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「GPT-3」をMicrosoftが独占? 開発元OpenAIへの批判も

カネのかかるGPT-3

 OpenAIは昨年3月に「上限付き利益会社」(capped-profit)に移行し、Microsoftは、その後OpenAIに10億ドルを出資した。今回の提携の組み合わせは意外ではないが、批判の声も出ている。

 まず、5年前のOpenAI設立を支援し、AI分野での発言も注目されるElon Musk氏。他のユーザーの「“独占的ライセンス”なら“Closed AI”に改称すべきだ」というツイートに対し、「オープンの対極にあるように見える。OpenAIはMicrosoftに取得された」と賛同のツイートを返した。

 Motherboard(VICEグループ)も、「機械学習が全ての人間にメリットとなるようにとうたっている」OpenAIが、Microsoftと独占的なライセンス契約を結んだ、と嫌味たっぷりだ。

 一方、OpenAIにも事情があったようだ。Tech Talksは、過去に掲載したGPT-3のビジネスモデルの分析記事を参照しながら、同社が経済的に逼迫した状況にあるのではないかと推測している。

 GPT-3は、無料で3カ月間試用できる「Explore」に加え、月間100ドルで200万単語トークンの「Create」、月間400ドルで1000万単語トークンの「Build」という価格構成になっている。

 Tech Talksの見積では、GPT-3のリサーチと最終モデルのトレーニングに要したコストは1000万ドル以上。モデルを動かすのに必要なクラウドコンピューティングの料金は月間数万ドル、モデルを維持するコストが年間数百万ドル、加えて顧客サポート、マーケティング、IT、セキュリティ、法務などのコストがかかる。

 「損益分岐までには、Buildで利益の出る顧客が最低で数十社必要だ。全てのコストを考えると、それでも足らない」と分析する。

 Tech Talksは「GPT-3の問題は、全く新しい種類の技術であること」だと解説。前例がなく、正しい市場を見出すことが難しい上に、新しい用途の開拓も求められているとする。

 あわせて、OpenAIは既にMicrosoftとの提携によって、純粋な学術研究ラボから営利企業との“ハイブリッド”になったことを改めて指摘。OpenAIの今後の課題は、人間レベルのAIを開発するという学術的・非営利の目標と、準オーナーとなったMicrosoftを満足させることのバランスだ、と締めくくっている。