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米海軍が乗組員にクラウドを提供 ネットワークは民間衛星コンステレーション

 米海軍で、航行中の艦艇の乗組員が陸上と同じようにクラウドサービスを利用することが可能になった。軍事作戦のためではなく、家族との電話など個人的な利用を許すものだ。福祉の一環と言えるが、その通信には民間サービスを利用している。こんなところにも民営化が浸透している。

海軍艦艇の乗組員に高速インターネット接続環境

 今年6月、連邦政府機関や職員関連のニュースに特化したFederal News Networkが、海上を航行中の米海軍艦艇が初めてクラウドサービスに接続されたと伝えた。空母「USS Abraham Lincoln」で、「Flank Speed Edge」を利用して、乗組員が自宅への電話や、部品の発注を行ったという。Flank Speed EdgeはMicrosoft 365をベースとする海軍のコラボレーション/生産性スイートだ。

 プロジェクトに取り組んだLincolnの戦闘システム士官、Kevin White中佐は「1日あたり3〜5テラバイトのデータを転送できる。またソフトウェア定義ネットワークによってデータの使用方法を正確に調整することも可能だ」と説明している。

 この米海軍初のクラウド接続のニュースから2カ月後、海軍情報戦システム司令部(NAVWAR)が、「Sailor Edge Afloat and Ashore (SEA2)」(海上と陸上の水兵エッジ)というプロジェクトを発表した。

 SEA2は、海軍艦艇の乗組員に高速インターネット接続環境を提供するものだ。プレスリリースは、「新システムは信頼性の高い接続を提供し、士気を高め、仕事の生産性を向上させる」と意義を強調している。Abraham Lincolnの事例は先行導入だったことや、2月の「スーパーボウル」を乗組員らが大画面のライブストリーミングで観戦したことなども紹介している。

 接続するネットワークは、SpaceXのStarlinkと、英国のEutelsat OneWebが利用されたという。ともに民間企業が低軌道衛星で構成する「衛星コンステレーション」ネットワークのサービスだ。NAVWARは「海軍全艦艇への導入も目前」と説明している。