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退任予定のパナソニック コネクト樋口泰行CEOがインテルや日本マイクロソフトの社長と語る「最後の豪華セッション」

AI共生時代の人間の出番はどこにあるか?
レッツノート新製品3モデルも発表

 パナソニック コネクト株式会社は16日、ビジネスモバイルPC「レッツノート」の新製品を発表。その席上、パナソニック コネクトの樋口泰行プレジデント CEO、インテルの大野誠社長、日本マイクロソフトの津坂美樹社長が登壇し、「AIが人間の作業をどこまで担い、どこで人間が価値を発揮するのか」をテーマにトークセッションを行った。

 樋口プレジデント CEOは、「豪華なゲストであり、すごい発表でもあるのかと思うかもしれないが、そうではない。私が、2026年3月末に退任することになり、最後に一緒に登壇しようと呼びかけたところ、快く引き受けていただいた」と背景を説明。「せっかく3人そろったので、旬のAIについて語ろうということになった」と切り出した。

パナソニック コネクト プレジデント CEOの樋口泰行氏

 樋口プレジデント CEOは、日本マイクロソフトや日本ヒューレット・パッカードの社長などを経て、2017年4月に、新卒で入社したパナソニックに復帰。パナソニック コネクトのプレジデント CEOなどに就き、8年半にわたり陣頭指揮を執った。2024年度は、パナソニック コネクトとして過去最高益を達成している。

 なお、2026年4月1日にシニア・エグゼクティブ・アドバイザーに就任する予定で、新CEOには、パナソニック コネクト傘下のパナソニック アビオニクスのCEOであるケン・セイン氏が、兼務で就任する。

 モデレータを務めた樋口プレジデント CEOは、オフィス業務やソフト開発などの非物理業務における「デジタル」、自動運転や産業・物流ロボット、ヒト型ロボットなどによる物理行為を伴う作業を行う「フィジカル」、利害調整や組織運営、経営判断など、文脈の理解や覚悟を伴う作業などに活用する「共感・EQ」の3つの領域で、AIの利用が促進されていることを指摘する。

 一方で、AIの浸透によって、人の記憶や計算を代替できるようになった場合、教育はどうなるべきかといった観点からも質問を行った。

 樋口プレジデント CEOは、「AIの進化は激しい。事務系の仕事が置き換わるのはわかっていたが、クリエイティブな作業もAIに置き換えられようとしている」と現状を指摘。

 これに対して、日本マイクロソフトの津坂社長は、「生成AI革命はすごいものであり、時間の使い方が大きく変わり、プロセスそのものをAIファーストで考えるケースが増えてきた。すでに、日経225の94%の企業がCopilotを使っており、個人の生産性向上、組織の生産性向上、顧客接点での効果が生まれている」としながら、「AIは人をアシストするものであり、AIによって人の仕事が乗っ取られるという世界はまだ来ない。コストを削減し、生産性を高め、人のイノベーションを加速し、2倍、3倍の速度で新製品を投入できるといったメリットが生まれている段階にある。人がやることを、よりよくするためにAIが助けてくれる」と、AIの効果をアピールした。

 また、「AIの利用が促進されている企業の特徴は、AIを経営トップ自らが利用していること、既存のプロセスに『AIふりかけ』をかけるのではなく、AIファーストでプロセスを考えていること、AIをたまに使うのではなく、AIに向き合って積極的に利用するために『AI筋トレ』を行っていることである。一度、ジムに行っても筋肉はつかない。それと同じように、毎日、AI筋トレをすることが必要である。AIは質問の仕方で、答えが変わってくる。いい質問ができるようになることが重要だ。これもAIの筋トレである。この3点に取り組んでいる企業は、規模を問わずにAI利用の進展が速い」と指摘した。

