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ドイツのメルケル首相がNEC本社を訪問、AI技術を中心に最新テクノロジーを見学
2019年2月6日 00:00
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は5日、東京・三田の日本電気株式会社(以下、NEC)本社を訪れ、2月8日にオープン予定の「NEC Future Creation Hub」などを見学。NECの遠藤信博会長や、熊谷昭彦執行役員副社長、江村克己取締役執行役員常務兼CTOが、NECの取り組みや最新技術などについて説明した。
今回の訪問は、物理学の博士号を持つメルケル首相が、AI技術やAIの社会への広がりに高い関心を持っていること、ドイツと日本がAIの分野で協力を進めていること、そしてNECが、日本のIT企業として独自のAIの開発および実用化に力を入れており、ユニークな技術やソリューションを持っていることから実現したもの。来訪時はAI技術を中心に説明を受けたほか、プライバシー保護や法規制のバランスについてNECの社員と意見交換をする場も設けた。
約30分にわたってNEC本社を訪問
2月5日午後4時15分から約30分間にわたってNEC本社を訪れたメルケル首相は、NECの遠藤会長と江村CTOに迎えられて、本社1階のNEC Future Creation Hubを見学。最新テクノロジーに対して、熱心に質問する姿が見られた。
メルケル首相が見学したNEC Future Creation Hubは、「体感と対話で新たなイノベーションを生む共創空間」に位置づけられた施設。近未来の安全・安心・効率・公平な都市や新しい企業活動を、都市経営や企業経営などの視点から俯瞰するソリューションを紹介し、NECが描く近未来の世界を体験できる「Future Society Zone」や、時代背景とともにNECのDNAを紹介する「Innovation Gallery」、先進テクノロジーを体感できる「Technology Touch Zone」などで構成されている。
メルケル首相は、NEC Future Creation Hubに展示している数々の技術を見学。NEC独自の生体認証技術とAIによって、耳穴の形状の個人差を音で測定する耳音響認証技術や、超小型の高感度センサーと機械学習技術「異種混合学習」を組み合わせて高精度なニオイ判別を実現するニオイデータ分析技術などについて、説明を受けた。
特に「ニオイデータ分析技術」には強い関心を寄せ、この技術の新規性について質問。1台の小型センサーを使って多種多様なニオイを感知できることや、NECのAI 技術によってそれぞれのニオイを識別できることなど、同社の技術的優位性に関する説明にうなずいていた。
またNECは、多数のセンサーから大量の時系列データを収集・分析し、平常時とは異なる状況を感知して、いつもと違う動きを検出する「インバリアント分析」技術で実績を持っており、メルケル首相は、この技術に関する説明にも熱心に耳を傾けていた。
このほか、人工衛星に搭載したレーダーによる、都市インフラモニタリングのデモや、各種センシングデータを活用した防災・災害対策ソリューションを見学。スマートシティソリューションでは、政府や自治体との連携について関心を示したほか、実用化の時期や標準化動向などといった具体的な質問をしていたのが印象的だった。
そのほかにも、NECのAI技術がFintech分野にも活用されている点にも関心を示し、スピードが速いといった技術的優位性だけでなく、プライバシーや法規制などへの対応にも取り組んでいるNECの姿勢にも関心を寄せていた。
さらに、技術イノベーションと法規制やプライバシー保護、人権・倫理観などのバランスについてNEC社員と意見交換を行うとともに、社会課題の解決に向けたICTの利活用についても意見交換を行った。
2月4日に3年ぶりに日本を訪問し、安倍晋三首相との会談をはじめ、精力的な活動を行っているメルケル首相にとって、NECの本社訪問は自らが関心を持つ最新テクノロジーに触れることができた、絶好の機会になったようだ。