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大幅値下げから無料まで 激化する中国のLLM価格競争

政府が“習近平チャットボット”構築

 中国のLLMは爆安で提供されているが、欧米や日本のアプリケーションにそのまま利用できるかというと疑問がある。中国のAI産業は補助金など国の強力な後押しとともに、厳格な統制がある。

 国家インターネット情報弁公室(国家互連網信息弁公室=CAC)が2023年8月に「生成AIサービス管理暫定弁法」を導入した。「社会主義の革新的価値観を堅持」し、国家の安全・利益、イメージを損なうような内容を生成してはならないとしている。

 生成AIプロバイダーはセキュリティ評価を受け、アルゴリズムを登録することを義務付けられている。つまり、中国の価値観に合わないものは最初から排除される。特に、コンシューマーが利用できるサービス・製品は厳しくチェックされる。

 実際、日本からもアクセスできる中国DeepSeekのチャットボットにアクセスして質問すると、普通の質問には回答するが、「習近平とは誰ですか」ときいたとたんに、「メッセージは、コンテンツのセキュリティの理由で取り下げられました」と表示が出て打ち切られた。特に危険な質問とは思えないのだが、われわれが考えるのとは異なるふるまいをとるようだ。

 同時に政府も生成AIを率先して活用する考えで、CACは5月20日に習近平国家主席の思想・哲学を学習したチャットボットを発表した。米メディアは“Chat Xi PT”と呼んでいるが、これは中国側がつけた名前ではない。

 報じたFinacial Timesによると、習チャットボットは、習氏の著書や公文書で学習しており、質問への回答、レポート作成、情報要約、英中翻訳などができる。CACは当局内で使用しているが、いずれ、より広い用途でリリースされる可能性があるという。

 「中国当局が言論の自由を厳しく規制する一方で、AIの開発を促進し、Open AIのChatGPTのようなライバルとなるものを生み出すというバランスを取るために行っている」(Finacial Times)という評価だ。

 中国と米国や日本がAIに見ている未来は、かなり違うものかもしれない。