日本マイクロソフト 代表取締役社長の津坂美樹氏

 インテルの大野社長は、「コンサルティング会社がAIを活用することで人員を削減したり、AI開発の現場がAIに置き換わったりといった現象が見られている」としながら、「AIの利活用には、社長自らのリーダーシップが必要である。AIはそれほど柔軟ではなく、ワンサイズフィットオールではない。それぞれの経営課題にきちんとはめられるかどうかが大切であり、同時に、AIを受け入れられる体制や文化の醸成をセットで考える必要がある。それに気がついた企業はいち早くAIを導入し、活用している」と述べた。
 また、樋口プレジデント CEOは、「AIはテクノロジーであるが、その範囲だけでとらえていると導入が進まず、変革が進まない。AIが、会社のプロセス、組織、ビジネスにどんな影響を与えるのかということを考える必要がある。AIと各種業務を組み合わせると、どんなことができるのかをアイデア出しすることが大切である」と提言した。

 続いて、樋口プレジデント CEOは、「AIが普及しても、人が職を失わないためにはどうしたらいいか」と質問。

 大野社長は、「IT産業では、以前から、ヒューマンオーグメンテーション(人間拡張)という言葉が使われていた。デジタル技術と人が協調することで、これまで以上のことができるようになるというもので、AIも同様に、人が持っている潜在能力を引き立てることができる。人は『五感』というセンサーを持っている。人は、これを鍛え、AIと協調しながら、より『五感』を引き出していく必要がある」とした。

 また、「機能を持った自律型ロボットによって、人が介在せずに作業を行うようになる。自動運転もそのひとつであり、すでに、ロボタクシーが稼働しており、人が運転するよりも事故が少ない。課題は、自律型ロボットやAIを社会が許容するかどうかである。今後、この部分を考えていく必要がある。今も、ロボタクシーは人が監視するなど、人の介在が不可欠である。完全自動化した状況を人が選ぶのかどうかが、これからの注目点である」との見解を示した。

インテル 代表取締役社長の大野誠氏

 津坂社長は、「AIがない世の中はこれからは存在しない。どうやって使いこなすかを考えて、その上で、人間らしいところをどこで発揮するのかを考えなくてはならない。70:20:10の法則のように、10%はアルゴリズムやLLMで置き換わるところ、20%はそれが乗っているテクノロジーによって置き換わるところだが、70%は人とプロセス、組織などで運営しているところであり、人の出番がまだ多い。『フィジカルAIテイクオーバー』が、明日来るわけではない」と、現在のAIを取り巻く環境を俯瞰(ふかん)した。

 だが、「日本固有の問題として、高齢化があり、AIが当てはまる具体的なユースケースが存在している。また、無人工場を世界で最初に実現したのは日本である。エコシステムができると、一気に加速することになるだろう」との見通しを示した。さらに、「物理的な身体を持ったエンボディドAI(Embodied AI:身体性AI)は、マイクロソフトリサーチでも研究を進めているが、まだ、エンボディドAIを運用するプラットフォームのエコシステムができていない」とも述べた。

 最後に樋口プレジデント CEOは、「AIによって教育は変わるのか」と質問。「AIができることを、すべて教育カリキュラムから外したり、ひいては、人が知識としてさまざまなことを覚える必要がなくなったりするのだろうか」と疑問を投げた。

 大野社長は、「ここにいる3人の社長がAIに置き換わるのかどうかという話にも通じる」とジョークを交えながら、「人は優れたセンサーとメモリー、頭脳を持っており、それを毎時100Wのエネルギーで実行している。コンピュータではとても100Wでは動かせない。ここに人の特徴がある。これをどう生かすかが大切になる」と述べた。

 津坂社長は、「インターネットが登場したときに、何でも調べられるから、人は物事を覚える必要がないと言われたが、そうではないことが証明されている。また、Excelがあるから数学を学ばなくていいわけではない。人は、基礎レベルの知識を持っていることに加えて、AIのおかげでさらに高いスキルに到達することができるようになる。何を教育するか、そのためには、どういう教員を育て、教育機関をどうAIイノベーションをしていくかがこれから重要になる」と提言した。

