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「イノベーションを実現するにはデバイス&サービスカンパニーでなくてはならない」~Microsoft バルマーCEO
Worldwide Partner Conference 2013初日 基調講演
(2013/7/9 10:58)
Microsoftが全世界のパートナー企業を対象に開催する「Microsoft Worldwide Partner Conference 2013」が、米国時間の7月8日、米国テキサス州ヒューストンのGeorge R. Brown Convention CenterおよびTOYOTA Centerで始まった。
全世界約150カ国から、過去最高となる1万5000人以上のパートナー企業が参加。日本からも過去最高となる約150社、約350人のパートナー企業が参加した。
デバイス&サービスカンパニーを目指す方針を説明
初日の午前8時30分から行われた米Microsoftのスティーブ・バルマーCEOの基調講演では、「Microsoftのビジネスの95%がパートナービジネスであり、その連携に感謝する」と語りながら、「デバイス&サービスカンパニー」を目指す同社の方針に関する説明から始まった。
バルマーCEOは、「私はMicrosoftに入社する際に、両親にソフトウェアの会社に入社すると話した。ソフトウェアの価値はいまでも重要であるが、その時代から大きく変化している。イノベーションを実現するには、Microsoftがデバイス&サービスカンパニーにならなくてはならないということは、もう理解してもらえるだろう。パートナーの方々もぜひ、その流れで移行していただきたい。われわれは最新のデバイス、ツール、サービスを用意しており、これを活用してもらいたい」などとした。
続いてバルマーCEOは、クラウド、ビッグデータ、ソーシャル、モビリティの4つの観点からビジネスニーズがあることを説明。クラウドについて、「将来、すべての企業がパブリッククラウドを活用するだろう。Microsoftはこの分野において、世界的な規模でインフラ投資をしており、低コスト、低遅延、広いバンド幅を提供する。もともとは、BingやOffice365をサポートするための投資が中心であったが、Windows Azureへの投資を増やし、このインフラをパートナーが活用できる」と述べ、Windows Azureへの注力具合を説明する。
また、」Microsoftは、パブリッククラウドでは最大級の投資を行っている企業であり、100万のサーバーを有している。63%のユーザー企業がパブリッククラウドと、プライベートクラウドを提供する企業を求めており、それを提供できるのはMicrosoftだけである」など述べた。
ビッグデータについては、「Microsoftは、ビッグデータを重要なテーマとして追求していく必要がある。Excel、SQL Serverをはじめとするさまざまなツールにより、最も使い勝手のいい環境を提供しているのがMicrosoftである」と説明。
ソーシャルについては、「社員と社員、人と人がつながるものとして欠かせないものであり、Microsoftは、Outlookにも、Yammerにおいても、SharePointやDynamicsでもソーシャルに対応している」とコメントする。
さらにモビリティでは、「この1年で大きな進化を遂げた領域であり、Windows 8.1や2in1型デバイス、Surface、Windows Phoneなどのすばらしいデバイスを投入している」などと語った。
Surfaceがビジネスユーザーへ価値を提供できる
バルマーCEOに続いて、Windows部門のCFO兼CMOであるTami Reller(タミ・レラー)氏が、Windowsを中心としたパートナー戦略について説明。そのなかで、Office 365で展開しているOpenプログラムに関して、Exchange Online、エンタープライズ、ガバメントを含めること、新たに1億ドルのパートナー向けインセンティブを追加することを発表した。
Surfaceに関しては、「タブレットは、20%のユーザーがビジネスで使用しているというが、その環境を変えていくのがSurfaceである。Surfaceは、ビジネス用途に適したもの。ビジネス用途で利用できるOfficeやタッチアプリケーションがあり、Windows 8.1によって、さらに進化し、管理性やセキュリティも強化される。Surfaceをみると、Microsoftのデバイス&サービス戦略が実現されているのがわかるだろう」などとした。
だが、その一方で、「Windowsは、Microsoftの戦略の中心に位置づけることに変わりはない。Windows 8タブレットはビジネスに最適化したものである」とし、Windows PhoneのNOKIA 925やタブレットのAcer ICONIA W3といったサードパーティー製品を利用して、Windows 8.1のデモンストレーションを実施した。
「Windows 8.1は、多くのユーザーのフィードバックをもとに、約900の改善を行い、約5000のAPIを追加している」とし、Windows 8.1によるソフトウェアキーボードの進化や検索機能の改善など、使い勝手の向上や、ミラーキャストをはじめとする数々の新機能のメリットなどについて説明している。
「ユーザーがどんなものが欲しいのか、どんな使い方をしているのかといったことをベースにして改善を加えたもの。ラピッド・リリースを実現している。今年末までにWindows 8ユーザーに対して、Windows Storeを通じて無償で提供する。自信をもって新たな価値を提供できるものである」(Reller氏)。
