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ますます進化するディープフェイク 生成されるコンテンツ

急増と悪用への懸念

 ディープフェイクに特化したオランダのサイバーセキュリティ企業Deep Trace Labsは、2020年6月現在、4万9081件のディープフェイクを用いた動画を検出したと報告している。半年前(2020年1月)の2万4263件の2倍以上で、指数関数的な増加だという。

 ターゲットとされている国別では、米国が半分で、次に英国(10.9%)が多い。だが、3位以降は韓国(9.6%)、インド(5%)、日本(4%)とアジア圏が増える傾向にあるという。

 このレポートを伝えたインドの日刊紙The Hinduは、今年2月のデリー首都圏議会の選挙で、ディープフェイク動画が大規模に拡散された例を挙げている。国政与党インド人民党(BJP)デリーブロックのトップのManoj Tiwari氏が政敵を攻撃し、自党への投票を呼びかける演説だった。この動画は、5800のWhatsAppグループを使って1500万人の有権者に送られた。

 ディープフェイクの本格的な登場は2017年、Redditに投稿されたポルノ動画とされている。わずか3年前のことだ。その勢いを専門家たちも憂慮し、注意を促している。

 マサチューセッツ工科大学のMIT Center for Advanced Virtualityは7月20日、「In Event of Moon Disaster」という7分間の動画を公開した。ディープフェイクへの認識を高めてもらうことを目的としたものだ。

 1969年のアポロ11号の月面着陸が失敗し、Neil Armstong船長とBuzz Aldrin飛行士が死亡したという内容だ。もちろん、事実とは異なるが、Nixon大統領(当時)が沈痛な面持ちで、ミッションの失敗を知らせる臨時放送は、おそろしくリアルだ。

 MITは選挙で悪用される危険性も指摘しているが、これが切羽詰まった状態との声もある。Obama政権時に国防省と中央情報局(CIA)で幹部を務めたJeremy Bash氏らは、政治専門紙のThe Hillへの寄稿で、今年11月の米大統領選での悪用に警戒すべきたと主張している。

 Bash氏は、7月15日に明らかになったObama前大統領やBill Gates氏らのTwitterアカウントの乗っ取りを、「大規模なディープフェイク」を狙った動きと推測。超党派の米選挙支援委員会(EAC)を強化して、選挙システムに対するサイバー攻撃を防ぐために全力を尽くすべきだと提言している。