左から、インテルの大野誠社長、パナソニック コネクトの樋口泰行プレジデント CEO、日本マイクロソフトの津坂美樹社長

12.4型、13.3型、14.0型の3モデルを新たに発表

 トークセッションに続いて、レッツノートの新製品の発表が行われた。

 新製品は、レッツノート初のCopilot+ PCとしてAIの処理機能を強化している。パナソニック コネクトの樋口プレジデント CEOは、「AIを、クラウドだけでなくエッジでも利用できる。これにより、機密性が高く、レイテンシが低いため、より生産性が高い環境を実現できる。そうしたニーズに対応するために、PCサイドでAI対応ができるようにした」と新製品を位置づけた。

 今回発表したのは、12.4型の「SC7」、14.0型の「FC7」で、インテル Core Ultra シリーズ3 プロセッサーを搭載し、Intel vProプラットフォームに対応。Copilot+ PCとして4月から発売する。

SC7
FC7

 また新たに、13.3型の「NC7」も発表。モバイル性と作業性を両立したCopilot+ PCとしてラインアップに加え、2026年秋ごろに発売する予定という。なお、NC7の発売時期が遅れるのは、13.3型というこれまでにない新筐体を開発しており、そのための評価に時間がかかるためと説明した。

NC7

 パナソニック コネクト 執行役員 モバイルソリューションズ事業部マネージングダイレクターの山本清高氏は、「レッツノートは、30年間にわたり、頑丈、軽量、長時間を研ぎ澄ましてきた。また、コロナ禍以降、働く環境が複雑化するなかで、IT管理者がサポートに苦労するといった状況が生まれてきたことから、レッツノートでは、互換性を設計思想に取り入れ、IT管理工数を大幅に削減することに貢献してきた」と前置き。

 「AIが業務のなかに浸透し、検索としての利用だけでなく、相談したり、業務を任せたりする動きが出てきた。AIは効率化の便利な道具から、優秀なエージェントとして活用する動きへと進化している。AIの業務が停止することは、致命的な機会損失につながる。PCが止まることは、これまでとは比較にならないほどの影響を及ぼす。AI時代に求められるのはビジネスを止めないPCである。新たなレッツノートは、ビジネスを止めないことにこだわり続け、積み重ねてきた圧倒的な信頼性をベースに、AIが利用できる。ここに大きな価値がある。ビジネスをもっとレジリエントで創造的なものにできる」と述べた。

パナソニック コネクト 執行役員 モバイルソリューションズ事業部マネージングダイレクターの山本清高氏

 新たなレッツノートは、「働き方をもっと自由に。IT管理者も自由に。」をキーメッセージに訴求することになる。

 また、これまで研ぎ澄ましてきた頑丈、軽量、長時間、互換性についても強化している。

レッツノートを研ぎ澄ます

 「頑丈」では、MIL-STD-810などをベースにした独自の判定基準を用いた試験を実施。動作状態のまま、76cmの高さで26方向から落下させる試験や、自動車や電車移動を想定して、上下、左右、前後の3方向に各1時間ずつ振動させる振動耐性試験などを行っており、液晶側面部の強化など、構造体として剛性を高めるさまざまな工夫を盛り込んだという。

 「軽量」では、軽量と頑丈性を両立するマグネシウム合金を採用したほか、頑丈を維持しながら、コンパクトなフットプリントの実現、筐体の薄肉化と必要部分の徹底的な補強に取り組んだ。

 「長時間」では、独自の省電力機能の追求により、JEITA3.0によるバッテリー駆動時間は、SC7で約17.7時間へ、FC7は14.8時間へとそれぞれ大きく延長している。

 そして、「互換性」では、液晶サイズに関わる部品以外は、3製品で共通化。ドライバーやファームウェアも同一としており、「3機種を導入する場合も、検証作業は1機種で済む。互換性がない3機種を導入するのに比べて、導入時には4人月、運用時には年間9.5人月の工数削減ができる」(パナソニック コネクト モバイルソリューションズ事業部 共通技術総括部 プロジェクトマネージャーの堀直樹氏)という。

