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「二度と開発停止の混乱は起こさない」 その後のRocky Linux

「CentOSで起こったことをRockyでは起こさせない」

 CentOSの歴史は、Red Hatが2003年に「Red Hat Enterprise Linux」というブランド名と有償サブスクリプションモデルを採用した際、他のバージョンが打ち切りになったことから始まる。

 行き場を失ったコミュニティのニーズに応え、Kertzer氏やRocky McGoughd氏(Rocky Linuxの名前の元になった)らは、当時進めていた「Caos Linux」を、RHELのリビルドを土台とするCentOSに発展させた。名称は「Community Enterprise Operating System」からつけられたという。

 CentOSはその安定性から広く受け入れられ、Verizon、Disneyなどの大手にも採用された。

 一方で、(オープンソースプロジェクトの常だが)開発が追いつかないという問題が起こった。2009年には、管理者(3人目のオリジナル開発者、Lance Davis氏)の“失踪事件”で、一部開発者が開放性と透明性を求めて公開書簡を送る騒ぎもあった。そして最終的にCentOSプロジェクトはRed Hatの支援を受けることになった。これが2014年のことだ。

 結局、CentOSでも頓挫の歴史が繰り返されてしまったわけだが、Kurtzer氏によると今度のRocky Linuxには前と違う良い点があるという。

 Kurtzer氏はThe Registerの2021年7月のインタビューで、「CentOS 8は2021年末までサポートされるので、われわれには1年という時間があった」と述べている。そこでOS開発のためのインフラの構築を行い、一部を「distrobuild」(ディストリビューションビルダー)としてオープンソースにした。OSの構築には2カ月を要したが、「インフラよりも簡単」と述べている。

 だが、Kurtzer氏がより教訓を生かしたのは体制構築だ。Caos Linuxの開発母体は、「Caos Foundation」という非営利団体(「501(c)」:慈善団体などで課税免除される)の形をとったが、それでは「誠実さや善行は何も保証されていなかった」(Kurtzer氏)という。

 そこでRocky Linuxの開発母体RESFを公益法人として設立し、「チェック&バランス機能を持った組織」を作った。RESFでは、認証情報もチームごとに管理され、それぞれのチームがエンジニアリング、テスト、リリースなどを管理する。「もし私が、プロジェクトにとって良くない動きや、チームが同意しないことをしたら、彼らはすぐに名前を変え、インフラをフォークしたり移動したりできる」(Kurtzer氏)。これが「長期的に生存できる組織構造」だ。

 また、Kurtzer氏は「インフラの透明性、特にレプリケーションの透明性」を2つ目のチェック&バランスに挙げる。「もし、われわれが何らかの形で失敗しても、他のプロジェクトが後を拾えるようにしたい」とも言う。