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NEC、共創空間「NEC Future Creation Hub」を開設 体感と対話で新たなイノベーション創出を目指す

 日本電気株式会社(NEC)は4日、東京・三田の同社本社ビル1階に共創空間「NEC Future Creation Hub」を開設すると発表した。2月8日にオープンするのに先駆け、報道関係者にその内容を公開している。

 これまで、ショールーム機能や社内外のミーティング、サーバーの検証などを行う機能を持たせていたエリアを一新。「体感と対話で新たなイノベーションを生む共創空間」と位置づけている。

 NECの榎本亮執行役員兼CMOは、「NEC Future Creation Hubは、意見を出し合い、本気で深い議論をする場を目指す。お客さまとNECがともに未来を描く場所であり、テクノロジーとビジネスの融合を体感し、それらがお客さまの課題とその先にある社会課題の解決にどう貢献できるかの対話を重ね、新たなイノベーションを生み出す共創の場にしたいと考えている。この施設から発信するメッセージの主語は、すべて『We』としており、ともに共創することを目指す。ここから社会に価値を生み出し、変えていくことになる」などとしている。

NEC 執行役員兼CMOの榎本亮氏

 NECでは1981年、東京・日比谷と大阪にC&Cプラザを開設したほか、1990年には本社ビルであるスーパータワーを竣工。2004年にはNEC Broadband Solution Centerを、2009年にはNEC Innovation Worldをそれぞれ開設し、先端技術やソリューションのショーケースとして展開していた経緯がある。

 それらと比べた違いとしては、「お客さま自身が、自らの会社をどう変えていくのかという課題を持っており、さらに、ビジョンを一緒に考えてくれないかという要望が多い。商品を見せるショールーム機能では、いまの流れには合わない。こうした動きをとらえて、NECからコミュニケーションの仕方を変えていくための施設になる」(NEC Future Creation Hubのセンター長を務めるNEC IMC本部の野口圭氏)としている。

NEC IMC本部の野口圭氏

 また榎本CMOは、「本社ビルに設置したことで、必要な関係者が一堂に会しやすく、あらゆる拠点を結んだ議論ができ、そして、オープンイノベーションの拠点としても活用できる。さらに社員にも公開し、NECの価値観やソリューションに触れてもらう場にする。なにかを感じて、議論して、なにかを生み出していく場にしたい」とした。

NEC Future Creation Hubの位置付け

ショールームではなく“共創の場”として位置付け

 約1800平方メートルを持つNEC Future Creation Hubは、本社受付の両サイドに展開される。

東京・三田のNEC本社ビル
NEC Future Creation Hubは本社受付の両サイドに展開する

 NECの野口センター長は、「NEC Future Creation Hubは、ショールームではなく共創の場である。入ったところにはNECの製品やソリューションを置かず、全体は自然やリゾートを意識し、議論に集中できるようにした。また展示するものを絞り込み、空白を重視している。さらに、ストーリー性を持たせた展示としており、考える余地があるように設計したのが特徴である。われわれが変わるという覚悟を込めたものであり、社会課題の解決と企業の変革に向けて、NECとしてなにが提案したいのかということを明確に示す場にしたい」とした。

 なお、バリュークリエーター、ビジネスデザイナー、SME(Subject Matter Expert)、データサイエンティスト、エバンジェリストなど、約1600人で構成されるデジタルトランスフォーメーションを実現する専門家集団「デジタルオールスターズ」がNEC共創プログラムを推進する。

 「このプログラムにのっとって、さまざまな社会ソリューション事例を作っていくことになる。すでに、諫早市では土砂災害予兆検知システム、高松市とはFIWAREを活用したスマートシティ向けデータ利活用基板サービス、大林組とは5Gや4K 3Dモニターを活用した建設機械による遠隔操作などの共創事例があるが、その多くが現地での共創が多い。NEC Future Creation Hubの場を活用しながら、現場との連携によって共創を進めることになる」(榎本CMO)とした。

