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ウクライナ危機の中のIT企業 それぞれの選択

 ウクライナ情勢は戦火の拡大で収束が見通せない状況になっている。西側諸国とロシアの距離はどんどん遠のき、歩み寄る気配もみられない。そんな中でもウクライナの開発者たちはIT業界を支え続けている。また、両陣営の対立の中で、グローバル展開してきた米テクノロジー大手も、これまでにない対応をとるようになってきた。

ウクライナのIT開発者たち

 ウクライナは20万人の開発者を擁する欧州屈指のリモート開発の拠点だ。欧米からみると、時間帯がアジア諸国よりも便利で、英語を話す開発者が多いことが魅力となっている。このため近年、急速に成長してきた。

 Bloombergによると、ウクライナはアウトソーシング開発者数で東欧第1位、Unity3Dゲーム開発者およびC++エンジニアの数で世界第1位、JavaScript、ScalaおよびMagento開発者の数では第2位という。

 「Fortune 500」の2割がウクライナのITサービスを利用しており、Microsoft、Google、Samsung、Oracleなどもユーザーとなっている。日立の子会社GlobalLogicの開発拠点もウクライナにある。

 一部の企業が従業員を国外に避難させたと伝えられているが、開発者のほとんどは、とどまって仕事を続けているようだ。CNBCは、米国の発注元企業から現地の開発者の状況を取材。「多くの人は、昼間は防衛活動を支援し、夜は成果物を送りながら、雇用主のためにリモートワークを続けている」と伝えている。

 例えば、eスポーツのギャンブルプラットフォームを運営する「Pogbet」のフロントエンド開発責任者は、ポーランドに近い西部の都市リビウの郊外にある両親の家に避難した。夜は「プルリクエスト」(開発メンバーへのコードの検証依頼)を送信し続け、昼間はリビウに出て防衛活動に参加しているという。

 ロサンゼルスにいる同社のCEOは「ウクライナ人は出来が違う」と称賛する。