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IBMがPOWERプロセッサを「オープンソース」に 勝ち組と負け組は?

 IBMが「POWERプロセッサ」の命令セット(ISA=instruction set architecture)をオープンソースにすると発表した。POWERアーキテクチャはIBMのコンピュターを支えてきただけでなく、Macやゲーム機の基盤にもなってきた。これをオープンにすることは大胆な決断だ。オープンになることで得をする者と損をする者が出てくるだろう。プロセッサのオープンソースの動きは、何をもたらすのか――。

歴史あるPOWERをオープンに

 「POWER」の歴史は1990年にまで遡る。「IBM System i」や「IBM Power System」などの自社サーバーやメインフレームのほか、ローレンス・リバモア国立研究所の「Sierra」、オークリッジ国立研究所の「Summit」などのスーパーコンピューターでも採用されている。

 また、Microsoftの「Xbox 360」、ソニーの「PlayStation 3」、任天堂「Wii」などのゲームコンソールに使われたことでも有名だ。そしてAppleやMotorolaと共同開発した「PowerPC」プロセッサのベースにもなった。

 IBMは今回、そのPOWERプロセッサの命令セット「Power ISA」をオープンにする。また、ソフトコア実装、Open Coherent Accelerator Processor Interface(OpenCAPI)とOpen Memory Interface(OMI)のリファレンス設計も寄贈する。

 OpenCAPIとOMIはアーキテクチャ中立で、プロセッサとアタッチしたデバイス間のメモリ帯域幅を最大化し、AIなどのワークロードで問題になる性能のボトルネック克服を図れるという。

 IBMは、Powerアーキテクチャ関連の開発コミュニティとして2013年に「OpenPOWER Foundation」を共同設立しているが、今回これをLinux Foundationに移管し、今後はLinux Foundation傘下のオープンソースプロジェクトとして進めていくことも明らかにしている。

 IBMのPower ISA公開によって、開発者はロイヤルティなしでアクセスして、自分たちでアーキテクチャを構築できるようになる。これによって多くのコンピューターユーザーがメリットを享受できるが、特に中国企業には大きな意味を持ちそうだ。