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宇宙の大規模データセンター EUが「実現可能」と結論

 EU(欧州連合)は宇宙空間の大規模データセンターを「実現可能」とする報告書を発表した。技術的、経済的、環境的な各側面から検討して結論付けたものだ。データセンターの設置場所は海底、地下、寒冷地などが研究されているが、宇宙も選択肢の一つとなっている。

宇宙データセンターの実現可能性を調査

 発表したのは、ASCEND(Advanced Space Cloud for European Net zero emission and Data sovereignty)というプロジェクトだ。EUの研究イノベーションプログラム「Horizon Europe」の一環で、200万ユーロ(約3億5000万円)の資金を得て2023年1月から16カ月間にわたって実現可能性調査(フィジビリティ・スタディ)を行ってきた。

 調査は、ニーズとコンテクストの分析、システムアーキテクチャ、欧州の宇宙データセンターの定義、実現可能性の評価――と4つのフェイズに分かれており、欧州最大の宇宙開発企業Thales Alenia Spaceが主導した。宇宙空間への大規模なデータセンターの展開が可能かを調べたものだ。

 そもそもなぜ宇宙なのだろう。宇宙環境では、太陽光を利用した再生エネルギーが潤沢だ。その一方で、気温は低いため冷却コストを抑えられるという。このため、地球上にデータセンターを構築するよりも環境とエネルギー消費の面でメリットがあると期待されているのだ。

 EUは、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという「欧州グリーンディール」を掲げている。ASCENDのWebサイトでは、「環境の目標とデータセンターの機能的・運用的ニーズを結び付け、複数の専門分野にまたがるシステム工学的アプローチを通じて、欧州の最適な宇宙クラウドシステムアーキテクチャを設計する」と狙いを説明している。

 調査について、プロジェクトマネージャーのDamien Dumestier氏は、「とても勇気づけられる結果が得られた」とCNBCにコメントしている。

 このASCENDには、Thalesのほか、航空宇宙のArianeGroupやAirbus、通信事業者のOrangeなど欧州企業、そしてHewlett Packard Enterprise(HPE)を含む12社が参加している。