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大市場ヘルスケア狙うApple ライバルも活発な動き

ヘルスケアデータ巡る活発な動き

 ForbesのBaron氏は、Researchが期待されるほど万能ではなさそうだとみる。最低400ドルのApple Watchを購入できる人、そして身に着けたいと思う人は人種的、年齢的、性別で見ても偏りがあるだろう。比較的高所得でハイテク通の白人男性が中心となり、データにも偏りが出そうだ。

 そうなると、「医療リサーチが行われる方法を民主化する」というAppleの主張は、やや説得力を欠く。加えて、Appleが発表した3種のリサーチは観察研究であって、評価のバイアスをできるだけ回避するランダム化比較研究ではない、とくぎを刺す。

 また、Apple WatchはFDAの認可を受けているが、「だからといって、医療グレードのデバイスになったわけではない」とも指摘。Apple Watch経由で不整脈の通知を受けた患者を、どうフォローをするかについて、医師らが懸念していることも紹介する。

 とはいっても、ヘルスケアデータの獲得・活用は、Appleのみならずテクノロジー業界全体に広がるトレンドだ。Wall Street Journalは、Google、Microsoft、Amazonの3大クラウド事業者が、そろってヘルスケア関連ビジネスに注力していることをレポートしている。

 Appleの発表と同じ9月10日、Googleは「全米で最も優れた病院」の一つとされている総合病院大手Mayo Clinicと10年間の戦略提携を発表した。

 同院は、患者の医療データや財務関連データをGoogleのクラウドに保管し、データ分析や機械学習を活用してAI対応のデジタル診断を開発してゆく考えだ。患者の情報は、個人を識別できる情報を排除した形で利用。Mayo Clinicがデータへのアクセスと利用を管理するとしている。

 病院には膨大なデータがあり、Mayoの場合、3ペタバイトレベルのデータを約3年がかりでGoogleのクラウドに移動する。GoogleはMayo内にエンジニアチームを常駐させて対応するようだ。

 Wall Street Journalはこのほか、Microsoftが12万人の従業員を抱える病院大手Providence St. Joseph Healthと提携。AWSが大手電子カルテ企業のCernerと契約したことも紹介する。Forrester Researchのアナリスト、Jeffrey Becker氏によると、クラウド企業は医師らが使うデータの分析を容易にするソフトウェアを組み込むことなどで、契約獲得を進めているという。

 医療・ヘルスケアは、クラウド、デバイス、IoTがそろって大きな相乗効果を生むと期待でき、なにより市場規模が大きい。同時に、クリティカルな個人情報を扱うことから、制約や課題も多い。各社がどう展開してゆくのか、注目される。