大河原克行のキーマンウォッチ

「答え」を起点にしてアナリティクスを導入すべき――、日本テラデータ・高橋倫二社長

 Teradataでは、「アナリティクスの購入をやめて、いまこそ『答え』に投資すべきだ」というメッセージを発信している。それは、あらゆる企業で導入が始まっているアナリティクスを、より正しく活用するための提案だと同社では語る。

 日本テラデータ株式会社の髙橋倫二社長は、「企業経営者には、『答え』に投資をしなければ、アナリティクスの力を最大限に生かすことができないことに気づいてほしい」と呼びかける。果たして「答え」への投資とはなにか。そして、それに向けて日本テラデータは、どう取り組もうとしているのか。同社の髙橋社長に聞いた。

日本テラデータ株式会社の髙橋倫二社長

「いまこそ『答え』に投資すべき」とはどういう意味か?

――テラデータでは、「Stop Buying "Analytics" It's Time To Invest In Answers.」というメッセージを発信しています。いまこそ、「答え」に投資すべきとする、このメッセージには、どんな意味があるのですか。

 いまや、あらゆる業界において、データを使って仕事をすることが日常的になってきています。自動車業界では、故障や事故を避けるためにデータを活用し、製造業の現場では、データを活用して生産性を高めるといったことが進められています。これにあわせて、アナリティクス市場は20兆円規模にまで拡大し、その勢いはさらに増しています。

 ただし調査によると、企業の意思決定者の74%が「アナリティクス技術は複雑すぎる」と回答しており、従業員の79%は「仕事の効率向上に必要となるデータにアクセスができていない」と回答しています。

 私自身、日本の企業の経営トップと話しをしてみると、問題はさらに根深いと感じざるを得ません。例えば、経営トップは、自らが意思決定をする際に必要となるデータとはどんなものであるのか、ということを理解しているケースが少ないことを感じます。また生産現場では、工場長が、生産ラインの生産性をあげるために必要となる情報はなにか、ということがわからない実態もあります。

 さきほど触れたように、従業員の79%は、仕事の効率向上に必要となるデータにアクセスできていないとの結果がありますが、むしろ、「なににアクセスができていないのかがわからない」という状況にある企業が多いのでしょうか。

 なにがあれば、意思決定の判断に使えるのか、なにがあれば工場現場の生産性をあげることができるのかがわからない企業が、このなかの多くを占めているかもしれません。

 日本のお客さまの多くには、大量の生産管理のデータがあり、しかも、販売情報や顧客情報、与信管理のデータもある。さらには、部品に関するデータや、故障およびクレームに関するデータも持っています。

 しかし、これらの情報をどう分析したら、どう役に立つのかがわからずに、アナリティクス製品を入れているというケースが多すぎます。アナリティクス製品を入れるだけでは役に立ちませんし、答えに到達するまでに時間がかかります。結果として、労力や投資を無駄にしているともいえます。

 では、どうしたらいいか。

 それは、「答え」に投資をすべきであるということです。いま判断するのに必要な答えはなにか。その答えを導き出すために必要なデータはなにか。そのデータはどこにあるのか。そうした観点からデータをとらえれば、アナリティクスに投資するという無駄なことを抑え、答えを導き出すことに優先的に投資ができます。

 つまり、お客さま自身が「なにに投資すれば判断に役立つのか」ということを改めて考える必要があります。だからこそ、アナリティクスから投資をするのではなく、いまこそ、価値ある「答え」に投資をすべきであるということを訴求しているのです。

 答えに到達するまでに時間がかかるというのは、ビジネススピードの遅れや、判断の遅れにつながります。そこに、日本の経営者は気がつくべきです。いまは、どこにどんなデータがあるのだろうか、そこからどんな答えを導き出せるのだろうか、といったような観点でアナリティクスを導入していますが、そんな悠長な姿勢で、アナリティクスを導入するほどの余裕はありません。

