変革を促進するソリューション。販売開始から2年で、中小企業を中心にすでに約5000社の導入実績がある。具体的な導入メリットとしては、勤怠・労務・人材管理などの人事領域データの一元管理でオペレーション改善を実現。また、人事データの可視化・数値化によって、経営者はいつでも会社の状況を把握することができる。さらに、AIを活用したエンゲージメント、モチベーションの可視化により離職を未然に防止するほか、人事業務の効率化により生産性の向上やコスト削減にもつなげることができる」と紹介した。

ネオキャリア 専務取締役の加藤賢氏
「jinjer」のサービス概要

 一方、エフアンドエムは、1990年に設立し、中堅・中小企業に特化したバックオフィス専門のコンサルティング事業を展開している。

 同社が提供するクラウド型労務手続きシステム「オフィスステーションシリーズ」の概要について、エフアンドエム ITソリューション事業本部 本部長の渡辺尚人氏は、「『オフィスステーションシリーズ』は、マイナンバーステーション、労務ステーション、年末調整ステーションの3つのシステムで構成され、対応帳票数は97帳票、電子申請対応は59帳票と、圧倒的な帳票数をカバーしている。現在の導入企業数は約2500社で、うち社労士事務所が約800社を占めている。このシステムを導入することで、煩雑な労務手続き業務をまるでインターネットショッピングをするかのように簡易化することができ、今まで半日かかっていた業務をわずか3分に短縮できる。また、賃金情報や勤怠情報の連携も汎用的に対応可能となっている」とした。

エフアンドエム ITソリューション事業本部 本部長の渡辺尚人氏
「オフィスステーションシリーズ」のサービス概要

 なお、デルでは、中堅企業向けクラウドサービスのラインアップ強化に合わせて、顧客に最適なクラウド提案を行うスペシャリストを育成する社内資格制度「ITコンシェルジュ」についても内容を拡充したこと発表した。

「ITコンシェルジュ」のグレード(2018年度版)

 従来は、インサイドセールス、ITインフラコンシェルジュ、クラウドコンシェルジュの3つのグレードだったが、新たにインサイドセールスの上位資格として、IT投資動向調査を熟知し、「ひとり情シス」の実情を把握した上での提案活動ができる「ひとり情シス・スペシャリスト」を設置。

 さらに、ITインフラコンシェルジュの上位資格として、PCの導入から廃棄まですべてのプロセスをマネジメントできる「PCマイスター」を新設した。デルの木村氏は、「これにより、5つのグレードで、段階的な成長により中堅企業に最適なクラウドを提案していくことが可能になった」としている。