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ついにDeepfake利用の犯罪が成功してしまう AIボイスの“振り込め詐欺”

 AIが電話をして美容院やレストランの予約をする――。そんなテクノロジーが実現すると、犯罪に悪用する者が現れても不思議ではない。電話でボスから送金の指示を受け、実行したところ、その声はAI合成だったという詐欺事件が発生した。この企業は22万ユーロ(24万3000ドル)をまんまと奪われてしまったという。

Deepfakeでボスの音声を合成して送金指示

 ある日、英国エネルギー企業のCEOはドイツにいるボス(親会社のCEO)から電話で「ハンガリーに22万ユーロを送金するように」と命じられた。「至急、それも一時間以内に」という指示だった。声は抑揚も、ドイツ訛りの英語も、いつも聞いているボスの声だった。

 電話は同じ日に計3回あり、2回目の電話では、22万ユーロを払い戻すという連絡を受ける。そして3回目。再びボスは送金を指示してきた。だが払い戻したはずの22万ユーロはまだ届いていない。そこで不審に思った子会社のCEOは、電話の発信元がオーストリアの番号であることに気づき、3回目の指示には従わなかった。

 あとで、ボスは電話をしておらず、「Deepfake」で音声を合成した詐欺であることが分かった。最初にハンガリーの銀行に振り込まれた22万ユーロは、その後メキシコに移動し、さらに複数の場所に分散されたという。犯人は、いまだ特定されていない。

 この事件は今年3月に発生したものだ。Wall Street Journalが8月末、被害企業が契約する信用保険会社Euler Hermes Group(Allianz子会社)の証言を元に伝えた。AIを使った音声のなりすまし攻撃として欧州初だろうとしている。被害企業の名前は伏せられている。