インタビュー

新しい働き方のネットワークに対応するExtreme Networksの「Infinite Enterprise」

 かつてスイッチ製品の企業だった米Extreme Networksは、2016年以降、企業向けWi-Fiや、クラウドでのネットワーク管理、SD-WANなど、積極的な買収によりポートフォリオを拡大している。

 現在のExtreme Networksの事業や製品について、Chief Technology Officer(CTO)&Chief Product Officer(CPO)のNabil Bukhari氏と、Senior Vice President, Asia PacificのJeff Hurmuses氏に話を聞いた。

1つのプラットフォームと1つのクラウドで「Infinite Enterprise」

Extreme Networks Chief Technology Officer(CTO)&Chief Product Officer(CPO)のNabil Bukhari氏

――Extreme Networksでは最近「Infinite Enterprise(無限で制限を設けない組織)」というキャッチフレーズを掲げています。壮大な言葉ですが、どのような意味でしょうか。

Bukhari氏:意図的に壮大な言葉を使いました。この言葉は、企業が新しい技術を使って差別化し成長する機会が無限だということから来ています。

 現代では、すべての組織や企業が、事業内容にかかわらず、テクノロジーにたずさわっているといえます。そのため、テクノロジーを差別化しなければ会社として成長できません。そこで、われわれがテクノロジーを作り出して簡単に使えるようにすることで、企業が無限の機会をつかまえられるということです。

 もう1つ、Infiniteは、古い考えにとらわれないということも意味しています。このように、複合的な意味からつけた言葉です。

――Infinite Enterpriseのもとに、どのようなことを考えているのでしょうか。

Bukhari氏:新型コロナ以前は、オフィスなどに通って仕事をしていて、それに合わせてネットワークを作っていました。しかし、新型コロナによってすべてが変わり、企業や学校、病院などの仕事が分散しました。人も場所も分散し、家や、違う場所、違う国から働くようになっています。この新しい現実から生産性を上げ、サービスを提供するのがInfinite Enterpriseです。

 ネットワークも、これまでのような、大手ベンダーによる同じシステムを何年も使っていたやりかたが通用しません。セキュリティも変わって、混在し、複雑なものになっています。

 ExtremeはInfinite Enterpriseのリーダーです。どこでからでも接続するようなネットワークにおいて、複雑さを下げることで、コストもリスクも下げます。

 それを2つの形で実現します。

 1つめは「Universal Platform」です。データセンターから支店まで、スイッチ、ファブリック、Wi-Fi、SD-WAN、セキュリティといった機器を、1つのアーキテクチャーで構築します。

 2つめは「1つのクラウド」です。クラウド管理の「Extreme Cloud IQ」により、ネットワークのすべてのものを管理します。

――新型コロナ以来の場所を問わない働き方の重要性や、そのネットワークをクラウドから一元管理するというのは、他社も打ち出しています。その中でExtremeの特徴はどのような点でしょうか。

Bukhari氏:確かに他社も言っています。しかし、実態は違います。製品ポートフォリオが分散していて、それぞれに別のクラウドが必要になります。その結果、複雑で、コストやリスクが大きくなります。

 それに対してExtremeは、ポートフォリオ全てで1つのクラウドに対応しています。

 また、Extremeはさまざまなクラウドに対応しています。企業はパブリッククラウドを使っていますが、政府ではパブリッククラウドに難色を示しているところもあります。さらに、最近はエッジクラウドもあります。パブリッククラウドにも、プライベートクラウドにも、エッジクラウドにも対応する柔軟性はExtremeだけです。

 そのほか、Extremeはさまざまなセキュリティの認証制度に対応していますが、他社はそうではありません。

 さらに、こうしたソリューションを、企業には企業のやりかたに、政府には政府のやりかたに合わせて、さまざまな種類の顧客に提供してきました。自社のやりかたを押し付けるベンダーもいますが、Extremeはやりかたを強制することはありません。

日本でいちばん成長するネットワークベンダーを目指す

Bukhari氏:ここで言っておきたいのは、われわれは日本に非常に力を入れているということです。日本は、デジタル変革でグローバルのリーダーになりうると考えていて、そのためにExtremeのテクノロジーを活用していくのがいいと考えています。

 日本について率直に言うと、お客さまはベンダーから古くて高いソリューションを押し付けられていると考えています。それに対するわれわれの解は、シンプルであることで、展開も管理も簡単で、リスクを下げるというものです。200人もエンジニアがいないと管理できないものではいけないと思っています。それによって、日本はアジア太平洋地域だけでなくグローバルでも中心となると考えています。

Extreme Networks Senior Vice President, Asia PacificのJeff Hurmuses氏

Hurmuses氏:重要なポイントは、Extreme Networksはアメリカ企業というよりグローバル企業だということです。今や、売上の半数以上がアメリカ以外の地域によるものとなっています。

