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急速に進化する中国チップ開発 支える米国資金

 中国のMoore Threads Technologyが、同国の企業として初めて「フル機能」のGPUソリューションを開発したと発表した。全て中国製の知的財産権をベースにしており、しかも、会社設立から、わずか10カ月での達成という。中国の半導体産業の勢いを示したものであるが、先行きには米中対立が影を落としている。

「同時実行スレッド数を2年ごとに2倍にする」と約束

 Moore Threads Technologyは米国でなじみがない中国のスタートアップだが、テクノロジーメディアの関心を引いた。TechRadarは11月27日付で、GPU分野の「ミステリアスな中国企業」と紹介。同社が第1世代のGPU製品をロールアウトしたこと、また第2ラウンドとして3億1300万ドルの資金調達を行ったことを伝えている。

 Moore Threadsの非常にシンプルなWebサイトによると、同社の設立は2020年10月。事業として、GPUチップおよび関連製品の開発・設計のほか、データセンター、エッジコンピューティング、ハイパフォーマンスPCやワークステーション向けプラットフォーム構築、そして中国のパートナーへの技術提供などを挙げている。

 同社の掲げるスローガンは「同時実行スレッド数を2年ごとに2倍にする」というものだ。もちろん、「半導体の集積率は18カ月で2倍になる」というムーアの法則からとった言葉で、社名の「ムーアのスレッド」にもなっている。

 “中国初のフル機能GPU”は11月25日付で発表された。同社は「さまざまなコンピューティングパワーを統合した標準的なGPUで、スーパーコンピューティング・プラットフォームを効果的に構築」でき、設立から300日足らずで開発に成功した、と説明。パートナー企業が運用する中国国産のCPUやプラットフォームにシームレスに統合することを目指すという。

 基盤技術、性能、製造プロセスなどの説明は全くなく、テクノロジーのレベルは不明だ。ただ、共同創業者でCTOのYubo Zhang氏の経歴が参考になりそうだ。

 LinkedInによると、Zhang氏は中国・浙江大学、香港浸会大学を経て、カリフォルニア大学デービス校でコンピューターサイエンスの博士号を取得。2014年にNVIDIAのシニアGPUアーキテクトとなり、トヨタも出資する自動運転スタートアップのPony.aiに2017年に移った後、昨年、Moore Threadsを起業している。

 また、CEOで社長のJams Zhang氏も、2006年からNVIDIAのバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー(中国)を務めていた。同社は元NVIDIAをコアメンバーに、Microsoft、Intel、AMD、ARMなどの人材が集まっているという。