パナソニック コネクト モバイルソリューションズ事業部 共通技術総括部 プロジェクトマネージャーの堀直樹氏

 また、導入から運用・保守までを支援するIT管理ツール群「Panasonic PC Control Suite」により、管理工数の削減に貢献。BIOSの設定、ドライバのインストール、デバイスの各種設定、アップデート、トラブルシューティングといった機能を提供する。

 「パナソニックは、BIOSなどの基盤ファームウェアや、基盤アプリケーションとなるPanasonic PC Hubなどを、すべて自社で開発している。そのため、これらのソフトウェアの設計段階から、Panasonic PC Control Suiteの使いやすさを想定した開発が可能になっている。PC管理をシンプルに、効率的に行える」と述べた。

Panasonic PC Control Suite

 4月には、ランチャーアプリ「Panasonic PC Navigator」を新たにリリース。生成AIでの質疑応答機能を搭載し、IT管理者が行いたい作業を指定するだけで、必要なツールや機能にアクセスできるという。

Panasonic PC Navigator

 そのほか、円形ホイールパッドや2mmキーストロークの採用、ビジネスに必要とされる各種インターフェイスの搭載といった、レッツノートのこだわりを維持。独自のCPU制御と放熱設計を組み合わせたMaxperformerも搭載している。さらに、SC7では従来モデルに比べて、約1.5倍のパフォーマンスを実現し、NPUの処理速度は約3.8倍、メモリー速度は約14%の向上を図っているという。

法人向けだけでなく量販店や直販サイトなどを通じても販売

 レッツノートの販売戦略については、パナソニック コネクト モバイルソリューションズ事業部 国内営業総括部 ダイレクターの重野敬人氏が説明。法人向けに販売するだけでなく、SC7およびFC7については、量販店やPanasonic Store+を通じて、個人事業主向けに販売する。NC7の個人向け市場への投入については、今後の動向を見ながら検討するという。

パナソニック コネクト モバイルソリューションズ事業部国内営業総括部ダイレクターの重野敬人氏

 「モバイルでのオンライン会議、移動時間のすき間でレポートを作成するユーザーには12.4型のSC7、大画面を利用しながら、AIを活用したデータ分析、画像生成を行うユーザーには14.0型のFC7、モバイル性と作業性を必要とするハイブリッドワーカーには13.3型のNC7を提案するといったように、お客さまの業務に応じて最適なサイズを提案する。また、互換性を生かすことで、機種が増加しても管理者の負担が増えない点も訴求する。マスター生成および評価工数は53%削減し、運用および管理工数は33%削減できる」とした。

 価格設定については、「メモリーの市場価格に適した価格に変えていく」と述べた。
 なお、レッツノートは、2026年9月には発売30周年を迎えることになる。また、2025年には、国内のビジネス向けウルトラポータブルPC市場において、トップシェアを獲得したことも報告した。

 一方、日本マイクロソフト デバイスパートナーセールス事業本部 シニアパートナー テクノロジーストラテジストの平井健裕氏は、Copilot+ PCの機能をデモンストレーションした。

 「Copilot+ PCの発表当初は個人向け機能が多かったが、今は集中して業務向け機能を拡充している」とし、プレビューとして提供しているリコールでは、「スナップショットとして保存した過去の操作履歴のなかから、欲しい情報を探し出すことができる。新たな機能では、ホーム画面から必要なものを探し出しやすいようにしている。日々の業務のなかでも使える機能となっている」と述べた。またClick to Do(クリックして実行)機能については、「画面上の内容に基づいた適切なアクションを通じて、時間を節約することができる。オフィスアプリケーションと連携し、より使いやすくなった」と説明した。

日本マイクロソフト デバイスパートナーセールス事業本部 シニアパートナー テクノロジーストラテジストの平井健裕氏