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Microsoft Azure 東日本リージョンにおいて大規模仮想マシン「Gシリーズ」の提供を開始
SAP HANAワークロードのサポートを強化
2017年1月17日 12:43
日本マイクロソフト株式会社は16日、同社の提供するMicrosoft Azureの国内データセンターである東日本リージョンにおいて、最大32コアCPU、0.5TBメモリを搭載した仮想マシン「Gシリーズ」の提供を開始したことを発表した。このデータセンター拡張により、日本企業におけるミッションクリティカルな基幹業務のクラウド化の促進を目指すという。
今回提供を開始したGシリーズは、Intel Xeon E5 v3ファミリを採用し、高いコンピューティング性能を実現する。Gシリーズは、2コア CPUを搭載したG1インスタンスから、最大32コアを搭載しユーザーごとに分離された専用ハードウェア上に展開されるG5インスタンスまで5つのラインアップで提供される。
料金は、ほかのインスタンス同様に従量課金で、最小構成の2コアCPU、28GBメモリ、384GBディスクのG1インスタンスをWindowsで使用する場合には、月額4万9000円程度。
米Microsoft クラウド&エンタープライズグループ ゼネラルマネジャーのMark Souza氏は、「Microsoft Azureのリージョン数は36で、これはAWS(Amazon Web Services)の2倍。直近12カ月にリリースされたサービスや機能数は600を超え、今後6カ月でさらなる機能拡張を予定している」と述べた。
Souza氏は、今回東日本リージョンから提供を開始したG5にプレミアムストレージを付加したGS5インスタンスは、SAPからSAP S/4HANAをサポートする認定を受けていることを明らかにし、「20年以上にわたるSAPとの協業関係から、Microsoft AzureはSAP S/4HANAのワークロードに最適化された環境を提供できる」と述べた。
さらに「SAPについてはAWSよりも先行して開発している」と、競合であるAWSを意識する発言も飛び出した。
マイクロソフトは以前からMicrosoft AzureにおいてSAP ERP製品の稼働を正式サポートしているが、今回Gシリーズを東日本リージョンから提供することによって、インメモリでの高速処理を行うSAP S/4HANAであっても、日本国内のデータセンターからワークロードを利用できるようになる。なお今回、プレミアムストレージも東日本リージョンから提供可能となった。
GS5インスタンスにおいて、SAPから認定されているワークロードは以下のとおり。
・SAP S/4HANA の開発/テスト環境および Controlled Availability プログラムにおける本番運用環境
・OLTP NetWeaver ソリューション用 SAP HANA Enterprise Edition の開発/テスト環境
・OLAP 用 SAP HANA Enterprise Edition の本番運用環境および開発/テスト環境
ただし、SAP S/4 HANAを本番環境で使うには、Controlled Availabilityプログラムへの参加が必須となる。
また、東日本リージョンから提供されるインスタンスを超えるメモリを必要とする場合には、米国東部または米国西部リージョンで提供されている、SAP HANA用にチューニングされた専用ハードウェア環境「SAP HANA on Microsoft Azure」を利用する必要がある。
日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 業務執行役員 本部長 佐藤久氏は、「今後は企業の基幹システムのクラウド化が進む。セキュリティ、ハードウェアのコスト、災害対策など現在オンプレミスで稼働している企業の基幹業務システムの課題はクラウドで解決できることが多い」と述べ、Microsoft Azureは企業の基幹業務システムのクラウド化を強力にサポートすることをアピールした。
佐藤氏は、Microsoft Azureが日本のエンタープライズに最適なクラウドである理由として、データセンターリージョンの多さからカバーできる地域が多い点をはじめ、柔軟なスケーラビリティと従量課金制、クラウドセキュリティのゴールドマークを取得した高いセキュリティ、金融情報システムセンター安全対策基準への準拠、ハイブリッドクラウドへの対応、Availability Setを構成したすべての仮想マシンのSLAが99.95%、日本の国内法に準拠しており日本円での課金、SAP HANAに最適化された大規模インスタンスなどを挙げた。
現状、企業の基幹業務システムの多くは、まだオンプレミスで稼働している。いきなりすべてのシステムをクラウド化するケースは稀であり、オンプレミスの環境を今後も維持し続けたいと考える企業の方が大多数である。そのため、ハイブリッドクラウドの需要は今後もますます高まっていくことが予想される。
ハイブリッドクラウドについて佐藤氏は、「ハイブリッドクラウドは、単にオンプレミスからクラウドに接続できれば良いわけではない。マイクロソフトが考えるハイブリッドクラウドとは、オンプレミスと同じ環境、同じAPI、同じユーザーインターフェースが提供されること。単なるコネクティビティを提供するのではなく、コンシステンシーを提供することが重要」と述べた。
東日本リージョンにおけるGシリーズ提供開始に際し、国内のシステムインテグレータおよびコンサルティングパートナーの11社は、SAP S/4HANAを中心とした基幹業務システム向けのサービスを提供する。
マイクロソフトは、今後3年間で250社へのMicrosoft Azure上でのSAPアプリケーションの採用を目指し、セミナー開催などを通じて基幹業務システムのクラウド化への啓蒙活動を行っていくという。
また、Microsoft Azure上でSAPアプリケーションをはじめとする基幹システムの導入・構築・運用サービスを提供できるパートナーを拡充すべく、パートナー企業向けの各種ドキュメントの提供、トレーニング、支援プログラムの展開などを行う予定となっている。
GシリーズおよびSAP S/4HANAの早期導入を表明したアビームコンサルティングの 執行役員 プリシンバルである 中本雅也氏は、「急速に成長する当社の海外ビジネスを支えるため、グローバルマネジメントシステムを構築する必要があった」と述べ、さらにMicrosoft Azureを選択した理由として「SAP S/4HANAを構築する上での高いケイパビリティ」「ISO27018に準拠したセキュアなサービス」「当社ビジネスとの親和性」の3つを挙げている。
また、アビームコンサルティングはマイクロソフトのコンサルティングパートナーでもあることから、同社の知見を深めることも目的のひとつとなっているという。
グローバルではMicrosoft AzureのIaasS環境ラインアップは逐次拡充しており、小規模な本番および開発テストワークロードに最適なAv2、NoSQLなどに最適なL、GPUで加速されたワークロードを提供するN、CPU集約型ワークロードに最適化されたH、大規模なSAP HANAワークロード向けのSAP HANA on Microsoft Azureといったインスタンスが提供されている。また、ビッグデータやHadoop環境向けのSも提供が予定されている。
今後、これらのラインアップが日本国内でも提供されるのか、提供されるとして開始時期はいつ頃になるのかが気になるところだ。今後のラインアップ展開についてSouza氏は「顧客のニーズなどを調査した上で提供する地域や時期などを決めている」と述べるにとどまり、種類や展開時期などは明確にしていない。