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SAPジャパン次期社長、新ビジョンは「和魂洋才で日本企業の変革を」――パートナー自走モデルも拡充
2026年3月27日 11:37
SAPジャパン株式会社は26日、2026年のビジネス戦略について記者会見を開催した。同社では、代表取締役社長の鈴木洋史氏が3月31日付で退任し、4月1日付で常務執行役員 最高事業責任者の堀川嘉朗氏が新社長に就任することをすでに発表しており、両者そろっての登壇となった。
冒頭で鈴木氏は、2025年度の業績を報告。グローバルでクラウドバックログが前年比30%増の772億ユーロに到達したことや、営業利益が104億ユーロ、フリーキャッシュフローが82億ユーロと収益が大幅に向上したことを強調した。また、日本市場でも総売上高が約16億ユーロに達し、クラウドの売上高は36%増と「グローバルの成長率を大きく上回った」としている。
鈴木氏は、コロナ禍の2020年4月に社長に就任、クラウドとAIを軸とした事業戦略を一貫して推進し、在任中の6年間で日本国内のクラウド売上を約4倍まで拡大している。退任後のキャリアについて鈴木氏は、「これまでは日本企業の変革を支援する立場だったが、今後は自ら実行する立場へと軸足を移し、新たな挑戦に取り組む」と述べている。
次期社長に就任する堀川氏は、日本ディジタルイクイップメント株式会社(現 日本ヒューレット・パッカード合同会社)、デル株式会社を経て2013年にSAPジャパンに入社。サービス営業本部長やクラウドサクセスサービス事業本部長を務めた後、2024年4月に最高事業責任者に就任している。
2026年の業績見通しについて堀川氏は、「グローバルで約258億~262億ユーロのクラウド売上を見込んでいる。SAPジャパンとしても、このグローバルの成長に歩調を合わせるとともに、日本市場での持続的な成長を引き継いでいきたい」としている。
堀川氏は、日本企業が長年、部門ごとのカイゼンで業務を最適化してきた結果、全社で統合されたデータ基盤がないままになっていると指摘。一方、欧米企業は早くから全社統合システムを採用し、1つのデータを全員で見る文化が根付いており、AIの効果をそのまま経営判断や業務効率化に反映しやすいという。日本企業の部分最適の積み上げは、AIの力を発揮する上で大きな壁になっていることから、SAPは昨年よりアプリケーション、データ、AIの3つの階層を体系的に提供するソリューション戦略を推進し、この課題を解決しようとしている。
この戦略を推進するにあたり、堀川氏は今年重点的に取り組む5つの領域として、1.AIコパイロットの「Joule」をすべての業務の入り口とすること、2.企業が安心してAIを活用できるよう、データ品質やセキュリティ、ガバナンスを備えた責任あるAIの開発を進めること、3.50年にわたり蓄積してきた25業種の知見をAIエージェントに組み込み、業界特化型の高度なAIアプリケーションを提供すること、4.Business Data Cloudを強化し、AIが活用できる基盤を整備すること、5.日本企業のニーズに応える形で、システム導入や変革プロジェクトの期間短縮を支援するAIツール群を拡充することを挙げた。
4月の社長就任にあたり、堀川氏は新たなビジョンとして「和魂洋才で顧客の変革を支え、日本で最も信頼されるパートナーになること」を掲げており、「日本企業の強い現場力という魂を生かしつつ、欧米企業の競争力の源泉である最新テクノロジーやプラクティスを日本に持ち込むことがSAPジャパンの使命だ」としている。
この変革を支える柱として堀川氏は、日本企業の競争力向上、パートナーエコシステムの強化、そして社会への貢献という3つの軸を打ち出した。
まず、日本企業の競争力を高めるには、クラウドやAIといった技術導入だけでなく、「人、組織、業務プロセス、データ、システムの5つを一体で見直す必要がある」と堀川氏。事業再編や世代交代が進む中、業務プロセスや組織運営の再設計が求められており、これらを包括的にとらえることが重要なポイントだとしている。
パートナー戦略においては、「パートナー企業が販売から導入、活用支援までを一貫して担う自走モデルの拡充を目指す」(堀川氏)という。また、パートナーが自走できるよう教育支援を行うほか、SAPがクラウドサクセス領域で構築したフレームワークをパートナーにも展開し、導入後の活用フェーズで確実に成果を出せるよう支援を強化する。
社会貢献については、減災・防災、デジタル人材の育成、公共分野の3領域に注力する。堀川氏は、防災分野で大分大学と共同開発した災害情報プラットフォーム「EDISON」に、災害時の情報収集や特殊業務を効率化するAIエージェントを実装したことや、女性の就業支援プログラム「でじたる女子」を19自治体で展開し、3000人以上に就業機会を提供、総額10億円規模の報酬創出につなげたことなどの実績を示し、「今後もさらに社会全体を豊かにするような活動を続けたい」とした。






