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DMG森精機、制御システム向けIoTソリューションでMicrosoft Azureなどを活用
マイクロソフト、IoTイベント「IoT in Action Tokyo」を開催
2019年1月22日 14:08
日本マイクロソフト株式会社は22日、東京・有明の東京コンファレンスセンター有明において、「IoT in Action Tokyo」を開催。そのなかで、DMG森精機株式会社とのIoT分野における協業について発表した。
DMG森精機が提供サービスの基盤としてMicrosoft Azureを採用へ
DMG森精機は工作機械のグローバルカンパニーで、ドイツのDMGと日本の森精機が2009年に合併して誕生した。2018年度の売上高見通しは約4800億円、社員数は1万3000人を誇り、年間1万台以上の工作機械を出荷。大手企業から家族経営のような零細企業まで、全世界15万社の顧客を持つという。
今回の協業では、DMG森精機のソフトウェアソリューション「CELOS Club」において、Microsoft Azureなどを通じて提供するIoTソリューションを活用。今後、エッジデバイスをインテリジェント化するWindows 10 IoTやAzure IoTなどの活用も視野に入れているとした。
また現在、DMG森精機の社内サーバーで運用している遠隔モニタリングサービス「DMG MORI MESSENGER」を、Microsoft Azureへと移行する。あわせて、マイクロソフトのセキュリティ対策ソリューションであるApplication Gateway、Azure Security Center、Network Security Groupなども採用し、安全・安心な環境に配慮したソリューションを提供する予定とのこと。
9時30分から行われた基調講演に登壇した、日本マイクロソフトの平野拓也社長は、「DMG森精機が提供する各制御システムのデータをMicrosoft Azure上に収集し、AIを活用して分析することで、適切なタイミングでプロアクティブな予防保全が可能になり、工場内におけるダウンタイムの削減や工程の効率化、機材のメンテナンス性向上、不良率の削減などにつなげることができると期待している」と、協業の狙いについて語った。
同じく基調講演に登壇した、DMG森精機の川島昭彦専務執行役員は、「マイクロソフトがほかの産業などで培ったノウハウなどをレシピとして提供してもらったり、エンジニアに対するアドバイスを行ってもらったりすることで、IoTソリューションとして進化させていく。これは現在、コンサルティングサービスとして提供されているものではなく、ここに協業という意味がある」との狙いを説明。
さらに、「デジタル化が進展することですべての工程がつながることになり、IoTの重要度が増してくる。CELOSはインテリジェントな制御盤であり、CELOS上で稼働するアプリケーションを通じて、工作機械を効率化したり、機能強化したりといったことが可能になる。さらにCELOSでは、外からの情報を取り込むオープンイノベーションへの対応や、センサー情報や加工履歴を取り入れることで、工作機械をインテリジェント化するといったことも可能だ。また、生産情報などを外部の会社と共用したり、工作機械を遠隔地からコントロールしたりすることも可能になる。こうしたところに、Azureで提供するAIなどを活用していくことになる」と、連携によるメリットを紹介した。
【お詫びと訂正】
- 初出時、DMG森精機 専務執行役員の川島昭彦氏と、日本マイクロソフト 業務執行役員 IoTデバイス本部長の菖蒲谷雄氏の写真が逆になっておりました。お詫びして訂正いたします。
一方のDMG MORI MESSENGERについては、「10年以上前から取り組んでいるサービス。工作機械の稼働状況を集約し、工場単位や会社単位で見える化することで、効率的な稼働を実現することができる。現在、2400社、4600台の工作機械が常時接続されている」と説明。
「これまでDMG MORI MESSENGERのサーバーは自社で運用していたが、今後、データが膨大に増加すること、パッチを当てるなどの運用にかかわる人件費、セキュリティ対策などを考えると、維持するためのコスト増が見込まれる。そこで、米国シアトルのMicrosoft本社に出向き、検討を行った結果、Microsoft Azureへ移行することが最適だと判断した。すでに具体的な作業を開始しており、2019年前半に移行を完了させる」とした。
