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著作権侵害とプライバシー侵害 ChatGPTの訓練データめぐり2訴訟

法律の未知の領域の議論に

 2つの訴訟がクラスアクションとして成立した場合、審理に入るが、展望はどうなのだろう。

 「大きな利益をあげるツールの訓練のため、ネット上で公開されているデータを利用することの合法性ははっきりしていない」(Washington Post)。「法律の未知の領域に分け入るもの」(Rolling Stone)など、メディアは専門家の見解を挙げながら解説している。

 著作権侵害訴訟では、OpenAIは米国著作権法の「フェアユース(公正使用)」を前面に反論する可能性が高い。だが、まだ判例がなく、裁判所がどのように判断するかは不透明だ。

 AIの訓練に関しては今年1月、画像生成AIのStability AI、Midjourney、DeviantArtの3社を相手取ったクラスアクションが1月に提起(こちらも弁護士はJoseph Saveri Law Firm)されているが、判断が下るのはかなり先となる。

 一方、原告側から言えば、「著作物が侵害されたこと」と「著作物とチャットボットが生成した出力との間に実質的な類似性」を証明しなければならず、これらが難関になるとみられている。

 またプライバシー侵害訴訟もこれまでにない論争になりそうだ。

 AI向け訓練データのプライバシー侵害が裁判になった例はある。顔認識ソフトのClearview AIが2020年、ソーシャルメディアなどから集めた世界最大級の顔画像データベースをめぐって、米国自由人権協会(ACLU)から訴えられた。

 この訴訟では、昨年5月、両者の間で和解が成立して、Clearview AIは企業向けのデータ販売を停止することに同意した。ただし、データを利用した製品の販売は継続している。

 もともと連邦法では規定のない領域で、訴訟自体はイリノイ州の生体情報プライバシー法(BIPA)に基づくため、今回との比較は難しい。

 そして個人情報がどのようにネット上で公開されたのかもポイントになる。

 Gunderson Dettmerの知財弁護士Katherine Gardner氏は、一般的にSNSなどのサイトへ投稿する場合、その利用については広範なライセンスを与えることになるとWashington Postに解説。「一般のエンドユーザーが、訓練のため自身のデータを使用されることに対して、何らかの支払いや補償を受ける権利があると主張するのは非常に難しいだろう」とコメントしている。

 AI開発自体の賛否の議論が巻き起こっており、世界的に規制が検討されている。2つの訴訟は、こうした動きとあわせて目が離せない。