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アナリティクスではなく“答え”を提供するプラットフォームに――、日本テラデータ「Teradata Vantage」の国内提供開始

 日本テラデータ株式会社は7日、統合アナリティクスプラットフォーム「Teradata Vantage」の国内提供開始を発表した。10月に米国ラスベガスで開催された「Teradata Analytics Universe」にて発表されたもので、既存の「Teradata Database」「Teradata Aster」などを吸収/統合した、同社の大胆なリブランディングを象徴する新たなフラグシップ製品となる。

 日本テラデータ 代表取締役社長 高橋倫二氏は「Teradata Vantageは世界中の企業にアナリティクスではなく価値ある“答え”を、いつでもどこでも提供することに注力したプラットフォーム。これまで培ってきたアナリティクス企業としての知見と経験を生かし、現在は不可能といわれているさまざまな社会的課題をデータの力で解決できるよう、新しくなったTeradataポートフォリオでもって世の中に貢献していきたい」と“新生テラデータ”の意気込みを語る。

日本テラデータ 代表取締役社長 高橋倫二氏

Teradata Vantageとは?

 Teradata Vantageは大きく以下の4つのパートで構成されている。

・データストレージ(永続的データストア)
・アナリティクスエンジン
・アナリティクス言語(インターフェイス)
・アナリティクスツール

 データストレージはオンプレミスの永続的データストアのほか、パブリッククラウドのオブジェクトストアにも接続可能となっている。

 Teradata Vantageそのものは個別ストレージをもたず、各データソースとの接続はSQLベースのコネクタ「QueryGrid」を通じて行われる。QueryGridはリモート(データソース)でプロセスを実行する「プッシュダウン処理」をサポートしているため、各データソースで処理されてからTeradata Vantageのアナリティクスエンジンに渡されることになる。このため、データの重複や移動が最小限で済む設計となっている。

Teradata Vantageは各種データソースとの接続に、同社の既存技術である「QueryGrid」をコネクタとして利用し、データソースでのプッシュダウン処理とSQLベースのデータへの変換を実現している

 Teradata Vantageのコアとなるアナリティクスエンジンは

・SQLエンジン
・マシンラーニングエンジン
・グラフエンジン

の3つのタイプが用意されており、データタイプやアナリティクスの内容に応じて自動で適切なエンジンに処理が振り分けられる。

Teradata Vantageの構成。コアとなるのは3つのタイプが用意されているアナリティクスエンジンとなる

 SQLエンジンには、最新機能「4D Analytics」を含む「Teradata Database」の機能に加えて、従来の「Teradata Aster」の一部機能(パス&パターンやセッショナイズなど)も提供される。

SQLエンジンには従来のTeradata Databaseの機能に加え、Asterの一部機能も含まれるので、SQLクエリでは物足りなかったビジネスユーザーやデータアナリストにも適している

 またマシンラーニングエンジンおよびグラフエンジンには、Asterの機能がすべて含まれているほか、多構造化データを処理するための180種類以上の事前構築済み分析関数が用意されており、ビジネス上のさまざまな課題(顧客の解約、不正検出、マーケティング最適化、インフルエンサー分析など)に迅速に対応することが可能だ。

 なお、Teradata DatabaseおよびAsterは、Teradata Vantageのリリースに伴い、単体での新規提供は終了となる(既存ユーザーのサポートは継続)。

マシンラーニングエンジンおよびグラフエンジンには旧Asterの機能がそのまま引き継がれる。180以上の事前定義済み関数も提供

 サポート言語は現時点(2018年11月)ではSQL、Python、Rとなっており、これらに関してはODBCドライバや専用パッケージがそれぞれ提供される。

 アナリティクスツールに関しては、現時点ではAppCenter、RStudio、Jupyterがサポート済みで、Jupyter用には拡張機能も提供される。

高い効果をすでに実証

 構成を見ればわかるように、Teradata Vantageはデータの移動やコピーをすることなく、ユーザーが使い慣れたツールやインターフェイスからデータソースに直接アクセスし、適切なエンジンで高速な処理を可能にしている点が大きな特徴となっている。

 Teradata Databaseはもともと、その超高速性から金融や通信、小売りなどの大企業に導入されてきたが、その高速性はもちろんのこと、複雑な処理を容易に実行するAsterや、多様なデータソースをデータファブリックとして構築するQueryGridなどもそのまま機能としてVantageに引き継がれている。

 Teradata Vantageのアーリーアダプタとして、すでにVerizon WirelessがSQLノード×6、マシンラーニングノード×8の環境でPoCを実施しており

・データの重複を最小化
・正解率64%達成
・100万件のモデルトレーニングが20分未満
・2億件のモデルスコアリングが30分未満
・アジャイルなモデルデリバリ

といった高い効果を得られたことを発表している。

 特にデータの重複を抑えることは、データのサイロ化、ひいてはアナリティクスのサイロ化を防ぐことに直結しており、「ほかのツールでは見たことがないパフォーマンス」とVerizon Wirelessが高く評価したというのもうなずける。

 今後のロードマップでは、パフォーマンスや可用性の向上、ユーザーエクスペリエンスの改善のほかに、2019年3月にはパブリッククラウド(AWS/Azure)での“Vantage-as-a-Service”の提供、2019年9月にはTensorFlow対応(GPUを利用したディープラーニング)を予定している。

 また、近い将来には、

・Amazon S3およびAzure Blobのネイティブサポート
・分析エンジンとしてSparkおよびTensorFlowのネイティブサポート
・サポートインターフェイスにJava、Scalaを追加
・サポートツールにSAS、KNIME、Dataikuを追加

といった拡張も行われる予定だ。

近い将来には、オブジェクトストアのネイティブサポート、SparkやTensorFlowのネイティブサポート、インターフェイスやツールの追加などが予定されている

Pervasive Data Intelligenceを具現化する基盤

 冒頭でも触れたように、Teradataは10月のカンファレンスで大幅なリブランディングを発表した。

 コーポレートロゴ、コーポレートミッション、コーポレートプロミスの変更に加え、アナリティクスの新基準として「Pervasive Data Intelligence」を打ち出し、ユーザーが求める“答え”を瞬時に見つけ出すことにフォーカスしていくと宣言している。

Teradataを象徴する新コンセプト「Pervasive Data Intelligence」

 このリブランディングに伴い、Teradata DatabaseやAsterといった既存の主力製品の単体提供を終了し、それらの機能をすべてTeradata Vantageに統合するという、製品戦略的にはかなり大胆な方針転換を実施している。

 高橋社長はカンファレンスで発表された、カンタス航空やシーメンスなどいくつかのグローバル企業によるユーザー事例を挙げながら「これらの顧客の成功はPervasiveだからこそ実現できたストーリー」と強調する。

 Teradataの新たな概念として提唱されたPervasive Data Intelligenceだが、もともとTeradataに根付いていた思想をラッピングし、さらにエンハンスしたセグメントというほうが正解だろう。

 そしてTerada VantageはPervasive Data Intelligenceを具現化するアナリティクスプラットフォームとしてグローバルで展開されることになる。

 “Pervasive”には「広く普及/浸透した」、そして“Vantage”は「見晴らしの良い場所」という意味がそれぞれ含まれている。データインテリジェンスがすべての企業や人々にとってあたりまえの存在となり、それぞれが求める課題解決の答えを瞬時に見つけ出すには、全体を俯瞰(ふかん)する視点と環境が必要であり、Teradataはそれを提供していく――。

 Teradataが新フラグシップに込めた戦略が拡大するアナリティクス市場でどう評価されるのか、今後の展開に注目したい。