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NEC、川崎に新拠点「NEC Innovation Park」を開設 4000人の知を結集し研究から事業化までを加速
2026年4月8日 11:53
日本電気株式会社(以下、NEC)は、神奈川県川崎市の同社玉川事業場に新たなイノベーション創出拠点「NEC Innovation Park」を開設し、4月7日午前11時からオープニングセレモニーを行った。
NECの森田隆之社長兼CEOは、「NEC Innovation Parkは、NECが中央研究所を構えていた地に開設したものである。新たな知の拠点として、外部にも活動を広げていく役割を担うことになる。地域やアカデミアにも、共創の輪が広がっていくことを見てほしい」と述べた。
また、NECの吉崎敏文副社長兼COOは、「NEC Innovation Parkは、研究とビジネスをつなぎ、物理的なコラボレーションを推進し、研究開発から事業化までのプロセスを加速することで、イノベーションの創出と社会価値創造につなげることを目指す。企業の枠を超えて人々が集い、アカデミアの知を融合し、パートナーとの連携を広げる『知の創造の場』になる」と前置き。
「そのためには、『人と人』、『人とテクノロジー』、『テクノロジーとビジネス』、『ビジネスと社会』の4つの新結合が大切である。新たな議論が生まれ、新たなモデルとアイデアを、すばやく形にすることで、次のアクションにつなげる。その結果、ビジネスが加速され、社会価値が高まる。NEC Innovation Parkでは、議論のフィードバックが絶えず行われ、持続的なアプローチを進めることができる環境を目指す」と述べた。
4000人が集う「知の集積地」:研究とビジネスをシームレスにつなぐ空間設計
NEC Innovation Parkでは、2400人の開発エンジニア、1200人の研究者、200人のAIアーキテクトのほか、デザイナーやITデリバリーの担当者など、合計で約4000人が勤務。「研究とビジネスをシームレスにつなぐハブになる」(吉崎副社長兼COO)と語る。IT部門も入居しており、クライアントゼロにおける迅速な対応や改善も図れるようにしている。
また、AIによる研究者同士のマッチングをサポートする「AIコミュニティマネージャ」を導入しているのも特徴で、困っていることや興味があることを問い合わせると、それらの課題解決に最適な社内活動や、NECグループ内のキーパーソンを表示し、Teamsやチャットによる会話ができるようになって、人と技術、プロジェクトのコラボレーションを促進できる。
NEC Innovation Parkは、12階建てとなっており、玉川事業場では15年ぶりの自社ビルとなる。
高層階に顧客やパートナーとの「共創フロア」、中層階に「オフィスフロア」、低層階にNECの研究者や産学連携による実証実験に最適な「ラボ機能」をそれぞれ設けた3層で構成。多様な人材の交流とイノベーション創出に向けた特徴的な空間設計を採用しており、「新結合を起こし、変革を生み、世界へ広げる」をコンセプトに、産学連携でのオープンイノベーションを通じて、未来の社会価値を創造することを目指すという。
高層階である11、12階は社内外との共創を意識したInnovation Hubのフロアとし、さまざまな大きさの会議室に加えて、マルチディスプレイと165インチの大型ディスプレイを設置し、100人規模のイベントを開催できるスペースを用意している。
技術交流会やセミナーなどに活用できるほか、社外からの来場者が、サテライトオフィスとしても利用することができる。NECの研究開発部門が最先端技術を紹介するイベントとして毎年開催しているNEC Innovation Dayのほか、地域や企業との技術交流会や共同研究会なども、11階、12階フロアを使用して開催する予定だという。
また、11階にはリフレッシュスペースとして屋上庭園を設け、開放的な雰囲気づくりも演出している。眼下には、東海道新幹線が走る様子を見ることができる。
そして、高層階から中層階にかけて吹き抜け構造と内階段を設置することで、さまざまな職種や組織に属する社員が出会い、人々の流れを生み、思いがけない交流を誘発するなど、イノベーションを創出しやすい空間づくりを目指しているという。
中層階の5~10階は、NEC社員だけが入れるオフィスエリアで、DXの事業開発および推進、研究開発、新規事業開発などの組織が入る。AIの研究開発部門とBluStellar部門の組織統合に加えて、新棟では、研究者とビジネスサイドのメンバーが、物理的に同じフロアに集結することになり、活発な意見交換を促すほか、新たな視点やアイデアが生まれやすい環境を創出するという。
オフィスエリアでは、社員が共用で使用できる端末を用意しており、社員のバーチャルデスクトップにセキュアにアクセスできる。セキュリティゲートが顔認証で通過できる仕組みと組み合わせると、社員証やPCを持たずに出社するといったことが可能だ。
低層階の3、4階は、高耐荷重、高天井、空調電気設備の増強などを施しており、実証実験に最適なフロアとしている。一部エリアは、セキュリティレベルを高く設定し、クローズドな環境での産学連携を促進することができるという。
2階はエントランスホールで、受付が設置されているだけでなく、誰もが入れるフロアにしており、地域にも開放。カフェコーナーを設置し、市民が集まって議論をしたり、イベントを開催したりといったことが可能だ。今後は、「知の探索」を促進するようなアートや、新製品および新サービスのプロトタイプを展示する予定だという。
また、建物内は、自動調光システムや高効率空調などの採用により、エネルギー消費量を50%以上削減。ZEB Ready認証の取得や、CASBEE川崎で最高ランクであるSを取得するなど、「環境負荷低減に配慮し、サステナブルな最先端の設備を備えた拠点」(吉崎副社長兼COO)としている点も強調した。