 私は1年前にExtreme Networksに入ってアジア太平洋地域を担当していますが、そのときから日本が中心的な役割をはたすことはわかっていました。われわれは7月1日からが新年度ですが、昨年度はアジア太平洋地域では二桁成長を遂げており、そのアジア太平洋地域で最大の売り上げが日本でした。大型案件も日本にあり、数百万ドルの契約まで締結しています。日本がなければアジア太平洋地域の事業がなりたたないほどで、これからも投資を続けます。

Bukhari氏:日本でもすべてのプラットフォームを展開し、日本でいちばん成長するネットワークベンダーを目指したいと考えています。日本の経営陣も新しく整ったので、これからしっかりやっていきたいと思います。

買収でポートフォリオを拡大、それぞれの分野でのイノベーションも

――2016年以降、Extreme Networksは積極的に企業を買収しています。製品面から見た一連の買収のメリットを教えてください。また、それによる競合他社との差別化はどうでしょうか。

Bukhari氏:買収により、Extreme Networkのポートフォリオが追加されていきました。もともとはスイッチの会社でしたが、Zebra Technologiesを買収してWi-Fi、Avayaでファブリック、Brocade Communications Systemsはデータセンターまわり、Aerohive Networksでクラウド管理、最近はIpanemaを買収してSD-WANが加わりました。

 これらをすべて、先ほど言ったように1つのプラットフォームと1つのクラウドで扱っています。他社も同じことを言っているかもしれませんが、実際はそうではありません。それが差別化のいちばんの部分です。

 それぞれの製品でもイノベーションを生んでいます。たとえば、エンタープライズ級のWi-Fi 6Eアクセスポイントを出したのはExtreme Networksが最初です。環境問題においては、われわれのアクセスポイントは最も電力効率のいい製品です。

 通信(テレコム)業界では、コンポーザブルなフォワーディングプレーンを提供するようになったのもわれわれが最初で、いまでは世界の大手の通信会社が使っています。キャンパスファブリックも、ネットワークファブリックの業界の中で最も多数展開されています。

 AI/機械学習でも新しいイノベーションを導入しています。また、ネットワークの会社で初めて、ネットワーク構成をサンドボックス環境でテストするデジタルツインを導入しました。

 これらの核にあるのは、ネットワークのやりかたを変えることで、複雑性や、コスト、リスクを減少させて、お客さまのビジネスでの競争力を高めることです。それによって会社として成功するのがゴールです。

大規模スタジアムでWi-Fi 6Eが活躍

――そうしたExtremeの製品ポートフォリオの1つとしてWi-Fiアクセスポイントがあります。日本では新しい規格のWi-Fi 6Eが9月に認可されました。日本市場のWi-Fi 6Eに対するExtremeのアプローチを教えてください。

Bukhari氏:Wi-Fi 6Eでは、新しい6GHz帯の周波数帯域が使えます。そのメリットとしては、まず帯域が増えることでアプリケーションも高いSLAで提供できることがあります。また、東京のように密度の高い地域では、従来の2.4GHzや5GHzはすでによく使われていて干渉が発生しますが、6GHzはまだクリーンな状態で提供できることもあります。

 どう使われるか、実例で説明しましょう。まず、早くからWi-Fi 6Eを導入した米国のある巨大な病院では、Wi-Fiの速度が落ちていることが問題になっていました。病院内にはさまざまなデバイスがあるほか、個人のデバイスもあるからです。Wi-Fi 6Eを導入して新しい周波数帯域を使うことで、Wi-Fiの混雑を避けられるようになり、アクセスポイントの数を減らすこともできました。

 同様に電波が非常に混雑しているケースに、スポーツのスタジアムの例があります。同時に7~9万人が接続するため、Wi-Fi 6Eにすると目に見えてパフォーマンスが向上します。実は、スタジアムで採用されているアクセスポイントはExtremeが最も多く、フットボールや野球、サッカーなどのスタジアムで使われています。

 日本で規制が緩和されたことで、ExtremeのWi-Fi 6E製品はどんどん日本に打って出ていこうと考えています。

――Wi-Fi 6EでのExtremeの他社との違いを教えてください。

Bukhari氏:まず、先ほども申したように、他社のアクセスポイントよりも消費電力が低いというアドバンテージがあります。また、室内用のWi-Fi 6E APを出したのも、Extremeが最初でした。屋外の大会場のアクセスポイントを提供しているのもExtremeだけです。ExtremeはすべてのポートフォリオにおいてWi-Fi 6Eに対応しています。Wi-FiコントローラベースにもWi-Fiコントローラなしに対応しているのも特徴です。

 Extreme Cloud IQという同じクラウドで管理できるのも大きな長所です。これによって、1つの環境でアクセスポイントをWi-Fi 6E製品に置きかえるのも簡単です。シンプルな管理を実現しています。

 このように、Extremeは新しいものに競合に先んじて取り組むのを得意としています。競合が追い付いたときには、すでに先に行っているのです。

 最後にもう1つ。われわれがいい技術だと言うだけでなく、顧客にそう思っていただけるかが重要です。ExtremeのWi-Fiの市場シェアがこの3年で3倍になっているのは、多くの顧客がそう思っていることが反映されているのだと思います。

――ありがとうございました。