 ちなみに、NECでは「共創」を商標登録しているが、「共創という言葉を独占するものではなく、幅広く活用してもらう」(同)ためと説明している。

 NEC Future Creation Hubにおいては、数十億円を投資。利用方法は完全予約制となっており、企業のCIOやCMOなどを中心に、年間8000人の来場を見込んでいる。そのうち15%程度がCxOになると予想。1日最大で7組を想定する。

 「見せるということだけを主眼にすれば、来場者数を増やすことはできるだろう。だが、これまでのNEC Innovation Worldでの経験を含めて、深い議論をすることを優先する。多くの人を呼ぶという姿勢ではいはないと考えている。また、学生の来場も見込んでいる。NECの姿を見てもらうことで、NECに対する関心を高めるきっかけづくりにしたい」(榎本CMO)と語った。

 小売業や製造業など、それぞれの業種にあわせたメニューを用意し、それぞれの顧客に最適化した見学や議論を行える仕組みを用意しているという。

写真で見る「NEC Future Creation Hub」

 ここでは写真を中心に、NEC Future Creation Hubの様子を紹介しよう。

Welcome Zoneと会議室・通路

 来場者を明るく迎えるために「視線で花咲くアート」などを展示した「Welcome Zone」、顔認証による会議室の入退場を体験できる「会議室・通路」を設置する。

NEC Future Creation Hubの入り口。「はやぶさ」で使用されている素材を利用している
NEC Future Creation Hubの「Welcome Zone」
「視線で花咲くアート」は視線をとらえて、見ている部分の花を咲かせる技術
会議室の入り口では顔認証による会議室の入退場を体験できる
顔認証の結果、該当する会議室にはライトをつけてガイドする
会議室の様子。テレビ会議に最適化した機器を導入している
本社ビルの周りには緑を配置しているが、会議室にも緑を配置して連動性を演出
通路は社員が行き交うエリアで結ぶ。来場者が通過するときには映像を表示。これは社員に対して来場者がこの通路を通っていることを示す役割も果たす

Innovation Gallery

 時代背景とともにNECのDNAを紹介するのが、「Innovation Gallery」だ。

時代背景とともにNECのDNAを紹介する「Innovation Gallery」
創業者である岩垂邦彦氏がエジソン氏とともに働いていたことを紹介
NECの名器である8ビットパソコン「PC-8001」も展示している
地球6周分の導入実績を持つ海底ケーブル

Future Society Zone

 「Future Society Zone」では、近未来の安全・安心・効率・公平な都市や新しい企業活動を、都市経営や企業経営などの視点から俯瞰するソリューションを紹介し、NECが描く近未来の世界を体験できる。

 同コーナーでは、これまでのNECの取り組みや、2050年を見据えたビジョンを紹介。課題の共有、変革の必要性の共有に向けた体験型動画を上映する「Theater」のほか、「Social Innovation」「Social Transformation」「Social Foundation」などを用意する。

NECが描く近未来の世界を体験できる「Future Society Zone」
空港での利用を想定した顔認証による入国審査システムも展示
6台のプロジェクターを利用して、270°の画面表示を可能にした「Social Innovation」。医療ソリューションなどを紹介する
顔認証ゲートを通過して次のエリアへ移動する
流通業向けソリューションの展示コーナー。無人店舗をデモンストレーション
顔認証によって製品を購入することができる
画像認識技術を活用して、キャッシュレスで購入できる
あとはそのままゲートを通過すればいい
棚に向けた画像認識によって、視線がどこに集中しているかがわかる
倉庫においてロボットを活用して荷物を積み込むデモンストレーション
製造現場におけるソリューション展示
NEC独自の物体指紋を活用してひとつひとつの製造物を管理できる
壁面と床面のディスプレイを利用して、顔認識ソリューションなど8つのソリューションを紹介する

Technology Touch Zone

 「Technology Touch Zone」では、先進テクノロジーを体感可能だ。

「Technology Touch Zone」では、ニオイデータ分析、音状況認識、マルチモーダル型の認証技術を紹介
ニオイデータ分析に利用する小型センサー
認証技術では耳の形から認証する技術も公開している

Collaboration Zone

 来るべき未来に向けた取り組みを確認できる「Collaboration Zone」。

「Collaboration Zone」はアイデアを出し、具体的な共創を行う場としている