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日立の2018年度第1四半期連結業績は増収増益、情報・通信や社会・産業が好調
2018年7月27日 17:54
株式会社日立製作所(以下、日立)は27日、2018年度第1四半期(2018年4月~6月)の連結業績を発表した。
それによると、売上収益は前年同期比3.7%増の2兆1658億円、調整後営業利益は12.4%増の1481億円、税引前利益は同27.5%増の1804億円、当期純利益は同40.2%増の1052億円。
日立 代表執行役 執行役専務兼CFOの西山光秋氏は、「オートモーティブ、日立金属、日立化成などのプロダクツ系は、材料高騰などの影響があり、前年実績を下回った。だが、社会イノベーション事業の中核となる情報・通信システムおよび社会・産業システムセグメントが増益になった。ここでは、構造改革の効果が出ており、プロジェクトマネジメントを徹底した成果もあがっている。いい形になっており、このペースを保って第2四半期以降も収益の改善を進める」と説明した。
また、「日立国際電気の再編影響として、売上高で200億円、営業利益で20億円のマイナス影響があるが、収益性の改善効果もあって営業利益率は6.8%となり、前年同期に比べ0.5ポイント改善した。情報・通信、社会・産業、建設機械のセグメントが利益に貢献している。営業利益、EBIT、当期純利益は、第1四半期としては過去最高になった」と総括している。
Lumada事業の売上収益は前年同期比9%増の2230億円となり、年間見通しの1兆700億円に対する進ちょく率は20.8%となった。Lumadaコア事業の売上収益は同47%増の560億円(通期見通しは3100億円)。Lumada SI事業の売上収益は同1%増の1670億円(同7600億円)。
「Lumadaは情報通信、社会産業セグメントでの活用が増えている。金融、公共、社会、産業において、ビッグデータの分析、AIの活用、Fintechへの導入、製造業の生産性や品質向上、設備の予兆診断などのソリューションコアが増加している。Lumadaは、まだスケールが小さく、インキュベーションのための開発投資も多いが、着実に伸びており、一般的なSIよりも高い利益率となっている点が特徴である。Lumadaコアは横展開していくことが前提であり、営業利益率は10%を超えるレベルにある」などとした。
また、産業分野におけるソリューションコア適用案件が拡大していることを示しながら、2016年に日立の大みか事業所で開発し、2017年からLumadaのソリューションコアとして提供を開始した「高効率生産モデル」を活用して、板金加工機械メーカーのアマダとバリューチェーン全体の最適化に向けた協創を開始している、スマートファクトリーの事例を紹介。
さらに、AIを活用して産業機械の修理作業を自動提案するシステムを開発し、これを空気圧縮機事業を行うSullair(サルエアー)で実証実験を行い、ソリューションコアの「メンテナンス&リペアサービス」として外販を目指す取り組みを開始することを紹介した。
このほか、KDDIのグローバル通信プラットフォームとLumadaの連携によって、遠隔モニタリングをはじめとした、新たな付加価値創出に向けたIoT通信基盤の強化に取り組んでおり、日立産機システムの産業用インクジェットプリンタにおいて、この試験導入を開始したことも紹介した。「今後、社会産業インフラ設備の遠隔モニタリングなど、幅広い付加価値をつけた形で展開していく」としている。
一方で、米国子会社の米Hitachi Vantara(日立ヴァンタラ)が、2018年6月に米REAN Cloud(リーンクラウド)と買収契約を締結。2018年中に買収を完了する予定であること、英Hitachi Solutions Europe Ltdが、独Implexis GmbH(インプレクシス)の買収契約を同じく6月に締結し、7月2日に買収を完了したことにも触れた。
「売上規模は、リーンクラウドは約50億円、インプレクシスは約30億円と規模は小さいが、日立のクラウドサービスやソリューションビジネスの重要な部分を補完するものであり、重要な意味を持つ。Lumada事業の成長にも大きく貢献することを期待している。リーンクラウドは、パブリッククラウドサービスとマイグレーションサービスを提供するクラウドサービスプロバイダーで、AWSやAzureの認定技術者を擁し、ビッグデータやIoT、機械学習を活用したソリューションを提供している。これを統合することで、これまでのプライベートクラウドに加えて、パブリッククラウドやハイブリッドクラウドを含めた幅広いクラウドサービスを提供できるようになる。インプレクシスは、マイクロソフトのDynamics事業を強化するものになり、グローバルのフロント力強化、デリバリー力強化につながる」とした。
国内売上収益は前年同期比1%増の9814億円、海外売上収益は6%増の1兆1844億円。海外売上比率は55%。「海外はいずれの地域も伸びている。中国では建設機械やビル、サルエアーの買収効果がある。北米でもサルエアーの効果のほか、鉄道が伸長している。欧州は鉄道、建設機械が伸長している」とした。
事業部門別の業績
事業部門別では、情報・通信システムの売上収益は、前年同期比1%増の4405億円、調整後営業利益は前年同期から74億円増の345億円、EBITは同27億円増の286億円となった。
「通信ネットワーク機器子会社であるアラクサラネットワークスの(投資ファンドへの)譲渡によるマイナス効果はあるが、国内システムインテグレーション(SI)の増加や収益改善、ITプラットフォーム&プロダクツの収益性の改善効果、日立ヴァンタラの効果や、ストレージ事業の構造改革効果がある。国内SIでは、公共、社会が好調であり、収益性をあげることにつながっている。需要は旺盛であり、その上で、プロジェクト管理をしっかりとやることが大切であると考えている」としたほか、「情報・通信システムの第1四半期の進ちょく率は例年よりもいい。営業利益でみると進ちょく率は18%となっており、前年度の14%よりもかなり進んでいる。第4四半期偏重から平準化するための取り組みを進めており、案件の前倒しもあるが、それを勘案しても進ちょく率はいい」とした。
システムインテグレーションを中心としたフロントビジネスの売上収益は、前年同期比4%増の3130億円、調整後営業利益は前年同期から37億円増の208億円。ITプラットフォーム&プロダクツの売上収益は前年同期比4%減の1637億円、調整後営業利益は前年同期から21億円増の128億円となった。
一方、社会・産業システムの売上収益は前年同期比8%増の5183億円、調整後営業利益が前年同期から75億円増の209億円。
また、電子装置・システムの売上高は前年同期比2%減の2399億円、調整後営業利益は前年同期から2億円減の191億円。建設機械の売上高は前年同期比14%増の2402億円、調整後営業利益は前年同期から107億円増の273億円。
高機能材料は売上高が前年同期比9%増の4279億円、調整後営業利益は前年同期から36億円減の276億円。オートモティブシステムの売上高は前年同期比2%減の2385億円、調整後営業利益は前年同期から51億円減の53億円。
生活・エコシステムの売上高は前年同期比13%減の1143億円、調整後営業利益は前年同期から5億円増の26億円。その他部門の売上高は前年同期比6%減の1244億円、調整後営業利益は前年同期から8億円増の49億円となった。