「答え」に投資して改善を達成した事例

 グローバルでは、「答え」に投資した結果、改善できた事例として、すでにいくつかの成果が出ています。

 オーストラリアのカンタス航空(Qantas Airways)では、1時間あたり200万ポイントのデータを分析し、燃費を1.5%向上させ、燃料コストを削減することに成功しました。燃費は1.5%の向上と小さな数字に見えますが、これだけで年間50数億円の燃料コストの削減につながるのです。つまりカンタス航空にとっては、1.5%だけでも燃費を向上させれば、年間の燃料コストが大幅に削減できるということがわかっていた。それが「答え」です。

 その答えを出すためには、風や雨といった気象データや、エンジンのパフォーマンスデータ、顧客数や貨物数などのデータ、遅延状況などのデータを有機的に組み合わせて分析し、それによって、燃費を上げるための方策を導き出したわけです。

 エンジンのデータがあるから、顧客データがあるからといって、そこからのアプローチでは燃費の向上につなげることはできません。どんな答えを出したいか、ということが明確であるからこそ、データを活用できるわけです。

 米Verizon Wirelessも同様です。携帯電話会社では、解約率をいかに抑えるかがビジネスにおいて重要な要素になります。これが、Verizon Wirelessが求める「答え」です。そのために、1億5000万人の加入者のデータを分析し、解約する加入者にはどんな傾向があるのか、どんな要素が重なると解約率が高くなるのかといったことを導き出し、該当する加入者に対して、適切なキャンペーンを実施しました。その結果、業界平均で3~4%という解約率を1.2%まで低減しました。約200万人の解約を抑制することができたわけです。

 これは、金額換算すると売上高で2000億円程度の効果があったそうです。当然、新たな顧客を獲得するコストよりも、解約率を抑えるコストの方が低くて済みますから、利益率を高めることもできます。顧客の属性データをいくら分析しても、解約率の低減にはつながりません。求める「答え」が明確でなければ、成果は出ません。

 これらの企業の事例は、結果を出すために、アナリティクスを活用したことを示しています。

――これらの事例のように、「答え」を起点にしてアナリティクスを導入するために必要な要素はなんですか。

 事業部門とIT部門がもっと会話をすることだと思います。事業部門は「こんな答えが欲しい」ということをIT部門に話し、IT部門は「社内外のどこに必要なデータがあるのか」を把握して、それによって短期間に「答え」を導き出すことができます。

 しかし、この両者のコミュニケーションがないと、「答え」を起点にした会話ができず、結果として、どんなツールを使えばデータを分析することができるのかといった話が中心になり、「答え」への投資ではなく、アナリティクスに対する投資にとどまってしまいます。

 日本の経営者のなかには、IT部門に対して、クラウドをやってみてはどうか、AIをやってみてはどうか、あるいはアナリティクスを導入してみてはどうか、という言い方をするケースが見られますが、それは、あくまでも手段であり、大切なのは「答え」や「ゴール」であるという認識を持つことです。

業界や国の壁を越えて先進事例を参考にするように変わってきた

 ただしその一方で、私は最近、日本の経営者やIT部門、事業部門が、少しずつ変化をしてきている部分も感じています。

――日本の経営者などが変化している部分とはどこですか。

 これまでは、うちの会社がいる業界は特殊だとか、日本は特殊な商習慣があるからといったことを理由に、日本国内の同じ業界の事例しか参考にしない企業がほとんどでした。しかし、ここ数年、業界の壁や国の壁ということはまったく気にしないで、先進事例を参考にする例が増えてきました。

 例えば、金融機関が小売業界の事例を参考にするといった具合です。金融機関にとっても、一人ひとりのお客さまに対してどうアプローチしていくのかという観点では、小売業界の成功事例が活用でき、それに高い関心を寄せる金融機関が増えています。

 またグローバルの事例というと、欧米の先進事例ばかりが注目を集めていましたが、昨今ではアジアや中国での事例などにも関心が集まっています。こうした業界や国の枠を超えて先進事例を参考にするということへの意識変化は、むしろ、日本の企業の方が強いですね。

