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Microsoftがライセンス規約改訂 クラウドへのソフトウェア持ち込みを柔軟に

欧州の独禁調査対策

 欧州のクラウド企業の米大手クラウドへの危機感は強い。フランスのOVHcloud、ドイツのNextCloudなど欧州のクラウド事業者3社は2000年夏、EU競争法(独禁法)違反で、Microsoftを欧州委員会(EC)に訴えている。

 訴えの内容は2021年3月にWall Street Journalが報じて明らかになったが、「競合するクラウドサービスを利用する際、Microsoft製品のライセンスが割高になる」というものだった。Windowsを中心とするソフトウェア製品のライセンスがAzure以外のクラウドでは使いにくく、乗り換えを妨げていると主張している。

 現行のライセンスは2019年10月に導入されたものだ。Ars Technicaは、このライセンスについて「Microsoftのサービスを同社以外の“ハイパースケーラー”インフラで実行する際の価格が引き上げられた。Azureも値上げはされたが、多くの場合、割引で相殺された」と解説している。

 ライセンス変更は2019年10月に行われたが、最近まで気付かなかったユーザーも少なくないという。

 本件はECが訴えを受けて調査中と報じられており、Microsoftも真剣に受け止めたようだ。今年5月、Microsoftのプレジデント兼副会長のBrad Smith氏(90年代のMicrosoftの独禁法訴訟で法務担当として矢面に立ったのは有名)はEUポリシーブログで、「全ての苦情が妥当だとは思わないが、一部は妥当だ」として対応を約束した。

 合わせて、欧州向けに「European Cloud Principles」として「欧州のクラウドソリューションプロバイダーと提携し、支援する」など5つの約束を発表し、欧州のクラウド事業者がMicrosoftの製品を自社のクラウドインフラでホスティングできるようにすると発表した。

 今回のライセンス変更の発表は、これを受けて具体的な対応を明らかにしたものだ。「5月に発表した欧州のクラウド事業者を支援する新しいイニシアティブに続くもの」「変更は全世界に適用される」(Denzen氏)という。