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欧州のクラウドイニシアチブ正式発表 「GAIA-X」2021年にスタートへ

米国の「CLOUD Act」への懸念

 2019年10月のWall Street Journalは、GAIA-Xを「米国のテック大手に対抗する欧州クラウドプロジェクト」と位置付けた。「世界のクラウド市場を独占する米国の技術大手と地元のプロバイダが競合できるよう、欧州のクラウドインフラを開発する政府支援のプロジェクトをドイツとフランスが発表」と伝えている。

 「米国の技術大手」とは言うまでもなく、AWSやMicrosoft Azureなどだ。だが、ドイツとフランスの懸念はそれだけではない。米国で2018年に成立した法律「CLOUD Act」の存在もある。

 CLOUD Actでは、米国に拠点を置く技術企業は米国政府からの要請があればサーバー上にあるデータを開示しなければならない。サーバーが米国外にあっても、事業者が米国であれば同じ扱いとなる。

 「自分たちのデータが実際のところどのぐらい安全なのか、知ることはできない」とドイツのロボット企業FestoのCTOはWall Street Journalにコメントしている。

 EUはGDPR(EU一般データ保護法)がようやく施行に入ったところだ。CLOUD ActはGDPRにどのような影響を与えるのだろう。EuroActiveによると、欧州議会の質問を受けて欧州データ保護委員会が作成した報告書では「(CLOUD Actにより)米国の権限が領土外まで及ぶ」「2つの法が衝突する可能性がある」としている。

 もちろん、AWSやAzureにデータが集まり、その上でAIなど高度なデジタル化の取り組みが進むことへの懸念もある。TechRepublicは「AI、ビックデータ、クラウドコンピューティングの分野でEUはリーダーでありたい」と分析。「GAIA-Xによりクラウドサービスを探したり、データのやり取りを簡単にしたり、新しいデジタルサービスでのコラボレーションを簡単にすることで、業界を超えたコラボレーションを促進するという狙いもある」と読む。

 Altmaierドイツ経済・エネルギー相は、欧州共同事業であるエアバスを挙げ、「AIのエアバスのようなものが必要」と語った、とWall Street Journalは伝えている。