 2018年10月に米国ラスベガスで開催した「TERADATA ANALYTICS UNIVERSE 2018」では、世界中の企業のさまざまな事例が紹介されました。このイベントへの参加者の伸び率としては日本が最大でした。しかも、IT部門より事業部門の参加者が多かったですね。なかには、事業部門の方々だけが参加するというお客さまもいました。参加費や渡航費を払ってまで、このイベントに参加したいという日本のお客さまが増えており、それだけ、海外の事例に興味を持っていることの証だといえます。

――ビッグデータやアナリティクスに注目が集まるなか、いま、日本の経営者が気をつけておかなくてはならない点はなんですか。

 経営者は、毎日、さまざまな判断を求められています。その際に、情報に基づいた判断が行えているかどうかを再確認してもらいたいと思っています。なかには、勘と経験で判断する場合があるかもしれません。その時にも、その判断を裏付けることができるデータがあると自信につながります。

 経営者は、こういう情報があれば的確な判断ができるということを、IT部門や私たちに、もっと聞かせてほしい。まだまだ、そうしたことを私たちやIT部門に言わないままの経営者が多すぎます。ですから、結果として、このデータがあるから、そこから分析して、なにか答えを見つけ出そう、などという観点からのアナリティクスの導入が多くなるわけです。

 企業の経営者の多くは、情報分析が重要であるということを認識しています。そして、情報を経営に生かそうとしています。しかし、それがどんな情報であるのかを、もっと示してもらいたい。経営者は、どんなデータが、どこにあり、どう組み合わせればいいということは知らなくてもいいわけです。それは技術者がやることです。

 経営に必要なアナリティクスはなにかということを、自分の言葉で語って欲しいですね。そして、経営者が、「これはできないだろう」という先入観で、語ることを躊躇してしまうと、先に進められるものも、進められなくなる場合があります。できる、できないは別にして、経営者は、こんな情報が欲しいということを語ってくれればいいわけです。

 いまは、数値データやテキストデータからの分析だけでなく、画像データや音声データからも分析が可能です。しかも、オンプレミスだけでなく、クラウドを活用したアナリティクスも進化しています。技術の進歩によって、あらゆる情報を導き出せるようになっています。

 経営者や事業部門の方々は、ビジネスに集中することだけを考え、それに必要となる情報はなにか、ということだけを伝えてください。

――誰に伝えればいいですか(笑)

 まずは、社内のIT部門の方々に話をしてもらうのがいいでしょう。私たちのエンジニアがそれをサポートします。もし、社内にそうしたスキルを持った人がいなければ、ぜひ、私たちのエンジニアに声をかけてください(笑)。

 またその一方で、事例を見ていただくというのも手段のひとつです。そこに、経営者や事業部門にとっての課題解決のヒントがあるかもしれません。いま日本テラデータでは、1000種類以上の世界中の事例を集めています。これも参考にしてほしいと思っています。

テラデータは世界中の企業に対して価値がある「答え」を提供できる

――「答え」に対する投資に対して、テラデータは、どんな役割を果たすことができますか。

 テラデータは、世界中の企業に対して、価値がある「答え」を提供することができる企業です。それを、「パーベイシブ・データ・インテリジェンス」という言葉で表現し、私たちは、これが、今後のアナリティクスの新基準になると位置づけています。

 パーベイシブ・データ・インテリジェンスとは、経営者やCxOのほか、部門長、アナリティクス担当者、現場の従業員といったあらゆる人に対して、日常的なデータを含むあらゆるデータをもとに、判断するための答えをデータ分析から導き出して、仕事の効率を高め、リスクを低減できるようにするものです。

 それを具現化するためプラットフォームが、(2018年10月に発表した)「Teradata Vantage」です。Teradata Vantageは、あらゆるデータにアクセスし、いつでも活用することができるハイブリッドクラウドソフトウェアであり、これまで、テラデータが提供してきたさまざまなソフトウェアを有機的に統合するとともに、DockerやKubernetesといったコンテナ技術にも対応。オープンソースの活用によって対応できる領域を劇的に広げました。

