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垂直市場に向け攻勢 新CEOが示したAWSの戦略

「クラウドと無関係でいられる産業はない」

 Selipsky氏は基調講演で、IT支出に占めるクラウドの比率が15%に満たないことを挙げながら、「業界に特化したサービスが次のイノベーションの波を起こす」と述べている。その推進では、基盤サービスの上に抽象レイヤーを載せていくと説明する。産業界に使いやすいクラウドを提供するという戦略だ。

 AWSは、IaaS、PaaSでトップの座を維持しているが、業界向けクラウドは混戦でライバルが活発だ。「メインのライバルであるGoogleとMicrosoftは、Amazonよりも積極的に特定業界向けのクラウドサービスとプラットフォームを展開中」(GeekWire)という状況にある。

 2019年から2年間、AWSで開発者マーケティングのトップを務めた経験のあるMatt Asay氏は、re:Invent 直前のInfoWorldへの寄稿で、「(AWSは)業界向けに以前から取り組んでいるが、十分ではなかった」と述べている。

 そして、Selipsky氏が今年9月に開催されたイノベーションカンファレンスで、「使い勝手にしっかり取り組んでいく」と、述べたことを挙げ、「AWSを知っている人にとって、こうした率直さは珍しい」と評する。

 今年のre:Inventは、AWSが、多くの顧客が利用できる水平方向のソリューションから、業界に特化した垂直方向のソリューションに転換することを表明する場だったというのが、Asay氏の見立てだ。

 そう考えると、基調講演でのSelipsky氏の言葉は、顧客向けのアピールにとどまらず、自身の決意のようにも見えてくる。

 「クラウドは単なる新技術の革命ではなく、企業のビジネスを根本的に変える」「(クラウドと)無関係でいられる産業はなく、根本から破壊(ディスラプト)されない企業はない」