NEC 執行役Corporate EVP兼CAIO(チーフAIオフィサー)の山田昭雄氏は、「イノベーションを創出するために、AIをふんだんに活用し、AIネイティブを実践するための拠点がNEC Innovation Parkとなる。また、建物全体が、NEC自らが0番目のクライアントとして最新テクノロジーを活用する『クライアントゼロ』を実践するリファレンスオフィスとなっており、大規模な実証実験を行うことができる。データドリブンな経営の見える化、顔認証ゲートの採用、AIアロマの導入などにも取り組んでいる。今後は、お客さまやパートナーと共創を加速するための仕組みをNEC Innovation Parkに集約することになる。さまざまな結合が日常的に発生する場にしていきたい」と抱負を述べた。
さらに、「私自身、NEC Innovation Parkに来ると、朝と夜はエレベーターを使うが、日中は階段で行き来している。それが、思いがけないアイデアが生まれるきっかけとなっている。また、2階フロアのオープンなスペースを利用して、川崎市民とのイノベーションも起こしていきたい」とも述べた。
480社が参加し、AIをテーマに共創活動を行っているBluStellar共創パートナープログラムや、AIに関する7つの共創テーマをもとに開催しているBluStellar Communitiesなども、今後は、NEC Innovation Parkで行うことになるという。
社員が必要な香りをAIエージェントが選定する「AIアロマ」を導入
なお、NEC Innovation Parkにおけるユニークな取り組みのひとつが、AIアロマである。
アットアロマとの共創によって実現したものであり、社員のスケジュールや体調をベースに、社員が必要な香りをAIエージェントが選定。社員は、その香りを手元に持ち運び、香りのなかで仕事をすることができるという。
また、IoTを活用して、各フロアの温度、湿度、ノイズの発生状況などのデータを集約しており、それらにあわせて、建物内の空調を調整するだけでなく、社員がデータをもとに、自分にとって快適な場所を探して、仕事ができるようにしているという。
川崎市や大学が寄せるエコシステムへの期待
オープニングセレモニーに出席した川崎市の福田紀彦市長は、「今朝、川崎市の人口が156万人に達したという速報値が発表された。川崎市は、21大都市のなかで、研究職に就いている人の割合が最も多い。イノベーション拠点を川崎市に移動させるという企業が増えており、ひとつのトレンドになっている。NEC Innovation Parkに約4000人の技術者が集結することにより、川崎市にとっても、『知の拠点』としての集積が加速する。集積が集積を生むという好循環につながっている。川崎市内には、官民をあわせて約550の研究開発拠点がある。これらをネットワーキングし、エコシステムを作るという川崎市の方向性に合致するものである。NEC Innovation Parkに多様な人たちが集まり、新たな結合が次々に生まれることを期待している」と述べた。
また、東京大学の藤井輝夫総長は、「NEC Innovation Parkのなかには、新たなテクノロジーが組み込まれるとともに、オープンなスペースが多い。人と人の新結合を作り上げることが重要であるというNECの意気込みを感じた。東京大学とNECは、2026年3月に、NEC東大ラボを設置することを発表した。AIと共生する未来の共創や、信頼あるAIの社会実装に向けた取り組みを開始したところである。東京大学は、UTokyo Compassという基本方針を打ち出し、対話を通じて知を生み出し、知を共有していくことを目指している。NEC Innovation Parkの理念は、東京大学の基本方針と通じるところがある。NECとの交流を通じて、AIと共生する未来づくりに取り組みたい」とあいさつした。
ビデオメッセージを送った慶應義塾長の伊藤公平氏は、「グローバルに事業を展開するNECが、産学連携と社会実装において、新たな拠点を構えることを大変心強く、楽しみにしている。慶應義塾は、2024年9月に、米カーネギーメロン大学と連携し、慶應AIセンターを設立した。ここでは、NECをはじめとしたパートナー企業9社の支援を得て、世界最高峰の知見を、日本、そして社会へとつなぐ活動を推進している。今後は、NEC Innovation Parkも拠点として活用し、先端AI人材の育成、そして社会実装の加速に向けた連携を深めていく。産学の枠を超えた新たな価値創造の源泉となることを期待している」と語った。
研究開発と事業を直結させる「進化」と「深化」
一方、NECの吉崎副社長兼COOは、BluStellarに関する2026年4月1日からの新体制について言及した。
「これまで、オファリングやシナリオによる共通化および標準化によるポートフォリオ変革を進め、戦略コンサルからサービスデリバリー、運用、保守までのエンドトゥエンドで価値を提供できる体制を整えてきた。2025年度からは、AIをはじめとする研究者と、BluStellarビジネスをドライブするメンバーを組織的に融合した。さらに、2026年度からは、ITサービス事業と社会インフラ事業に、共通機能としてテクノロジー&イノベーション機能を集約し、これを私がCOOとしてリードし、さらに、山田昭雄氏がCAIOとして、研究開発からビジネスまでを統括する体制となる。これにより、進む『進化』と、深める『深化』を目指す」とした。
「進化」では、テクノロジー&イノベーション体制の構築により、研究開発、製品サービス、デリバリー、運用までを一体化してスピード感を高める一方、「深化」では、社会インフラ事業ではパートナーが持つ先端技術との深い連携、ITサービス事業では顧客セグメントごとにアプローチを強化する。
「AIをはじめとして、研究開発から生まれる最新技術を迅速にお客さまに提供し、社会変革を加速させることが極めて重要である。例えば、AIコア技術であるcotomiは、開発から事業化までの期間が、わずか3カ月間だった。お客さまとの共創やクライアントゼロでの実践知をフィードバックしながら、研究開発とビジネスのループを回し続けるとともに、BluStellarの対象領域を広げ、お客さまにスピーディに価値を届ける仕組みを作り上げる」とした。
































