 そして、IT部門だけでなく業務部門でも取り扱うことができます。Teradata Vantageは、私たちから見ればソリューションという位置づけですが、お客さまから見れば手段となるソフトウェアです。

 クラウドかオンプレミスかという議論は技術的には大切な議論ですが、アナリティクスという本質から見れば、大切なのは判断のできる情報を出すことであり、データがどこにあろうが、どんな環境であろうが、それは問題ではありません。Teradata Vantageは、そうした考え方に基づいたものです。

 テラデータでは2017年に、Teradata Everywhereを発表しました。Teradata Everywhereでは、お客さまがオンプレミスだけでなく、パブリッククラウドやプライベートクラウド、ハイブリッドクラウドなど、さまざまな環境を行ったり来たりする際にも、買いなおす必要がないライセンス体系としています。

 業界初となるソフトウェアバンドルやポータビリティライセンス、サブスクリプションベースの価格設定を提供し、Analytics as a Serviceによって、少額な先行投資額で導入でき、必要に応じて拡張できます。選択肢と柔軟性、多様なデプロイメントオプションを提供するこの仕組みが、Teradata Vantageを支えることになります。

 さらに、従来はThink Big Analyticsと呼んでいたコンサルティングサービスを、Teradata Consultingへ名称変更しました。医療、電機、自動車などの業界の知識をベースに、Teradata Vantageの導入をサポートすることができます。

 「答え」につなげるにはどういう分析をすればいいのかということを、業種別知識をもとにして提案する一方、それを実現するためのテクノロジーの実装を支援します。ロードマップの策定から、アーキテクチャの設計、導入、運用までを担う組織であり、全世界5000人以上のエキスパートたちがひとつのチームとなって、お客さまのビジネスにとって、成果を生むための支援を行うことになります。

 ここでは、テラデータが提唱する「RACE(Rapid Analytic Consulting Engagement)」というアジャイルな手法に基づいて、6週間前後でエンジニアリングを終了させることができます。アナリティクスは導入すればそれで終わり、というわけではありませんから、常に最適化を行い、運用・管理するための支援も、Teradata Consultingを通じて提供していくことになります。

 日本テラデータでは、日本のエンタープライズ企業に対して、深くサポートをすることを重視しています。技術チームがお客さまのいろいろな部門の方々に会って、欲しているニーズや課題、答えを聞いて、徹底的にサポートしていく体制を敷いています。これによって、お客さまの「答え」への投資を支援します。

Teradata Vantageについて説明する高橋社長(記者説明会より)

今のテラデータは「成長路線への回帰」フェーズにある

――Teradata Vantageに代表されるように、テラデータは、この数年で大きな変化を遂げています。いまは、どういうフェーズにあるといえるのでしょうか。

 ひとことでいえば、成長路線への回帰です。「成長を楽しめる会社」になりつつあります。新たなお客さまが増え、売り上げを伸ばし、さらに、日本からは多くのお客さまの先端事例を発信できるようになりました。

 2018年10月に開催した「TERADATA ANALYTICS UNIVERSE 2018」でも、日本から5社の事例が紹介されました。これは、日本から良い事例が生まれ、それによってお客さまも、日本テラデータも成長していることの裏づけでもあります。製品を中心としたビジネスからサービスを中心にしたビジネスに転換し、それが成長軌道に乗っているという状況にあります。

――そうした流れのなかで、テラデータは2018年にブランドロゴを変更し、さらに新たなブランドプロミスとして「RISE ABOVE」を打ち出しました。この狙いはなんでしょうか。

 これまでのテラデータは、お客さまに対するコミュットメントやスローガン、ストラテジーなどについて、明確に示してこなかったという反省があります。それを解決するという意味で、ブランドロゴを変更したり、ブランドプロミスやスローガンを打ち出したりしました。

 お客さまに対するコミットメントとして、私たちは知見と経験を持って、ほかの誰もが成しえないソリューションやサービスを提供すること、現状を打ち破って、新たな洞察を持ってイノベーションに挑戦すること、その結果として世の中を変えていくことを目指します。

