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米海軍が乗組員にクラウドを提供 ネットワークは民間衛星コンステレーション
2024年9月24日 11:20
民間衛星コンステレーションへの転換
NAVWARは、プレスリリースで「SEA2以前、艦船の通信は過去30年にわたり国防総省の衛星に依存していた」と説明している。防衛・安全保障関連メディアのWar Zoneなどが伝えている。また、「静止軌道上に約3万6000km離れて配置された6基の衛星は、地球上の半球に相当する範囲をカバーしていたため、信号が衛星に到達してから最終目的地に到達するまでに時間がかかり、データ転送速度が遅かった」と述べている。
SEA2以前の衛星システムとは、「Milstar」だと考えられる。1994年から2003年にかけて配備されたシステムで、伝送速度は下り最大1.5Mbps程度とかなり遅い。一方、StarlinkはBusiness用で下り最大220Mbps(上りは最大25Mbpsの非対称)と高速だ。さらに Abraham Lincolnでは複数のアンテナを束ねて1Gbpsの目標速度を達成したという。
米国防総省は1960年代に、DSCS(Defense Satellite Communications System)と呼ぶ軍事用通信衛星システムを導入。その後、何度かの世代更新をしながら、通信インフラとして運用している。いずれも高高度(約3万6000キロ)の静止(GEO)衛星数基から十数基で構成され、広範囲の通信をカバーする。Milstarもその一つだ。
だが2023年に、低軌道(LEO、高度500~2000キロ)の「衛星コンステレーション」へと大きく方針転換した。宇宙軍傘下のSDA(宇宙開発庁)が推進する「PWSA」(Proliferated Warfighter Space Architecture、旧NDSA)というプロジェクトで、最初の衛星は2023年4月に10基が打ち上げられた。今年分もこの秋から打ち上げの予定だ。
衛星コンステレーションでは、低軌道に数十基から数千基の非静止小型衛星を打ち上げる。高速で移動する衛星間を光通信で接続して、大きな安定したメッシュネットワークを構築する仕組みだ。静止衛星に比べて地上からの距離が近いため、遅延時間が短く、高速大容量の通信を提供できる。
その中でStarlinkは国家を含めても世界トップであり、先ごろ7000基目の衛星を打ち上げたところだ。国連宇宙部(UNOOSA)のまとめでは、軌道上にある人工衛星は現在約1万3600基。2位のEutelsat OneWebは「600基以上」なので、Starlinkの突出ぶりが分かる。