ニュース

エス・アンド・アイとFA、Watsonを活用したコンタクトセンター向け通話内容書き起こしサービス「AI Log」を提供

 エス・アンド・アイ株式会社(以下、S&I)と株式会社フィナンシャル・エージェンシー(以下、FA)は21日、IBM Watsonを活用したコンタクトセンター向けの通話内容書き起こしサービス「AI Log」を提供開始すると発表した。

 コンタクトセンターでは、応対品質の向上やトラブル防止を目的に通話内容を録音し、その録音データを業務改善に生かしており、保険代理店として39社の保険会社の商品を扱い、保険会社や保険代理店のコンタクトセンター運営を展開するFAでは、年間40万時間にもおよぶ通話内容を、約60名からなる専門部隊がチェックし、法令違反や不適切な表現となり得る「禁則ワード」、顧客に必ず案内すべき「必須ワード」など、確認すべき部分を聞き起こして品質管理を行っているという。

 しかし、録音データの聞き起こしから内容をチェックするには、実際の通話の約2倍にあたる時間を要すため、品質管理の観点からは非常に重要な業務である一方で、費やす時間とのコストバランスに苦慮していたという。

 また通話内容のチェックには、法令やガイドライン、取り扱う商品に対する豊富な知識など、担当者に高いスキルが要求されるので、モニタリング精度に個人の経験による差が生じてしまわぬよう、均一化のための教育に時間を要するなどの課題もあったとのこと。

 これに対して、今回提供されるAI Logでは、Watsonの音声認識機能であるSpeech to Textによって全通話内容が自動的にテキスト化され、「禁則ワード」の自動チェックとハイライト表示が可能になる。

 これによって、通話内容を聞きながら該当個所を探る「耳」によるチェックではなく、既にテキスト化された内容を「視覚的」に把握し、チェックすべき個所を効率的に確認できるようになる点がメリット。

 またチャット形式の採用で、オペレーターと顧客それぞれの発話が確認でき、必須ワードのタグ表示など、個人の経験やスキルによらない効率的なチェックが可能になるとした。

書き起こし画面イメージ

 FAでは、先行して利用を開始しているが、これまで全通話の約30%にとどまっていた聞き起こしを全件処理できるようになったほか、作業にかかる時間を年間約1万5000時間削減できるほどの効果が出ているという。

 なお同社実績では、オペレーター側の音声は90%以上の認識率を実現しているほか、相対的に音質の劣る顧客側の音声についても約75%と、高い精度を実現しているとのこと。

 FAは、さまざまな特徴を持つ顧客音声ログデータを約400万時間分保有しており、今回は音声認識率をいかに高くできるかに重点を置いて、この音声ログデータと自社のノウハウをもとに、S&Iの学習データの構築を専門で行う「CORPUS factory」が効率的に精度を向上させている。

 なおFAとS&Iは今後、保険業界に特化した学習データだけではなく、基本的な応対マナーや禁則ワード、方言や人名などの基本的な情報による、学習データの精度向上を継続的に取り組んでいく考え。これにより、あらゆる業種のコンタクトセンターで、AI Logの利用開始とともに、実用的なサービスとしてその効果を実感できるようになるとしている。