 一方で、新たなロゴは小文字のteradataとし、最後のドットにはアクセントカラーとしてオレンジを使っています。新しいロゴを見慣れてくると、古いロゴが本当に古く感じてしまいますね(笑)。

新たなロゴ。すべて小文字のteradata.となった

「なぜテラデータが選ばれたのか?」を分析

――2017年9月に、日本テラデータの社長に就任してから、約1年半を経過しました。この間、どんなことに力を注いできましたか。

 実は、かなり細かく、日本テラデータのことを分析しました。私自身、もともとデータに基づいて判断をするタイプですし、また、先入観が生まれないように、引き継ぎというものは一切行わない主義ですので(笑)、私なりに、日本テラデータに関する過去10年ぐらいのデータを分析しました。

 新規のお客さまは、なぜテラデータを選んでくれたのか、2~3年利用していただいたが、その後テラデータとお付き合いがなくなってしまったお客さまは、なにが理由で離れてしまったのか。業種別にみると、どんな業種が得意で、どの業種が不得意で、その理由はなぜなのか。こういったことを分析しました。

 その結果わかったのは、現場の事業部門や経営トップと緊密に話をして、なにが課題であり、どんなニーズがあるのかということを理解することができている場合には、ずっと私たちのお客さまでいてくれるということでした。しかし、そこが手薄になってしまうと、私たちとの関係も薄くなってしまう。

 一方で日本テラデータの強みはエンジニアであり、お客さまからもその存在に対する信頼が厚いことがわかりました。そして、日本テラデータが提供しているグローバルの事例に対する関心が高いということも、特徴のひとつです。ですから、事例をお客さまにいかにうまくお伝えするかということも、重要な要素となります。

――事例の豊富さは強みになりますか?

 私は、他社との大きな差別化になると思っています。例えば、自動車産業を担当するチームは、年2回ほどドイツに行って、全世界の自動車産業の担当が集まる会合で情報を共有しています。

 いま、日本にない自動車産業の事例が約80あり、日本には約20の事例があります。これら約100件の事例を整理し、お客さまからお話があった際には、このなかから最適な事例を紹介できるようになっています。

 また、先にもお話したように、異なる業種の事例を参考にしたいといった要望がありますから、自動車産業以外の事例もご紹介できるような仕組みも構築しています。

 いま日本テラデータでは、金融、生保、損保、自動車、eコマース、通信といった領域に力を入れていますが、これらの「業種別事例」といった切り口に加えて、「売上向上に貢献した事例」「ITコスト削減に貢献した事例」「オペレーション品質に向上した事例」というような、業種を超えた切り口でもご紹介できます。

 さらに現在、グローバルでも「設備資産の最適化」「カスタマエクスペリエンスの向上」「オペレーションの高度化」「リスク軽減」といったように、6つのカテゴリーで事例を見ることができます。

 お客さまの関心事の上位は、ここ5年ほど、変わっていません。具体的には、売上向上、顧客満足度向上、ITコストの削減、運用コストの削減、セキュリティの向上といったものです。裏を返せば、その観点で、事例が提示できなくては、お客さまには響かないということになります。1000件以上の事例を通して、こうした課題に対する解決提案ができるというのは、日本テラデータの強みのひとつだといえます。

強みを生かすために取り組んできたこと

――日本テラデータの強みを生かすために、どんなことに取り組んできましたか。

 ひとつは全体のスキルアップです。私は、日本テラデータの営業部門の社員であるならば、お客さまのもとに出向いて、話の上辺だけを聞いて、「あとは技術者を連れてきます」という程度の技術スキルではいけないと思っています。

 営業部門といえども、技術的に突っ込んだところまで話ができなくてはいけない。お客さまには、こういうニーズがあるということを具体的にしてから、技術者を連れていくことが大切であり、それに向けたスキルアップを進めています。技術を理解し、コンサルティングのスキルも持つべきだと思っています。そうしなければ、お客さまからの信頼は得られません。