なお今後に向けては、「サーボなどの電気系、オイルなどの温度系、振動や機械の傾きなどの機械系といった各種センサーから上がってきた情報をクラウドに蓄積し、これを分析することで、加工効率をあげたり、故障通知や予防保全につなげたりしていく取り組みをはじめている」との取り組みを説明。
その例として、クーラントタンク、油圧ユニット、オイルクーラーなどから各種温度系データを収集。蓄積したデータをもとに、AIによって使用状況に応じた寿命や交換時期を知らせることができるとした。
「データを蓄積すればするほど異常検知の精度を高め、早いタイミングで正確に状況を知ることができる。温度系のデータ分析をもとに、あふれ防止やフィルター交換検知、トレーサビリティへの利用などができるほか、ダウンタイムが短くなるといったメリットも生まれ、生産性が向上する。温度系だけでなく、機械系、電気系でも同様の効果が期待できる」との狙いを示した。
さらに、Microsoft Azureを採用した理由についても言及。「当社は、ドイツや日本をはじめ、7カ国14拠点で、製造・開発拠点を展開しているため、日本の拠点だけに対応するのではなく、グローバル規模で、かつ産業領域ごとに対応してくれる体制が整っている点を評価した」と述べている。
IoTの最新動向を紹介するイベント「IoT in Action Tokyo」を開催
なおIoT in Action Tokyoは、企業や組織の意思決定者を対象に、IoTの最新動向を紹介したり、ビジネス変革に関する情報を提供したりすることを目的に、世界9都市で開催されているイベント。すでに米国ニューヨークや韓国ソウルでも開催したという。日本では昨年に続き、2回目の開催となる。
基調講演では、日本におけるIoTの活用事例についても説明された。石川県加賀市では、北菱電興の除雪車運行管理システム「スノプロアイ」にIoTソリューションを組み合わせることで、蓄積したデータや作業実績、気象データ、画像認識などを活用し、効率的な除雪車の稼働ができるようになるという。
「2018年には、30年に一度という記録的な降雪の影響もあり、年間2億円の除雪費用が2倍以上になったが、今後、こうした課題の解決も期待できる」(日本マイクロソフトの平野社長)という。
また、オフィス家具のSteelcaseが、Steelcase Workplace Advisor STUDYとして、センサーを活用した短期的なオフィス環境分析サービスを2019年3月から提供することも紹介した。
そのほか、豊田自動織機が、スマートファクトリーの実現やフォークリフトをIoT化した事例や、日本アンテナの無線技術とIoTを連携したソリューションを紹介。近畿大学水産研究所ではマダイの稚魚の養殖に、東京電力パワーグリッドでは送電線の外観検査に、ブリヂストンではタイヤの空気圧検査に、久野金属工業では工場の生産性を高めるために、それぞれIoTを活用しており、効率化や生産性向上などで成果が上がり始めているとアピールしている。
なおマイクロソフトでは、エッジ(デバイス)とクラウドを連携させ、日々生まれる膨大なデータを処理することで、革新を生み出す「インテリジェントエッジ/インテリジェントクラウド」を提唱。それにのっとり、IoT分野に対して4年間で50億ドル(約5500億円)を投資することを発表している。
これらの投資は、IoTに関する研究開発、製品開発、体制強化、パートナーとのエコシステムの拡充に活用し、顧客のデジタルトランスフォーメーション支援を推進していくという。
日本マイクロソフト 業務執行役員 IoTデバイス本部長の菖蒲谷雄氏は、「日本マイクロソフトは、業界で最も包括的でセキュアなIoTソリューションを提供している。インテリジェントエッジとインテリジェントクラウドを一貫した環境でつながることが、より良いIoTソリューションを実現する上で重要な要素であり、さらに、センサーやPC、ハイブリッドサーバーなどのさまざまなデバイスを包括的に扱うことができることも、マイクロソフトのIoTソリューションの強みになる」とした。
また、「IoTソリューションの実現にはパートナーエコシステムが重要であり、マイクロソフトが持つソリューションとパートナーが持つ業種ごとの知見とを連携し、顧客が利用するソリューションとして提供することで、顧客が価値を得られるまでの時間を短縮することが可能になる」などと語った。
IDG Japanの調べによると、IoTの市場規模は2022年には12兆5000億円となり、2017年の2倍規模に急拡大。ICT市場と同等規模にまで広がると見込まれている。現時点は、製造業などで活用されはじめているものの、国内全体でのIoTの利用率は約6%にとどまっており、IoTはまだ使われ始めてきた段階にあると分析している。