さらにをOEMベンダー向けには、Windows 8.1が8月末に提供することを明らかにした。これにより、Windows 8.1を搭載したデバイスの生産が開始されることになる。
Windows 8.1については、パートナー向けに公の場でデモンストレーションを行うのは今回が初めてのものとなったが、デモンストレーションで紹介された内容は、6月にサンフランシスコで開催された開発者向けイベント「Build」で発表されたものに準じていた。
そのほか、壇上に用意したWindows 8を搭載した数々のデバイスを紹介し、「Windows陣営」と呼ばれるエコシステムによる強みを強調。日本のPCメーカーでは、ソニー、パナソニックの製品が仕様や開発の狙いなどについて説明された。また、会場で放映されたデルのビデオでは、AppleのiPadとDellのXPS 10とを比較し、iPadではメニュー画面でのピンチ操作ができないことやSDカードスロットがないこと、そして価格が599ドル(iPad)と299ドル(XPS 10)と大きな差があることなどを示し、会場から大きな拍手がわいた。
さらに、Reller氏は、Windows XPのEOS(エンド・オブ・サポート)についても触れ、「あと273日しか残っていない。Windows 8.1は、Windows XPから移行するいいチャンスである。そして、顧客の移行は、ビジネスパートナーにとって大きな商機になる。Microsoftでは移行に関するアクセラレートプログラムを継続していく」とした。
また、「TouchWins」という新たなパートナー向けプログラムを発表。Windows 8 Proを搭載したPCおよび、タブレットを販売するパートナーに対してインセンティブを提供するもので、Windows 8の販売を促進するものになる。
サーバー、ビジネスアプリケーション分野での次期製品群を紹介
続いて登壇した米Microsoft サーバー&ツールビジネスのSatya Nadellaプレジデントは、「Windows Azureは、フォーチュン500社のうちの半分の企業が採用。また全世界に、2万2000社以上のクラウドパートナーがあり、そのうち、クラウド専業パートナーは、2.4倍の速度で成長し、売上高が1.6倍にも達している」と切り出した。
さらに、新たにWindows 8に対応したDynamicsを今年秋に投入すること、Windows Azure Active Directoryにおいて、SaaS Managementのプレビュー版を提供することを発表。SaaS Management in Windows Azure Active Directoryは、Windows Intuneと組み合わせることで、他社のSaaSとの連携環境でも管理が可能になるとした。
また、新たなBIツールとして、Power BI for Office 365のプレビュー版を発表。発見、分析、バーチャライゼーション、コラボレーションなどの機能において、威力を発揮することを説明した。
Power BI for Office 365のデモンストレーションでは、1955年から2013年までの音楽ヒットチャートのデータを活用して、どんなアーティストの楽曲が人気があったのかを、年を追うごとにビジュアルで表示する様子を示した。
さらに、Visual Studio 2013のプレビュー版、Windows Azure対応のSQL Database Premiumのプレビュー版を発表。SQL Database Premium for Windows Azureは、最もミッションクリティカルなアプリケーションをAzureに搭載できるものになるなどとした。
そのほか、Azureによって実現するハイブリッドクラウドインフラストラクチャーにより、最も堅牢なクラウド基盤を作ることができること、SystemCenterとの組み合わせでAzureの性能を高めることができるとした。
パートナー向けの販促プログラムを拡大、「一緒に成長していきたい」
最後に米Microsoft ワールドワイドパートナーグループのJon Roskillコーポレートバイスプレジデントが登壇。「今日はさまざまなサービスをSurfaceの販売促進のためのデバイスプログラムを、9月末までにさらに広げていくことになる。また、Office365ではOpenプログラムの拡張に加えて、利用環境の拡大にあわせてSKUを超えてアップグレードできるようになる制度を新たに用意した。また、Microsoftは、クラウド、クラウド、クラウドと語り、クラウドビジネスで儲かることを目指してきたが、IDCの調査では、Microsoftのクラウドビジネスが、最もパートナーが儲かるものと位置づけられ、業界全体よりも2.4倍早く成長している。今後もパートナーとともに一緒に成長していきたい」と締めくくった。
約3時間20分の長時間にわたって行われた基調講演は、昨年のイベントに比べて、大型製品の発表はなかったが、同社が「デバイス&サービスカンパニー」へと進展していること、Azureをはじめとするクラウドサービスに対して投資を積極化し、パートナービジネスにおいてもその成果が上がっていることを強調するものになったといえよう。
なお、Microsoft Worldwide Partner Conference 2013では、同イベントとしては初めて展示会場が設けられ、Microsoftが最新のデバイスやサービス、ソフトウェアを展示したほか、HPやDell、Acer、富士通などのハードウェアメーカーやIntelなどが出展。さらに、ソリューションプロバイダー、ネットワークベンダーなどもブースを構えていた。
また、会期中、参加したパートナー企業を対象に、Windows RTを99ドル、Surface Proを399ドルで特別販売しており、会場には長蛇の列ができていた。