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IBMがPOWERプロセッサを「オープンソース」に 勝ち組と負け組は?

オープンプロセッサの時代が到来?

 IBMにしてみれば、これまで徴収してきた高額なライセンス料を捨てることになるが、TMFSunLionは「失うものはない」と言う。POWERは、既に何年も前からIBMの稼ぎ手ではなくなっているのだ。

 POWERはサーバー市場ではIntelの牙城を崩すことはできず、スパコン分野でも退潮著しい。POWERは、かつて「Top500」(トップランキング)のうち200近くにランクインしていたが、現在はわずか13だ。

 IBMでOpenPOWERプロセッサエネーブルメント担当ディレクターを務めるMendy Furmanek氏は、公開の狙いを「採用(adopt)」とCBRに答えている。

 「ハードウェアリファレンスデザインをオープンソースにすることで、新しい技術の採用を促進し、エコシステムにおけるハードウェアのイノベーションを加速できる」とFurmanek氏は語る。もちろん、IBMはRed Hat買収を完了したところで、オープンソースが戦略的に重要であることは言うまでもない。

 「オープンソースにして採用を促す」。これはオープン標準の命令セット・アーキテクチャ「RISC-V」の動きに沿うものでもある。RISC-Vはカリフォルニア大バークリー校でスタートしたRISC設計に基づくオープンなISAで、オープンソースとして公開されたのちにWestern Digital、Alibabaといった企業が採用を進めている。その成功を受け、2018年にはMIPSも「MIPS Open Initiative」としてISAをオープンにしている。

 なお、DataCenter KnowledgeはRISC-V対抗と位置付けているが、Furmanek氏は「まったく逆」と答えている。IBMはもともとRISC-V Foundationに参加しており、POWERとRISC-Vは市場を棲み分けてゆくと説明。コミュニティによって「オープンなハードウェアの成長を加速する」と述べている。

 DataCenter Knowledgeは、RISC-Vは組み込みデバイスなどで支持を得ているものの、サーバーで使われるようになるまでには時間がかかると指摘した上で、サーバーや高性能コンピューティング(HPC)を処理できるPOWERは「オープンな半導体市場に深刻な競合をもたらすかもしれない」とする。

 IBMは「Red Hatの買収、そして今回の発表により、プロセッサを商業提供できる唯一のベンダーであり、POWERは完全なオープンシステムスタックを誇る唯一のアーキテクチャになる」と述べている。