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IBMがPOWERプロセッサを「オープンソース」に 勝ち組と負け組は?

“勝ち組”は中国企業、負け組は?

 Power ISAの公開は、製品の多くが米企業製のチップに依存している中国企業、とりわけHuaweiにとって“棚から牡丹餅”になるかもしれない。米中貿易紛争の中、同社は米政府などから目の敵にされている。

 ZDNetはHuaweiが「POWERアーキテクチャを使って5Gインフラ、ネットワーク、スイッチ、IoTコンポーネントを構築できる。スマートフォンやタブレット向けプロセッサになる可能性もあるだろう」と予想する。

 投資家情報The Motley FoolのTMFSunLion(Leo Sun氏)も同意見だ。「中国は自国開発のチップにより、IntelとAMDのCPUへの依存度を下げようとしている」が、難航しているのだ。

 例えば、中国のHygonはAMDとのライセンス契約でAMDのサーバーCPU「EPYC」クローンの製造を行ったものの、AMDがx86チップ設計をライセンスするために立ち上げたジョイントベンチャーTianjin Haiguang Advanced Technology Investmentと関連企業が米商務省の禁輸リスト(エンティティリスト)に入れられて頓挫した。

 そんな中でのPOWERアーキテクチャの公開だ。ZDNetは、中国企業がメリットを得るのに対し、Trump氏は“負け組”になると判定した。「エンティティリストも大統領のツイートもオープンソースを止められない」と言う。

 もう一つの“負け組”はIntel、AMDのx86プロセッサ陣営だという。PCとサーバー分野で長年、独占的な地位を占めてきたx86チップだが、「クラウドで生まれたワークロードは基盤アーキテクチャの縛りを受けず、クラウド時代では影響力が弱まっている」(ZDNet)といい、Powerという選択肢が打撃を与えるとみる。

 一方、この動きはクラウド事業者にもメリットをもたらすという。Microsoft、Amazon、Googleなどトップベンダーは自前でシステムを構築することが多い。コンテナ化されたワークロードはIntelとの互換性を考える必要はなく、POWERを利用すれば、より自社のニーズに合わせたカスタムチップを、台湾のTSMCやGlobalFoundriesなどの半導体ファウンドリパートナーと開発することができる。