 社内では、営業部門向けの技術研修も積極的に行っていますし、さらに、私は、社員から、すべてのお客さまの状況を聞いています。そこで、営業部門が、お客さまのニーズをしっかりととらえ、それに応えることができているのかどうかを確認します。細かい部分にまで踏み込みますし、すべてメモに取ってありますから、できていないことにも厳しく突っ込みます。営業部門の社員にとってはかなりキツイと思いますよ(笑)。

 しかし、そうした取り組みを地道に行っていくことが、お客さまの信頼を勝ち取ることにつながるのです。

――これは、髙橋社長の経験が背景にあるのでしょうか。

 そうですね。私の社会人のスタートは日本IBMです。そこで、最初の5年間は、システムエンジニア(SE)の仕事をしました。その間、約500本のプログラムを書きましたし、その後はプロジェクトマネージャーとして、新たなシステムの提案や仕様策定からサービスインまでを何度も担当しました。

 こうした経験を経て、営業部門に異動しました。そのときに、SEだった経験が営業職ですごく生きることを実感しました。お客さまと突っ込んだところまで話ができ、SEを連れてこなくても提案書を書いて、契約までできる。

 技術を知っている営業担当者は、そうでない営業担当者と比べて、お客さまからの信頼感がまったく違うのです。そして、常に、お客さまと話をしているわけですから、適切な提案ができるわけです。

 そうした経験からも、私たちのような企業の営業は、しっかりとした技術スキルを持っていないといけないと思っています。ですから、社内の営業部門にも、口を酸っぱくして技術を学ぶことの大切さを訴えていますし、「社長よりも技術を知らないようじゃ駄目だ」とはっぱをかけていますよ(笑)。

――いま、日本テラデータの課題はなんだと感じていますか。

 売り上げをさらに拡大したいと考えていますが、そのための人員が少ないという点です(笑)。お話したように、1人の営業担当者が100社、200社担当するのではなく、1社のお客さまに深く入っていくスタイルになりますし、技術スキルや業界知識を持った社員が求められます。結果として、日本テラデータが求めるスキルを持った社員が増えないと、売り上げが拡大しないということになります。

 毎年、新入社員を十数人採用し、技術者を育成していますし、データ分析や業界知識に詳しい人材を中心に、中途採用も積極化しています。

――売り上げの成長曲線はどんな形で描いていますか。

 できれば、売上高を2倍、3倍にしていきたいですね。認知度を高めるという意味でも、売上高はまだ大きくしていく必要がありますし、米本社に対する日本法人のプレゼンスを高めるという意味でも同様です。日本からの要求をもっと反映できる体制にしたいと思っています。実は、この1年半で売上高も拡大していますし、日本からの要求もさまざまな形で反映してもらえるようになりました。

 私自身、過去のやり方にとらわれずに、正しいと思ったことをやっています。社員から見ると、まったく違うことを始めたと見る人があったり、逆に新鮮に感じたりといったことがあるかもしれません。

 ただ、結果として数字が上がったということは、社員の自信にもつながっています。「ハイパフォーマンスカルチャー」という言い方がありますが、社内で共有する言葉としては、これは大切なものだといえます。今後、日本に対する投資も拡大していくことになるでしょう。

 Teradata VantageやTeradata Consultingといった新たな製品やサービスがそらい、さらに、日本テラデータにおいても、営業、技術、コンサルティングの体制が整いはじめました。2019年は、日本テラデータにとって、飛躍の1年になります。飛躍というからには、市場全体が成長しているアナリティクス分野において、それを上回る成長を遂げる必要があります。

 ただ、数字は結果です。大切なのは、テラデータを導入していただいているお客さまに満足していだたけるかどうかということです。顧客満足度をきちっと高めることを重視したいですね。そして、日本から、多くの事例を世界に発信していきたいと思っています。

 仕事ですから、ときには厳しいこともありますが、私は、ハイパフォーマンスを楽しむカルチャーを社内に醸成することを重視したい、と思っています。私自身、仕事は楽しまなくてはいけないと思っています(笑)。過去30年間そう思ってきましたし、いまもそうです。そうした意識で日本テラデータの社員と一緒に仕事をし、企業を成長させていきたいですね。