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Microsoft Azureが国内データセンターを大幅拡張 大規模向け「Mシリーズ」やSAP HANA専用ベアメタルを提供へ

 日本マイクロソフト株式会社は1日、Microsoft Azureの日本データセンター(東日本リージョンおよび西日本リージョン)において、大規模基幹業務システムに対応可能な仮想マシン「Mシリーズ」と、SAP HANA用にチューニングされたベアメタルサーバー(専用ハードウェアサービス)の「SAP HANA on Azure(Large Instance)」を提供すると発表した。2017年12月末までの提供開始を予定している。

新サービスの位置付け

SAPアプリケーションに最適な環境を提供する

 米MicrosoftのMicrosoft Azure担当コーポレート バイスプレジデント、ジェイソン・ザンダー氏は、「われわれのコミットメントは、SAP HANAをはじめとするSAPアプリケーションに最適な高性能で拡張性の高いクラウド環境を提供することにある。現在多くの組織がSAP HANAやそのテクノロジーを活用している。同時に、多くの組織がコスト削減や拡張性といったパブリッククラウドのパワーを享受している。Microsoftは、これら2つのメリットを合わせ、ミッションクリティカルなワークロードにおいてパブリッククラウドを活用し、お客さまのデジタルトランスフォーメーションを加速することができる」と述べた。

米MicrosoftのMicrosoft Azure担当コーポレート バイスプレジデント、ジェイソン・ザンダー氏

 SAP HANAのようなインメモリデータベース環境においては、大容量のメモリを必要とする。日本マイクロソフトは2017年1月に、最大0.5TBのメモリを利用可能な「Gシリーズ」の提供を東日本リージョンから開始しているが、今回発表された「Mシリーズ」は、最大で3.8TBのメモリを利用可能な大規模仮想マシンとなっている。

 ザンダー氏は、「GシリーズはSAP HANAの開発やテストなどの用途に最適な環境だが、Mシリーズは本番環境に適している」と両者の違いを説明した。

 また、Gシリーズは東日本リージョンのみでの提供だったのに対し、Mシリーズは西日本リージョンでも提供される。これにより、地理的に離れているデータセンターを利用できるようになり、国内データセンターだけでディザスタリカバリ(DR)環境を構築できるというメリットが享受できる。

 一方、大規模な基幹システムに向けの「SAP HANA on Azure(Large Instance)」(以下、Large Instance)は、SAP HANAの「SAP TDI(テーラードデータセンター統合)」の認定を受けた専用のベアメタルサーバーのサービスだ。

 OLTP向けに単一ノードで最大20TBのメモリ、OLAP向けには複数ノードによる分散処理構成で、最大60TBのメモリをサポートする。また、MシリーズのSLAが99.95%なのに対し、Large InstanceのSLAは99.99%に設定されているなど、可用性の面でも高い仕様となっている。

Gシリーズは開発・テスト向け、Mシリーズは本番環境向けの仮想マシン。一方、SAP HANA on Azure(Large Instance)はベアメタルサーバーとなる

 ザンダー氏は「GシリーズおよびMシリーズ、Large Instanceは、SAPとMicrosoftの長年にわたるパートナーシップによって、SAP HANAに最適なスケーラブルでハイパフォーマンスな環境を提供できる。これは、ほかのクラウドベンダーの環境よりも優れたものだ」とMicrosoft Azureの優位性をアピールした。

 また日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 業務執行役員 本部長佐藤 久氏は「日本の多くの企業は、基幹業務をクラウドに移行することに抵抗がなくなってきており、逆に、これまで悩んできた問題が一気にクラウド化することで解決するのではないかという、前向きな姿勢のお客さまが増えている」と、日本企業におけるクラウドシフトの現状を説明した。

日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 業務執行役員 本部長佐藤久氏

 現在多くの企業は基幹システムを運用するにあたり、セキュリティやコストに多くの問題を抱えているという。これまで基幹システムがクラウドシフトできない最大の理由は、セキュリティが担保できないと考えられていたが、最近では企業が1社で対応するよりも、信頼できるクラウドベンダーのサービスを活用したほうが安全という考えが浸透してきている、と佐藤氏は説明する。

 また、コストの面においても、基幹システムはピーク時に合わせたシステム構成になってしまうため、サイジングが非常に難しく、実際に必要としている以上のハードウェアを導入していることが多いという。さらに運用の自動化や災害対策など、クラウド化することで基幹システムが抱える多くの問題を解決できるようになる。

 佐藤氏は「SLA、国内法への準拠、課金体系、コンプライアンスなどMicrosoft Azureは、エンタープライズのお客さまがクラウドに求めるサービスをほかのベンダーに先んじて提供してきた。今後もエンタープライズの領域において、先行指標であり続ける」と述べ、「Gシリーズ提供開始時に3年間での導入目標として掲げた250社を400社へと変更する」と自信をのぞかせた。

 なお、Mシリーズの利用料金は、ほかの仮想マシン同様に分単位の課金であるのに対し、ベアメタルのLarge Instanceは年単位の課金となる。