ニュース

KDDI、IoT向けに低コスト・低消費電力のLPWAサービスを提供

 KDDIは、新しいIoT通信「KDDI IoT コネクト LPWA」を2018年1月から提供する。

 LPWAは、Low Power Wide Areaの略称で、消費電力を抑えて遠距離通信を実現する、3GPPリリース13に基づくLTE標準規の通信方式。既存の4G LTEネットワークエリアで展開されるものの、消費電力が低く、電池での駆動が可能となり、KDDIでは月額40円からと低コストで提供する。

 「これまで15年間、IoTサービスを提供してきた経験から、管理は1カ所でまとめて行いたいといったユーザーの声に配慮し、デバイス管理サービスKDDI IoTコネクトデバイス管理も同時に提供を開始するなど、利用者に配慮したサービスとなっている点が特徴。同じ規格の通信サービスと差別化が図れる」(KDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 部長の原田圭悟氏)。

KDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 部長の原田圭悟氏

 すでに沖縄県那覇市、福島県で試験局を通じた実証実験を展開しており、サービス開始後は電力、水道などインフラ用スマートメーター、GPSとの連動による荷物追跡、災害管理などへの利用を見込んでいる。

 LPWAは、通信事業者が提供可能なセルラーLPWAと、アンライセンスドLPWAがある。セルラーLPWAにも、LTE-MとNB-IoTという2つの方式があり、今回KDDIが提供するのはLTE-Mになる。

 「FOTA(Firmware On-The-Air)の要/不要など、ユースケースに応じたさまざまな方式があるが、LTE-Mは消費電力を削減するeDRX、PSMという2つの技術に対応。エリアカバレッジについても、拡張技術によって、同じデータを複数回送信することで、弱電界でも受信できる確率が向上するため、見通しがよい場所では5Km以上のエリア拡大が実現する。世界での普及状況としては、北米では2社が提供し、トルコ、UAE、豪州でも提供されている。さらに年末年始で数事業者が提供予定で、われわれもその1社となる」(KDDI 技術企画本部 技術企画部グループリーダーの松ヶ谷篤史氏)。

セルラーLPWAの全体イメージ

これまでの課題をクリアする新サービス

 提供開始する「KDDI IoTコネクト LPWA」は、これまでIoT普及の障壁となっていた電源が必要、コストが高いといった課題をクリアすることが特徴となっている。

 LPWAの特性を生かし、単三電池2本で10年利用できる省電力を実現。非居住地、地下室の一部もエリアとなる。利用料金もデータ容量に応じて、月間10KBまでのプラン「LPWA10」、月間100KBまでの「LPWA100」、月間500KBまでの「LPWA500」の3プランを用意した。最も低価格な場合には、1回線あたり月額40円で利用できるという。

KDDI IoTコネクト LPWAの特徴
料金プラン

 通信モジュールも、1円玉大の小型LTE-Mモジュールを開発。「コンセントも必要ないため、小型機器に取り付けて利用することができる」(原田氏)と、設置場所を選ばない点が特徴となる。

KDDIが開発した小型モジュール
小型モジュールを掲げる原田氏

 さらに、回線(SIM)管理に必要となる、リアルタイムでSIMの有効/無効の制御を行えるSIM制御機能を提供。SIMの発注はオンラインで受け付け可能で、トラフィックデータ、課金データなど各種ログ情報もオンラインで提供する。オプションでは、インターネットVPN、SIMから発行した暗号鍵で不正アクセスを防止するSIMセキュリティも利用できる。

 「SIMの中にあるセキュアなエリアは、クレジットカードにも使われているようなもので、認証鍵の仕組みが入っている。便利だとは思うがセキュリティ的に不安がある、などの理由で利用をためらっていたお客さまも、安心して使っていただくことができる。これは当社独自機能で、特許を申請している」(原田氏)。

回線(SIM)管理に必要となるさまざまな機能を提供

さまざまな管理機能を提供

 さらに、IoTの本格利用が進むことで新たなニーズが生まれてくることも想定しており、「KDDI IoTコネクトデバイス管理」として、管理に必要な機能を提供する。

 具体的な機能は以下の通り。

1)NWアタッチ状態、セッション状態、圏外か否かの確認、電源オフなどを総合判定する回線状態管理
2)バッテリ残量や電波受信状態の見える化とアラーム通知などを行うデバイス状態管理
3)省電力モード設定変更などを顧客の業務に合わせてリモートでパラメータ変更することが可能なデバイス遠隔設定オプション
4)長期間安心して利用し続けることができるように、ユーザーの製品・モジュールのFWアップデートするファームウェア更新オプション

 原田氏は、「KDDIとしてIoTサービスは2001年から提供してきた歴史があり、その間に利用者の皆さんから上がった声をIoTコネクトデバイス管理の機能として提供する。通信コストをここまで下げると、人間の作業コストの方が高くなるので、その際にできるだけ低コストとなるよう、ソフトウェアのアップデート、バージョンアップといった作業を現場に行かず、リモートで作業できるようにしている」と述べた。

KDDI IoTコネクトデバイス管理

 また、LPWAに準拠した機能に加え、デバイス側で利用している電池の使用状況や、電池が減ってきた場合にはデバイス側からメールを送るといったKDDI独自機能を付加していることが特色となっている。

 「ファームウェアのアップデートや、ネットワークの混雑状況の確認機能は、世界でも高品質サービスを望む日本のユーザーから上がった声に基づいた機能」(原田氏)とした。

 この技術を使って日立システムズなどとマンホールの防犯・安全対策ソリューションを開発し、水質・水量の状態、有毒ガス発生の有無、開閉状態などを監視できる。その結果、老朽化、自然災害時の早期対応、内部状況の可視化による作業員の安全確保、テロ活動などの防止につながる。

 日油技研とは河川の水位監視ソリューションを開発。低価格・低消費電力のリアルタイムな水位監視センサーを利用し、河川の水圧によって、5cm単位で水位を検知する。このソリューションを利用することにより、河川のはんらんなどを早期に検知し、地域の安全を確保する。

 こうした通信サービスとそれを活用したソリューションによって、「KDDIとしては、データを活用したクラウドサービスをビジネスとしていくことを計画している。IoT導入でさまざまなデータがあがってくる。このデータをいろいろと組み合わせて分析することで新しい価値が生まれる。例えば、駐車場の利用予測には自分のところだけでなく周辺のデータを合わせて分析した方が精度が上がる。データを活用したいお客さまに、われわれが提案を行って、そのデータに起因してあがったレベニューをシェアし、データを提供してくれた側にも還元するビジネスを目指したい」(原田氏)と、通信だけにとどまらない、新たなビジネス立ち上げを計画しているとした。